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佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
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yes,スバラシき世界

The黄昏カラアズの1st Full Album『yes,スバラシき世界』がいよいよ今日リリースだ。
6月10日にレコーディングがスタートしてからおよそ4ヶ月、それ以前のプリプロから数えると5ヶ月、月並みな言葉だが待ちに待ったというのが今の素直な気持ちだ。
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待望のリリースを迎え、プロデューサー&サウンドエンジニアを担当させてもらった僕なりのアルバム制作秘話的なものを書いてみる。

今作はThe黄昏カラアズにとって初のフルアルバム、本格的なレコーディングという意味でも初めてのチャレンジが多かったし曲数も12曲、僕の作業も大変だったが何よりメンバーの努力と情熱無くしては(このレベルで)完成しなかったであろう、愛すべき素敵な作品に仕上がった。

ボーカルのTheシミーと事前に話し合い、アルバムの方向性は決めていた。72年のストーンズのアルバム「Exile On Main St」のような感じにしたいねと。決して派手ではないが強靭なバンドグルーヴに支えられた色彩のあるアイデンティティーを感じさせるアルバムだ。

もちろんそれを真似るわけではなく、The黄昏カラアズの音楽をそういうイメージのもとに整理し真空パックするのが僕の役目だった。

収録する曲はすでに出来ていたので、アレンジをリハで確認しつつ手直しし、もうひと工夫が必要な曲に関してはメンバーと共に自宅でアレンジの基本を作りバンドに提示した。
そしてメンバー全員に、レコーディングまでにこれらの演奏をこなせるよう宿題を出した。

後からメンバーに言われたが、こんなに真剣に練習したのは初めてで苦しかったそうだ。でも何とか乗り越えてくれた。(確かにいつものふざけた顔ではなく見たことのない真面目な表情をしてたっけ)

いまの録音機材の進化は凄まじく、演奏の不味さを何とか誤摩化したり出来るのではあるが、ライヴ感のある彼ららしい音にするには録音された演奏(音符)部分はなるべくいじりたくなかったし、制作期間(つまり予算)もあったし、単純に演奏が上手くなって欲しかったのもある。ライヴで再現できる範囲のアレンジだったから余計にそう思った。

バンド、特にロックであれば演奏技術よりも大切なものがあるのは重々承知だが、やはり曲を演奏で表現する以上、ある程度の技術がなければ表現方法(アイディア)が限られてしまう。それを打破し次のステップへ進むための試練と気付いてもらえればいい。

そんな中、ゲストギタリストに旧知の高木克(ソウル・フラワー・ユニオン。元シェイディー・ドールズ〜三宅伸治&トランプス)も参加してくれることに決まり、希望に燃えたレコーディングに突入したのである。

今回の録音スタジオは初めて使用するSONIQSという街中にある新しい場所。偶然にもオーナーの千葉氏が知り合いだったこともあるが、魅力的な広さと環境と機材というのが決め手になった。

ベーシックなリズムトラック(ドラムとベース)は4日間で録った。そこから毎日ちょっとずつギターなど他の楽器のオーバーダブや各パートの手直しをしていった。
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この時点で曲順はまだ決まっていなかったが、曲ごとの完成イメージはあったしやりながらメンバーがひらめきのアイディアを出してくれたので、スタジオの千葉氏に手伝ってもらいながら、迷うことなく曲ごとにマイクや録り方を変えながら録音できた。
プレイのノリや細かいアレンジで壁にぶち当たった部分ももちろんあったが、概ね予定通りプラスαくらい(笑)でレコーディングは進行していった。
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東京からライヴに来ていたLIVSAN(りぶさん)の面々がコーラスに参加しにスタジオに来てくれたり、雨先案内人というバンドの西山小雨ちゃんがオルガンを弾きにきてくれたり。

そしてほとんどのパートを録り終えたころ、約束通りギタリストの高木克も日帰りでやってきてくれ、僕と立ち会ったメンバーを唸らせてくれた。
そのプレイの引き出しの多さもさることながら、バンドに合った音やイメージへのこだわりと自分に妥協しない姿勢。吹き込んでくれた音もそうだが、この現場にいた誰もが音楽への向き合い方とプロで長年喰っている人の凄まじさに魂を震わせた。彼に頼んで大正解だった。
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こうして延べ20日ほどで録音が終了。バンドはおそらくこの時点で出来ることのすべてを詰め込んだ演奏をしただろう(時間が経過した今は反省やらもっといろんなアイディアが浮かんでいるに違いないが。僕だってそうだ)。
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いくら注文やNGを出しても腐ることなくバンドは頑張り、ハッとするようなプレイも随所に見せてくれた。結果、まだまだ荒削りではあるが、とても瑞々しく魂の宿った音楽がレコーダーに刻まれたのである。
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ここから僕の大きな役割のひとつ、ミックスと呼ばれる文字通り一音一音を混ぜて整理していく作業でスタジオにこもる日々。メンバーとディスカッションした音のニュアンスを念頭に置きながら、僕が思い描くイメージに近付けていく。

録音した音とグルーヴを濁らせないよう注意しつつ時には輝かせるよう工夫し、繊細に音の構築を続ける。矛盾するようだが繊細な音作りでダイナミックさを強調していった。
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少しずつ出来上がっていく音が気になったのか、入れ替わり立ち替わりメンバーが顔を出しに来てくれたので、気持ち的には孤独ではなく集中力も持続できた。

14日ほどでイメージ通り、いや思った以上の感じに仕上がった。これはバンドの頑張りと共に、皆でいろいろな意見を出し合ったことが刺激となりアイディアを増幅させたからでもある。

まぁザックリとではあるが、こうして無事に今回のアルバムが生み出されたのだ。
Satokaちゃんのスリーヴデザインも秀逸だし、ジャケットは若き美大生・折原ナナナちゃんが描いてくれた。

The黄昏カラアズが持つ独特の世界観と人間臭さ、そして音楽へのひたむきな愛情をぜひ聴いてみて欲しい。
デジタル録音ながら彼ららしいアナログっぽい生々しさを感じる音にこだわったトータルアルバムである。
その上で曲のつなぎやSE、微妙に聴こえてくる隠し味やロックファンならニヤリとするアレンジなど、詰め込んだ遊び心も(大音量で!w)楽しんでもらえたら嬉しい。


以下は僕なりの簡単な曲解説。

1.Gypsy「歌詞のメッセージ性と曲調からオープニングはこれ以外考えられなかった。エンディングの展開は20代のバンドとは思えないアイディア(笑)。素敵なマンドリンは高木克」

2.ともだちジマンの数えうた「Theシミーの真骨頂であるとぼけた愛ある歌詞と60’s UKビートの融合。キース・ムーン的なBOBのドラムもナイス」

3.Wack Wack「ファンキーな黄昏流ダンスナンバー。怪しげなギターソロは逆回転音源。ブイブイと舞うNanacyのベースとLIVSANの男気あふれるコーラスも燃える」

4.スワンのボート「昔懐かしい匂いのするワルツ調バラード。初期ビートルズの音質感もちょっと入れてみたりして。スワンボートの実録音源入り(笑)」

5.かえりみち「レコード針とおもちゃ風オルガンのSEから始まる楽しげなレゲエ調ミディアム。小雨ちゃんが弾いてくれた愉快なオルガンも可愛い」

6.きっとGoodnessサムタイム「前作にも収録されていた彼らの代表作をリアレンジ。60’s UKへのリスペクトを込めたサウンドに仕上がったパンチの効いた胸キュンロック」

7.私のロッケンロール「アルバム中一番の完成度をみせる彼らの新機軸。唯一無比の世界観を放つ今後の代表曲になるであろう名曲。高木克の素晴らしいギタープレイも聴きどころ」

8.GAMBO!「ボ・ディドリー・ビートにのせた愛とビールの乾杯歌(笑)。謎のゲストギタリストも地味に参加」

9.Oh, Caroline「Theシミーが叫ぶソウルフルなラヴバラード。音もダンスホールのチークタイムっぽくしてみた(笑)。シンディーの泣きのギターフレーズが炸裂!オルガンは小雨ちゃん」

10.恋をするなら06’「バンド感満載の青臭いほどキラキラとしたポップなロックンロールナンバー。ギターソロは高木克」

11.ゆるくいこー「タイトル通りリラックスしたサウンドが気持ちいいミディアムナンバー。TheシミーのLove&Peaceなメッセージが泣ける。小雨ちゃんのオルガンを昔っぽく操作させてもらいました」

12.夜明けまえ「アコースティックギターとメロディオン(Nanacy)だけでシンプルに歌われる温もりの子守唄」

そしてCDオビの宣伝文はこちら。
『メインストリートを転がるタフなグルーヴ、ピースフルに踊るならず者のうた。バンドサウンドを追求した万華鏡の如き1stフルアルバム。高木克(ソウル・フラワー・ユニオン)他がゲスト参加』

さらに延原達治(The Privates)の愛情たっぷりのオビ推薦コメント。
『何事も問題がないってのは素晴らしいことなのだが…。問題がないってのもつまんないもんで…。Theシミーを中心に、唄い、奏でられる彼らの音楽は、何にも問題なぁ〜いわけじゃないのだが、なんかホノボノとしてて愛おしく思えるのであった。
2011年、大きな震災のあった年に記録された彼らの音楽がみなさんにとって忘れられない作品になれば良いな、と心から祈ってます。
まっ、Theシミーには色々と問題あっけどね。』


最後にインフォメーションを。
The黄昏カラアズ・レコ発ワンマンLIVE「踊りっぱなしのエジリ・フレーダ」
10/16(日)仙台 enn 3rd にて19:00 start(¥2000 ワンドリンク)
※高木克氏も何曲かゲスト出演してくれることに決定!

そして収録曲の「きっとGoodnessサムタイム」は10月度のDate fm Mega Play(エフエム仙台)とTBCパワープレイ(東北放送)に選ばれました。

仙台クリエイター界の奇才、BUBBLE菊地氏が手掛けてくれた「私のロッケンロール」PVはオフシャルHPで見れます。
http://the-tasogare-colors.com/
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ようやくスタートラインに立ったThe黄昏カラアズの今後に期待!
by higehiro415 | 2011-10-05 12:13 | 音楽