佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
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MARTIN,GIBSON&ME in札幌レポ

2.11 mon.
浅田信一氏が宿泊したホテルのチェックアウトは10時半、飛行機が13時だったので、どこかでランチでもしてから仙台空港に行こうと前日の帰りに決めた。
朝起きて旅の準備をしているとLINEの着信音が鳴る。最近の僕らはもっぱらLINEでのやり取りが多い。
「時間大丈夫なら上海ラーメンどうすか?」

いいね!と思いながら航空券を確認すると、どういうわけか11:55フライトとなっているではないか。
どこで勘違いしていたのか1時間間違っていたことに気付き、慌てて返信する。
「ごめん。時間勘違いしてた。上海ラーメン無理っぽい」

そんなわけでホテルへ迎えに行きタクシーで仙台駅まで移動、そのまま仙台空港アクセス鉄道で空港へと向かった。
途中の名取を過ぎたあたりから、窓の外は震災の爪痕が残る風景がポツポツと見えてくる。

ぼんやりと外を眺めながら、信ちゃんが口を開く。
「仙台空港って津波でやられたんでしたよね?」
「うん、空港は完全に。もうここら辺も被害に遭った区域だよ。」
「あれニュースで見て、ショッキングな映像だったなぁ。」
「そっか…被災地ってまだ見てなかったのか。」

そんな会話をしながら空港に到着し、さらに空き地だらけの光景を目にする。
チェックインを済ませ、コーヒースタンドでホットドッグをサクッとお腹に詰め込んだ。
「あとは札幌に着いたら旨いラーメン食べよう!」
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仙台〜札幌のJAL便は小型機で、座席は最前列だった。
搭乗して席に座ると「グリーン車も初めてだったけど飛行機の最前列も初だわ。」「おれも。」とか言いながら離陸してさほど経たないうちに、僕らは眠りに落ちた。
うたた寝するのにちょうどいい1時間半で、新千歳空港に到着である。

空港から札幌行きの電車に乗り込むと、どの車両も雪まつりのせいか満員で、仕方なく荷物とギターを抱えながら立ったまま札幌まで揺られた。
札幌駅から大通り公園近くのホテルまでは、よく喋る運転手さんのタクシーで雪まつりのことや今年の冬の天候のことなど聞きながら移動。

部屋に荷物を置き、すぐに約束通りラーメンを食べに外出する。
一昨年、現地のイベンターさんに教えてもらった千寿というラーメン屋が、偶然にもホテルから近かったので、雪まつり会場を横切り一目散に歩く。寒いので早足になっている。
時間が夕方4時ころということもあり店内はお客さんがおらず、王道だが品のある味のラーメンをすんなり食べることができた。
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そのまま雪まつりを見学し、中古レコード屋MILK RECORDへ。
信ちゃんはレコ屋の隣の指圧マッサージの店が気になるらしく、看板をじっと見ている。
夕飯まで少し時間もあるし行ってきたら?と、ここで別れて僕はホテルに戻り翌日の準備。

ほどなくLINEで「いっぱいでダメでした。夕飯どうします?」
「じゃ7時にロビーで。どっかそこら辺に。」
7時ちょうどにロビーへ降りると、すでに信ちゃんが待っていた。
狸小路あたりに行けばなんかあるでしょ、と言いながら外へ出ると、そこは極寒の地で「これ冷蔵庫より寒い!」とか「耳がいてぇ〜」とか騒いで10mも行かず断念し、目の前にあった居酒屋に入る。
ここが運よくいい感じの店で、料理もリーズナブルで美味しかった。

打上げだと友達やらスタッフやら関係者がいてワイワイという感じだが、この日は2人でしっぽりと飲んだせいか、それとも寒さのせいか(笑)、普段はあまりしない話もいろいろ出来た。
僕のような仕事や信ちゃんが今請負っているプロデュース業などは、うまく出来て当たり前みたいに思われがちで、一生懸命やってもあまり褒められることがないよねぇ…みたいな話。

それから昨夜の仙台ライヴで、自分はシンガーだったんだ!と再確認したという話。
これは冗談交じりだったが、何か新たな(もしくは忘れかけていた?)感触を掴んだということだろうから、とても嬉しくなったしツアーを企画した甲斐もあるってもんだ。

そして昨年秋に僕が開催したイベントについて。
「ヒロさんには言わないけど、僕もコータローさんも森山も、あのイベントは素晴らしかったけど赤字だったのわかるし、その穴埋めじゃないけれども、今後ヒロさんのやることに協力しようとみんな思ってますよ。」これには泣けた。

その後、雪まつり最終日のライトアップを一目見ようと大通り公園まで行くが、やはり寒くてそそくさとホテルへ戻る寒さに弱いおじさん2人であった。
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2.12 tue.
11時。ロビーに降りると、また信ちゃんは先にそこにいた。普段はどうか知らないが(笑)僕の前では時間をきっちりと守るお方である。
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外はやはり寒いが天気はいいので、10分ほど歩いてススキノ周辺まで行き、昨日から決めていたスープカレー「エス」でランチ。相変わらず旨い。
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その帰りには狸小路にあるFresh Air(中古レコード屋)へ。
2人で黙々とレコード棚を漁り、僕は前々から欲しいと思っていたソウル・サバイバーズを、信ちゃんはオーネット・コールマンをゲット。
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一旦別れて夕方前にロビーで再集合し、この日のライヴ会場となるレストランバー円山夜想(マルヤマノクターン:通称マルノク)へとタクシーで向かう。
雪が舞ってきたが、これだけ積もっているとさほど気にならないから不思議である。
レコード屋で別れたあと、信ちゃんは昨日のリベンジでマッサージを受けに行ってきたと、軽くなった肩をグルグルと回しながら報告してくれた。

マルノクに到着すると本間店長が相変わらずの笑顔で「ヒロさん、どうも〜。よろしくお願いします!」と出迎えてくれる。今回もいろいろと融通を利かせてくれて、感謝である。
信ちゃんを紹介し普段はVIPルームになっている楽屋へと案内されると「おぉ〜、居心地いい楽屋でイイっすねぇ〜」とご機嫌の様子で、ギターの弦を取り替え始める。

その間、手土産の萩の月を渡しにバーカウンターに行くと「ヒロさん、お久しぶりですぅ。わかりますか?」と、見覚えのあるライターを見せびらかしながら女性が微笑む。
記憶を一瞬で呼び戻す。「お〜!JUNCO!元気〜?」

JUNCOは札幌を拠点に活躍しているシンガーで、5年程前にチープ広石さん(元LOOKのSAXプレイヤー)とのデュオで仙台ライヴをやった際PAを担当させてもらい、打上げで盛り上がった挙げ句、僕のライターがカッコいいからちょうだい!と強引に巻き上げていった(笑)以来である。
彼女は歌っていない時たまにここで働いていると聞いていたが、昨年来たときは不在で会えなかったので、嬉しい再会になった。

ほどなくここでバイトしている和世も出勤し、ハグで再会を喜ぶ。
彼女の本職はヘアメイクなのだが、3年前まで仙台に住んでいて、当時から僕の仕事のよき理解者でもある妹的(年齢差から娘的?)存在である。

私事が長くなってしまったが、本来ならアウェイであるはずの札幌が、これからお客さんで来てくれる数人の友人知人なども含め、ホームのような感覚でいられるというのは非常に有り難いし、その空気は信ちゃんを取り巻く環境にも影響するはずなので、この日もいいライヴになるという予感がした。


サウンドチェック〜リハーサルは少し入念に行う。
というのも、ここはPA卓が入口受付カウンターの下にあることと、フロアが縦長なのでスピーカーが前方と後方に付いているため、音作りや調整にちょっと慎重になるからだ。

もちろんこの場所でやり慣れていない僕のせいなのだが、卓の場所ではフロアと同じ音が聞こえないので、何度も客席側へ行きチェックする必要がある。
本番では客席中央まで行けないので、PA席でこう聞こえる時は客席でこんな風に聞こえているというのを耳に覚え込ませシュミレーションするのだ。
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ステージ上はモニターがちょっと聞こえづらいと言うのでいろいろ調整したら、すぐにいい感じになったようで、信ちゃんには外音のことで時間を取らせてしまったが、嫌な顔もせず付き合ってくれた。


仙台と同じように2人で選曲したコラボCDRをBGMに開場となる。寒そうに、でもワクワクした面持ちでお客さんが続々と入ってくる。昨年知り合った地元の新聞記者K女史や、札幌音楽シーンのドン的存在T氏も駆け付けてくれた。
知り合いもちらほらで、久しぶりに会う顔もあり嬉しくなる。

そして信ちゃんから、もしかしたら来るかもと聞いていた達ちゃん(鈴木達也:SMILEのギタリスト)も本当に現れた。思わずハグしたが、すぐに「なんでいるの?」と訊いてしまった(笑)。ますますアウェイ感が減る。
本番前のマッカランは、今日は達ちゃんも交じって3人で乾杯。これはリラックスするための儀式みたいなもんである。(いや、本当に。酔うまでは飲みませんよ。)

ライヴは少しだけ押してスタートした。
待ってました!と言わんばかりの柔らかな拍手に迎えられ登場した信ちゃんは、北海道で待ってくれていたファンのみんなの顔を確かめるように客席を見渡し「お久しぶりで〜す。浅田信一で〜す」と歌い始める。この日も引き続き調子の良さそうな声だった。
客席が少しライトアップされていたのは、リハの時に「お客さんの顔が見えるぐらいの明るさがいいなぁ」と本人が言ったからだ。
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会場の作りがステージと客席が分かれていてほんのり明るいし、お客さんのほとんどがその姿を焼き付けようと真剣な眼差しでステージを見つめていることもあってか、前半は少し全体が緊張しているような、そんな印象だった。

遠距離恋愛の恋人同士が数年振りに会ったものの、待ち遠しすぎてどう接していいのか戸惑うような、そんな感じにも見えた。

そんな雰囲気を和ませようとしたのか、久しぶりに北海道で歌う想いもあっただろう。いろいろな事をきちんと伝えようと、言葉を選びながら丁寧に話す。そんなこの日のMCは、いつもよりちょっと多めだったような気がする。
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SMILE時代の曲、ソロになってからの曲がバランスよく並べられたセットリストは、とても心地よく歌の世界へと誘ってくれる。

1部が終わり楽屋へ行くと「なんかみんな静かだけど大丈夫かなぁ?」と信ちゃん。
でもその表情はにこやかで、不安ではなく客席はちゃんと楽しんでくれているかなぁ?という気遣いだとわかる。
「大丈夫だよ。シャイなだけでみんな楽しそうだよ。」と言い残し、フロアに戻る。

ドリンクをおかわりする人、トイレに行く人、誰もが紅潮した顔色で満足そうだ。お店のスタッフの人達の明るい声が、より会場内を落ち着かせリラックスさせる。
休憩が終わり2部へ。

手拍子も徐々に大きくなり、会場内が少しずつグルーヴしてくる。そしてその波動がステージに届き、信ちゃんの歌とギターと共鳴しながら広がっていく。達ちゃんも酔った顔で歌いながら手拍子している。
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前半の凛とした空気が嘘のように、温かな風が吹き心が軽やかになっていく感覚。
それはまるで、降り積もって固まった雪が春の訪れとともに溶けて流れていくような、とても札幌に似合う光景でもあった。

アンコールの時などはまさに割れんばかりの拍手で、実際の倍くらいのお客さんがいるのでは?と錯覚するほど。
それほどまでに待ち望まれていたのだろうし、この日のライヴ内容も素晴らしかったのだと再確認する。
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「また来年も歌いに来ます!」とステージを降りた信ちゃんは、大仕事をやりきったような清々しい表情をしていた。
そりゃそうだよなと思う。あの奇跡的とも思えた仙台でのライヴと遜色ないパフオーマンスをしたのだから、本人もきっと胸を撫で下ろしたのだろう。本当に素晴らしいライヴだった。


打上げはそのままマルノクで。
声を掛けていたシンガーソングライター・すずきゆいちゃんも合流し楽しく飲む。ゆいちゃんは信ちゃんのリクエストに応え、歌も披露してくれた。
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お店のスタッフが気持ちいいとアルコールも楽しく進む。

宴もたけなわになったころ和世が耳打ちしにくる。「ヒロさん、そろそろいい?」
実は事前に相談されていたことがあった。

簡潔に話すと、僕の友人の札幌3人娘というのがいて、和世とY(学生の頃から10年くらい仙台にいて、音楽とDJを教えて欲しいと弟子入りを志願してきた変わり者で震災のあと地元に戻った)とUなのだが、他の仕事で札幌に行った時に別々にライブに来てくれ紹介したところ、今では親友になっているという縁で、僕の仕事や活動にいつも協力してくれる。
その中のUが数日前に誕生日を迎えたので、サプライズでお祝いしてあげたいと相談されていたのである。奇しくもUはSMILEのファンであった。

こっそり厨房へと行き、段取りを決める。
「みんなでハッピーバースデー歌うから、ヒロさんケーキを持って出て来て!」と和世が言うが、ちょっと待てよ?とひらめいた。
僕の案を伝えると和世は嬉しそうに細い目をさらに細くし「いいの?それが一番喜ぶ!」
一瞬のうちに関係者に伝達しイベントの始まりだ。

打上げのテーブルに戻り僕が大声を出す。
「え〜皆さん、宴もたけなわですが、今夜はせっかくなのでサプライズライヴということで、浅田信一とすずきゆいちゃんによるスペシャルセッションが急遽行われることになりました〜!」
何も知らない10人程が、マジで〜?という声を上げステージ前に集まった。
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ステージに2人が上がりお辞儀をし、ギターを抱えた信ちゃんがセンターマイクの前、横にあるアップライトピアノにゆいちゃんが座る。
そして「KeyはCでね」という合図のあと、ハッピーバースデートゥーユー♪とギターとピアノに合わせ2人が歌い始める。
U本人も他のみんなも、えっ?誰かきょう誕生日?と回りをキョロキョロ見るが、ノリで全員大合唱だ。

歌い終わって信ちゃんがUを指差す。「お前だよ!(笑)」
そこにロウソクが灯ったケーキを、達ちゃんが満面の笑みで運んできてくれた。
えっ?わたし?
全員が拍手と笑顔である。本人はキョトンとしたあと笑ったまま涙を流した。

こうしてサプライズは大成功に終わったのである。
これは単に友人の誕生日を祝うということではなく、大変な状況の中でも明るく前に進んでいくムードメーカーUへの和世とYからの感謝と応援というハッピーな気持ちが、僕も含めてまわりを自然に巻き込んだのだろう。
何も言わず協力してくれた信ちゃん、達ちゃん、ゆいちゃん、ありがと〜。

それと札幌公演が平日になってしまったことについてだが、理由はふたつあった。
仙台の翌日(月曜祝日)という連日開催も検討したのだが、久しぶりのソロ弾き語りだということで、信ちゃんの喉に配慮したのがひとつ。
せっかく行くのだから、少しでもいいコンディションの声を聞いてもらいたいと思ったのである。

そしてもうひとつは仙台も札幌も雪の多い時期なので、当日移動でもし吹雪などのため飛行機が飛ばなかったらライヴが中止になってしまう。1日空けておけば最悪どちらかの日で必ず札幌まで行けるだろうと考えたのだ。
平日は仕事などでライヴを断念した方には申し訳なかったが、ご了承願いたい。

さて、ライヴの音に関してだが、たぶんどの席でもギターも声もクリアーに聴こえていたと思う。
終演後に達ちゃんが「ヒロ兄がPAやると、信ちゃんの声、やばいよ。何かが違う!」と昨日の2人の会話を聞いていたかのように褒めてくれた。
少し大袈裟だなと思いながらもやはりハッピーな気分になるもので「そう?酔ってたんじゃないの?(笑)。それより達ちゃん来てくれて、より楽しく飲めたよ。ありがとね。」と返す。

打上げを終えてホテルまでのタクシーの中、その小さなハッピーを信ちゃんに渡す。
そう。ハッピーは伝染するのだ。
「きょうのライヴも最高だったよ!来て良かったねぇ。」
「うん、本当に来てよかった。」
「歌が止まった時はアレンジでブレイクしたかと思ったけど。」
「そっか!ブレイクにしちゃえばよかったんだ。その手があったかぁ!」(笑)

この日集まったみんなが信ちゃんの歌でハッピーになり、また次の目標へと向かって日々を過ごす。
そしてきっと来年また札幌へ行った時には、そんなみんなのハッピーが今度は信ちゃんに伝染し、さらに素晴らしい歌をうたってくれるはずだ。

自分のためだけではない、誰かのためでもあるハッピーの連鎖。そんな素敵なことを思わずにはいられない夜だった。
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外の雪は粒が小さくサラサラで、街灯に照らされまるで星屑のようだった。


大阪編に続く。。。
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by higehiro415 | 2013-02-26 23:53 | 音楽