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佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
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MOD TONE_仙台・盛岡

2013.3.23 sat. 仙台MACANA
予定より少し楽器車到着が遅れそうだというので、念入りに準備をする時間があった。
いわき・水戸とPAをやってきて、より細かいところや修正するべき音作りのポイントが明確になっていたので、それを念頭にスピーカーのチューニングをし、リバーヴのEQとパラメーターを調整する。
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基本的な音のイメージは前回のブログに書いたが、それに加えてもうちょっとギターとベースの重なりを重厚に出すこと、音の隙間で鳴るドラムのフィルを印象的にするバランスとリバーヴ感、ボーカルエフェクトの細かいニュアンスとメリハリ、加藤クンのアコギの音など、いくつかの宿題を自分なりに与えていた。

どの会場であろうとベストを尽くしているが、やはり慣れや分析をする時間(機会)は必要だし、今回の演奏のクセみたいなものもつかめたので、この日は前週以上に腕が鳴る。なんといっても僕の地元であるし、無意識に気合いが入る感覚があった。

狭い会場が良くないということでは決してないが、ザ・コレクターズのようなダイナミックな生音を出すバンドは、この位の広さとPA機材のほうが更によく聞かせることが出来るし、照明も映える。オーディエンスだって見やすく聴きやすいのではないかと以前から進言していたこともあり、どんなことをしてもイイ音を出さねばという責任もあった。
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楽器車は30分ほど遅れて到着し、急いで楽器類をホールへと搬入する。地下2階分の階段を荷物を持って何度も上り下りするとさすがにヘトヘトになるが、10年前までは平気だったなぁ〜などと思いながら運んだ。
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ローディー秦クンが楽器を手際よくセッティングするのと平行して、僕はマイクスタンドを各楽器にセットしていく。

セッティングが一段落し楽屋へ行くと、加藤クンが約束通りにChange Energyのプリントが入ったミリタリーパーカーを持ってきてくれていた。羽織ってみるとサイズもピッタリだ。
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僕個人の考え方として社会的な発言は誤解を招きやすいし、反原発とか声高に言うつもりはないのだが、加藤クンの「こういうのはさ、1人1人がきちんと意見を持つことが大事で、それには多少は発言が目立つおれたちみたいな職業の人が声をあげることも必要だと思うんだよね」という言葉に、なるほどと納得したりもする。

それは例えばポール・ウエラーが「Motownサウンドは最高だよ!」と発言し、Motownを知らないリスナーが興味を持ち聴いてみるきっかけになるというのと同じ構図だろう。強制ではなくあとは聴いた人の自由に委ねられるという意味でも。

仕事でもよく行き知人も多い福島の状況を見て、僕もこの位のこと(Change Energyとプリントされたコートを着ること)は出来るなぁと思うのだ。正しいとか間違ってるとか、良いとか悪いとかじゃなく、単純にいかがなもんかと自分で感じるだけである。

偶然にも翌々日に仕事させてもらったジェーン・バーキンが「おかしいと思ったことや疑問がある時は、相手が友達であろうと政府であろうと、きちんと意見しないと誤解は解けないし何も変わらない。気持ちよく過ごせる環境にするには、皆さんそれぞれが考えを伝え話し合うことだ。それに対して誠意の無い対応や聞く耳を持たない相手はNo Goodということでしょ」みたいに言っていたことともリンクする。

話が逸れてしまったが、ミュージシャンといえど所詮は僕らと同じ一人の人間で、そこで奏でられる音楽は大なり小なり想いみたいなものが投影される。それが恋愛のことであれ社会のことであれマインドのことであれ、もう若手ではないのだからヒューマンがあればこそリアルに響くのではないだろうか。

さて、サウンドチェックはドラムの阿部Qちゃんから。生音がわかっているしバスドラムやスネアなど、通常のように1つ1つを叩いてもらい調整するやり方はしない。始めから3点(キック、スネア、ハイハット)で音をもらい、2つのタム、3枚のシンバル、そしてトータルとサクッと進む。

これは入念じゃないということでなく、僕がロンドンにいた頃に学んだことで、一般的な日本のやり方とは逆だ。要するに最終的にはドラムだけで9本のマイク、他の楽器やボーカルも含めると20本ほどのInputをまとめるわけで、単体の音を気にするよりも全体の音のイメージを大切にしろということだ。

もちろん全体の音のための1つ1つも大事だが、ライヴハウスだと生音も結構聞こえるし、やはりトータル(バンド全体)で鳴るサウンドに重点を置く。

歌をきっちり聴かせたい場合は特に、1つ1つの音を決めて重ねていってもうまくいくとは限らない。だからある程度の調整にとどめ、バンド全体でのサウンドチェックで1つ1つ気になるところをいじっていくほうが僕はしっくりくるし時間短縮にもなる。

Qちゃんのドラムはタイトでチューニングもいいので、いじり過ぎずバランスに気をつければとてもやりやすい。今回はシーケンサーも使用。
続いて小里クンのベース。低域のふくよかさと中域のバキッとした感じが持ち味だ。

加藤クンのエレキギターとアコースティックギター。彼の声の音域とぶつからないように調整する。特にアコギはバンドの音に負けじと出してしまうと痛い音になるので要注意だ。歌声はキーが高いのでキンキンせず細くならないように気をつける。

コータローのギター。これは前回も書いたがアンプのスピーカーの音だけではなく響きも加味して、リッケンとVOXのあの音をいかに再現するかに尽きる。そして歌はスモーキーな声質をあまり変えずに、でもパリっとするように調整。

こうしてリハーサルへと流れていく。照明さんは曲の出だしや色合いやきっかけなどを確認し、シーンを調整卓にメモリーしていく。
ステージ上はいかに気持ちよく演奏できるかが鍵なので、メンバーは生音やモニターを確認しながら音の状況を把握していく。
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僕はステージからの注文に応えながら客席の至る場所を動き回り、音の聞こえ方をチェックしていき、少しずつバランスや音質を調整する。
普段は聞こえないが音の隙間にだけ残るように、リバーブ(残響音)やディレイ(遅延音)を微妙に足すことも計算する。ここも自分なりのこだわりの1つだ。

結局はお客さんが入れば音も変わってくるし、もちろん演奏だってノリで微妙に違ってくるので、最終的には本番中の耳と咄嗟の判断になるのだが、それに備えるための最低限の準備である。

コレクターズは百戦錬磨だし演奏や生音の作り方も上手いので、この日のリハも30分ほどで終わった。僕の音のほうもいい感触で、あとはお客さんが盛り上がるような展開になれば、相当すごいライヴになるだろうという予感がした。
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開場時間になり、僕が担当する4ヶ所(いわき・水戸・仙台・盛岡)のために選曲したModsテイストのBGMを流す。これは食前酒みたいなもんで、メインディッシュを引き立てようと勝手に選曲したものなのだが、何も言わず許可してくれた事務所とメンバーに感謝である。

開演予定ほぼきっかりに準備OKの合図がくる。
BGMをフェイドアウトするのと同時に客電が落とされ、SEのスタートボタンを押す。
フロアに歓声と手拍子が起こる。

加藤クン以外のメンバーが登場し各々の位置につき、楽器を手にする。この瞬間は何度経験しても僕も緊張する。
ほどなくコータローのこれでもかと言わんばかりにヴィヴィッドな音色のギターカッティングで、この日のライヴも幕が開いた。

加藤クンが現れ歌い始めると、フロアが更に揺れていつものダイナミックなグルーヴが一瞬で会場中に充満する。
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POPでノリがいいナンバーが4曲続く。軽いMCのあとは、初期の名曲がまるでDJプレイのようにつながっていく。
前半は前週よりMCが少なめで、よりシェイプアップされた印象だ。

オーディエンスの盛り上がりも、僕が仙台で長年見続けてきたコレクターズの中では一番のような気がした。仙台人である僕が言うのも変だが、仙台の人はどこか醒めている印象があってそれはシャイだということもあるのだろうが、それをここまで熱狂させるのだから、やはり今の彼らのパフォーマンスは円熟の極みと共にエネルギーに満ち溢れているのだと実感する。
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中盤にはお楽しみの(?)爆笑MCも炸裂。話題のPodcast「池袋交差点24時」も相変わらず絶好調だが、加藤クンとコータローのこの面白すぎる絡みは今に始まったことではない。昔から変わっていないのだ。

新曲やコータローがボーカルをとる曲も、ツアー中盤を過ぎていい具合にこなれてきている。
今回のインストナンバーは個人的に相当気に入った。弾けたグルーヴと途中からグニャっと歪む感じが、とてもクールでMODなのだ。僕もここでは音をゆがませる。
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後半は否が応でも胸が高鳴る怒濤の名曲が続き、本編が終了する。
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アンコールは僕も何がくるのか知らされず毎回違う曲をやり、あの定番曲で幕を閉じた。
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この日はダブルアンコールがなかったが、それは本編ですべて出し切った気迫の演奏だったことと、残念ながらお客さんが少し帰ってしまったからではないのかと勝手に想像する。でもそれがアンコールの正しき姿である。
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まぁそれにしても素晴らしすぎるライヴであったことは確かで、僕も納得の音を出せたこともあり、終わった途端に心地よく力が抜けたのであった。

早くビールが飲みたい!(笑)と思いながら、また長い階段で機材を上げ車に積み込み、急いでメンバーが待つ打上げ会場へと向かう。
先週から仙台ではラーメンで〆ね!と決めていたので、つまみはほどほどに。若い頃はライヴ後のビールが楽しみで頑張ったよね、などと和気あいあいと飲む。

そして今夜は初心に返って上海ラーメンにしようと移動し、ビールなど飲みながら「やっぱり旨いなぁ〜」と舌鼓を打つのであった。


2013.3.24 sun. 盛岡club change WAVE
ちょっと肌寒い朝だった。それでも昨年(奇しくも3.11)の盛岡は確か雪が降っていたからそれよりいいなと思いながら、珈琲をすすりホテルでメンバーを待つ。

先週と同じように僕の軽自動車には加藤クンとQちゃんが乗り込み、楽器車と2台で盛岡へ移動する。車中は、例えばもっと魅力的なルックスの車があれば欲しいけどないよね、とかいつものようにとりとめの無い話をしながらだ。
高速も空いていたし、一度トイレ休憩をしただけで順調に会場に到着した。

ライヴハウスのスタッフ数人も手伝ってくれ、楽器を搬入する。しかしここのスタッフの搬入搬出手伝いの頑張り様は半端ない。
こっちも楽だということ以上に、その動きで他のハコと差別化しようという努力が見て取れ、一緒にやってる感もあり気持ちいい。これは色々なバンド関係者からも耳にしていた。

メンバーは思い思いにランチへと外出し始め、コータローが「佐藤クン、そこら辺にメシ行こうよ」と誘ってくれるが、この会場でのPAは初なので「ちょっといろいろ準備したいから行ってきて」とランチをあきらめセッティングする。
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ビルも機材もそれほど新しくはないが、何かハコの想いが詰まっているような、そんな柔らかい響きがする会場だなと感じた。

昨日と同じように準備は着々と進んでいく。徐々にメンバーもランチから戻ってきて、自然とサウンドチェック〜リハへとなだれ込む。
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モニターがちょっと聞こえづらいことを除けば、予想通り適度にライヴ感のある気持ちいい音の響きで、頭を悩ませること無くリハは終わった。

ライヴは動員がもうちょいあればとも正直思ったが、先週から札幌ライヴとキャンペーンも続きやや疲れ気味だった加藤クンの声量も落ちることなく、メンバー全員むしろ逆に気力を絞り出す感じが、よりロックに見えた。
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演奏は昨日と同じように素晴らしかったのだが、なんていうか、感情があふれ出すステージングだったと思う。
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事実MCでの加藤クンは「人は少ないけど、なんか調子いいな(笑)」と言っていたし、後で訊いたら「別に岩手だからっていう意識はなかったけどね」と言っていたコータローの動きは、いつもより前に迫ってくる感じがあった。Qちゃんも楽しそうにドラムを叩いていたし、小里クンの体の動きはいつもより揺れていた。
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客席の声援の大きさと熱さは倍くらいの人数のように思えたし、きっとそういう波動がステージ上にも伝わったのではないだろうか。それはもちろん僕にも自然と伝わってくるわけで、だからよりライヴっぽい音になったのだ。
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何よりパフォーマンスが最高にエキサイティングで、演奏が上手いとか曲がいいとかを超えた、すごいなぁ〜という感嘆の言葉でしか表現できない代物である。
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こうして僕のコレクターズとのツアーは終了。あと何本かやれたらいいのになぁとも思うが、悔しいけど自分が地方にいる環境とか単なる腕(技術)とかの問題があるのもわかっているし、でもそれよりも、このバンドに少しではあるが関わらせてもらえていることが誇りでもあり有り難くもあるのだ。

きっとファンの人たちも、このバンドと出会えて良かったと感じているはずだ。そう思える魅力がコレクターズには詰まっている。
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語弊はあるが決して一般的には立派じゃないかもしれない(笑)4人が紡ぎ出すあのサウンドは、他の誰が真似ようとも到底敵わない凄みと貫禄と青さと温度があり、そこに作り物ではない本物のMODロック魂が宿っているような気がしてならない。
そこら辺が多くのミュージシャンにリスペクトされる要因でもあるだろう。

club changeの店長とも、こういう勇気が湧いて楽しくて圧倒的なライヴこそ、若い人やバンドマンや音楽関係者にもっと見てもらいたいよねと話したが、心からそう思う。

打上げは感じのいい居酒屋へ。盛岡の音楽状況やら岩手の桜の話題やらで楽しく飲む。
眠いけどもう1杯だけいこうよと2軒めに突入した数人は、そのBarで流れていたツェッペリンのライヴ映像を観ながら、ジミー・ペイジやリッケンバッカーを酒の肴に結局3~4杯飲んでしまったのであった。


2013.3.25 mon.
ホテルをチェックアウトし松本社長と秦クンとQちゃんと小里クンは楽器車で東京へ、加藤クンはキャンペーンとインストアイベントのため新幹線で仙台へ、僕はコータローを乗せ岩手県北上市に寄り道し、ずっと音楽の話をしながら仙台へと戻った。
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コータローと北上に行ったのは22年振りだろうか。あの時は青森からの帰りでメンバーもいたのだが、これについては機会があれば本人の了承を得て書いてみたいと思う。


さて、ちょうど今日は宇都宮でのライヴ(きっと盛り上がっただろう)だったから、MOD TONEツアーは残すところあと5本だろうか。

こうなると全部が必見なのは間違いないが、個人的に来週末の沖縄(那覇・桜坂セントラル)は単純に観てみたいなぁ。会場とも合いそうだし。

そして新木場でのファイナルは、今回のセットリストが最高に映える舞台になるはずで、ここは迷わず参戦することをお勧めする。

もちろん僕も応援に駆け付けるつもりだし、MODなTONEに思いっきり身を委ねたい。
by higehiro415 | 2013-03-31 01:12 | 音楽