ギター選び
2013年 05月 31日
正確には彼女が新しいギターを欲しがっていて、でもどれを買ったらいいかわからないから教えて欲しいというので、いろいろとアドバイスしながら買い物に付き合ったのである。
いくつかのギターを予算とルックスに照らし合わせ3本に絞り試奏させる。
店員さんには「お父さんもこちらのイスにどうぞ。いろいろ詳しいですねぇ。お父さんもギターやってらっしゃるんですか?」などと接客され、多少気恥ずかしかった。
やはりおれそんなに老けてみえるか?と一瞬思ったが、彼女は学校帰り制服で来ているし、そのママも付き添ってきたので、完全に家族に間違えられたのは致し方あるまい。
でもそう見えなかったら逆に困るシチュエーションでもある(笑)。
しかしそんな感じも今日に限っては悪くないと、父親のつもりで一緒にギターを選んだ。
そして彼女は、とてもお似合いのギターを手に入れたのである。
今日に至るまでの、ちょっとしたドラマを書く。
昨年末、同級生が富谷に飲食店をオープンさせるということで、そのプレオープンパーティーに行った時のことだ。
なかなかにいい店だし宣伝も兼ねて、僕はTwitterで場所をつぶやいた。
そしたら、誰なのか身元がわからなかった人からリプがきた。
「そこ、うちの近所です。行ってみたいです。いつオープンですか?」
それに返信すると「ありがとうございます。お母さんと行ってみます。あっ、Kの娘です。」と返ってきた。
僕は仰天した。Kの娘!?
今なら確実にこう叫ぶだろう。じぇじぇじぇ〜!?(笑)
Kとは、一昨年の大震災の津波により、一足先にこの世を旅立った元バンドメンバーだ。
やつの娘がなぜ僕をフォローしていたのか?
彼女が生まれてすぐの頃、およそ15年前に数回会っただけである。
何しろKのことはショックが大きすぎて、お墓には何度も足を運んでいるものの、昔からよく知っている奥さんの顔を見るのも辛くて、家には一度も行っていないのだ。
少し冷静に考えてみる。
もともと彼女の父親と僕がバンドをやっていたのを知っていてフォローしていたのか、それとも亡くなってから父親の携帯か何かで知ってフォローしたのか。
いずれにしてもこちらがまったく気付かなかっただけで、彼女は知っていて時には僕のつぶやきを見ていたのだろう。
それから慌てて彼女のTwitterを遡ると、「今日ピースメーカーズ(僕らがやっていたバンド)聴いたら、やっぱめちゃカッコいい」とか「朝のギター練習!」とか書いてあるので、音楽が好きでギターも弾いているのがわかり、なんかとても嬉しくなった。
でも同時に「こんどギター教えて下さい」なんていうリプがくると、Kがいれば奴に教われたのに…などと何だか胸が苦しくなったりということもあった。
そして先月末のアラバキRock Fest、コレクターズのステージを終え僕がPAテントから降りると、一人の少女が近付いてきた。
ピンときた。Twitterで僕の居場所をチェックしているはずだ。
「お〜!もしかしてKの娘か?」
「はい。お父ちゃんに似てるって言われます。」
「いや、そうでもないよ(笑)」
そっくりだった。
彼女が赤ちゃんだった頃を除けば、はじめて顔を合わせ声で言葉を交わす。
5月には、大好きなチリヌルヲワカの仙台ライヴに母と一緒に行くと言う。
「おれもPAで現場にいるから。ママにもよろしくね。」Kの奥さんとは10年以上会っていなかった。
そして先々週の5月18日、仙台でのチリヌルヲワカLive会場で、親子揃っての再会を果たしたのである。
「いつもお墓に来てくれてるでしょう。ありがとう。こんど家にも寄ってね!」
もう何とも言えない気分だった。
その時にギターを買いたいのでアドバイスをと頼まれ、ようやく今日時間が取れたという次第なのである。
ママには「なんだか親戚のおじちゃんみたいだね」と笑われたが、そりゃそうだ。
Kにはいろいろと世話にもなった。
たまたま昨日が娘の誕生日だったというので、ミニギターアンプをプレゼントした。
そして別れ際にママにこう言われた。
「お父ちゃんもヲワカ好きでさぁ。よく娘に自慢してたよ。『おれの友達はヲワカのドラムの人と仕事してんだぞ!』って。らしくないでしょ?(笑)」
この仕事で頑張っていて良かったと痛感すると同時に、偶然とはいえ(今日の日も含めて)いろいろな出会いとドラマに感謝にする。
近いうちギターを教えに行ってみようかな。