佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
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〜愛ある世界〜 THE COLLECTORS Super Tribute レポ(ARABAKI 2015)

コータローがGibson 335をしなやかにコードストロークすると、VOX AC30からはいつもの独特の音が鳴り響く。QちゃんのタイトなドラムとJeffのグルーヴィーなベースが重なる。いつもと寸分違わぬコレクターズサウンドだ。いやさらにバンド感は増しパワーアップしている。

そしてこの日は特別なプラスアルファがある。真城めぐみと畠山美由紀という日本を代表する2人の歌姫によるコーラス、高野勲と山本健太というセンス抜群のキーボーディストが一緒だ。


オープニングのインストが終わる頃、ユニオンジャックのジャケットに身をまとった加藤クンがステージに登場すると、およそ1万人の観客からウォー!という歓声が沸く。

Qちゃんのカウントで照明がドカンと明るくなり、シンセ音と共に♪Love~というボーカル&コーラスが大自然の星空へと吸い込まれていった。

記念すべき1曲目はこのトリビュート企画のタイトルにもなっている「愛ある世界」。僕はデジタル音響卓のフェーダーを慌ただしくいじりながらも、一気に夢のような空間へと引きずり込まれていった。

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15回目を迎えるARABAKI Rock Fest. 2015にTHE COLLECTORSが出演、それもトリビュート企画だと連絡が来たのは昨年の初秋だっただろうか。徐々に具体的な形が見え始め、豪華ゲスト陣とタイムテーブルを知ってからは、本当にこの日が待ち遠しかった。

そして何度も、夢ではないだろうか?と思ったのも事実で、主催であるGIP・菅Pは勇気ある夢のある男気溢れる決断をしたなと感心する。


遡れば昨年コータローBDを記念した伝説の北上ライヴがかなり大きな伏線の一因になったようだが、そういう意味ではザ・コレクターズという稀有な存在のバンドは、ファンのみならず音楽を心から愛する我々関係者や音楽業界全体にも夢や希望を与えてくれているのではないだろうか。

同時に戦略や金や権力や癒着などではなく、純粋にバンドの音楽性と魅力と周囲の愛によってもたらされ実現した企画ということに、とてつもなく大きな価値があると思うのだ。

まして僕や東北のファンにとって、このフェスでというのが最高の喜びでもあった。

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当日の朝は緊張からかワクワクからか、おそらくその両方なのだが、かなり早く目が覚めた。雨の心配など微塵もない雲ひとつない快晴。

出かけるにはまだ時間があったが忘れ物などないか入念に準備していると、コータローからメールがきた。

やっぱり予定より早い新幹線で行こうかな。

彼も早く起きてしまって時間まで待っていられなくなったのか?と笑いをこらえながら返信する。

仙台到着何時?会場まで乗せてくよ。


こうして他のスタッフやメンバーより一足先に僕らは会場入りした。時間的にもよかったのか道中はまったく渋滞などなくスムーズだ。車中は今月の彼のBDライヴのために選曲したコラボCDRのサンプルを聴きながら、今回はこれまでと違う感じでいいねなどと話しながら。そしてゲスト出演を打診された若大将がひとこと「おれも出してくれるの?」と言ったというエピソードを聞き心温まる。


陸奥ステージと荒吐ステージの後方中間にある広大な楽屋スペースに到着すると、知った顔がたくさんいて、その開放的な雰囲気も手伝って否が応でも気分が盛り上がってくる。これもフェスの醍醐味だ。

コータローと二人で、まだ今ならいいだろうとビールで乾杯。

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ケータリングコーナーの先の楽屋脇にチャボさんの事務所社長を発見し挨拶に行く。中に入ると「お~!コータローくん、佐藤ちゃん!」と満面の笑みで握手を求めてくれるチャボさんに、コータローは何やら秘蔵の写真を見せ盛り上がっている。とても微笑ましい。


今回のコレクターズ・スーパートリビュートのゲストを見ても、加山さんを除けば皆コレクターズ(加藤・古市両氏)より年下で、まぁ音楽に年齢は関係ないとはいえ、やはりチャボさんのような大先輩が第一線で活躍していることは僕ら世代にはとても励みになるし、ひいてはコレクターズが下の世代を刺激しているという伝承ラインは、とても感慨深いものがる。


1時間ほどすると機材車や他メンバーも会場に到着し、スタッフ全員で陸奥ステージを下見しに行き、舞台袖で細かい作業や手順をミーティングする。愛ある仲間たちだ。

ローディーのスーさんと秦くん、そして病床の山品さんに代わり舞台監督をやってくれる萩さん(コレクターズの東京での大きい現場をいつも仕切っている。奇跡的に空いてて助かった!)、照明は高橋優くん等もやっている謙太郎くん、PAはハウス(会場)が僕でモニター(ステージ上)に山本さん(東北以外でのコレクターズではハウスをやっている)、制作にVintage Rock若林さん、マネージャー松本さん。

現地PAや舞台は僕が仲良くさせてもらっている会社が担当しているので、ステージスタッフも完璧だ。

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こういう大きなイベント現場はスタッフがモノをいう。一人一人がプロフェッショナルに役割を果たすことで、全体の質がグレードアップするからだ。出演者が最高のパフォーマンスを見せるならば、最高のお膳立てを用意する必要がある。それが文字通りステージとなり多くのオーディエンスを酔わす。もちろんバンドの素晴らしさに勝るものはないのだが、美味しい料理は綺麗な皿にセンス良く盛り付けたほうが、より美味しく感じるではないか。それと同じだ。

何としても僕も最高の仕事をしなければと、あらためて思う。


楽屋に戻るとオープニングアクトCrazy Appleの面々も集まってきていた。和やかだがちょっと緊張しているようにも見える。他出演者も入れ替わり立ち替わり挨拶しに訪れる。こんなところからも多くのミュージシャンからリスペクトされるコレクターズの今の立ち位置がわかる。

メンバーはラーメンを食べたりカレーを食べたり他出演者と談笑したり、リラックスしているようで頼もしい。


刻々と時間が過ぎ、ウルフルズの本番中にステージ裏で楽器類を下ろす。そしてトリ前クロマニヨンズの演奏をステージ袖で聴きながら、ライザーの上に各楽器をセットしマイク類をアレンジしていく。Crazy Appleの分もなので、2セットである。

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転換時間は60分。長いようだがその間にステージをセットチェンジし、ハウスで46チャンネル、モニター16系統のチェックなので、そんなに余裕はないのが現状だ。

隣にいた土田さん(池24ディレクター)も「なんかこっちが緊張するなぁ~」と録音機材をセットしている。


なんとか時間きっかりに回線などのチェックを終え、いよいよTHE COLLECTORS Super Tribute~愛ある世界~(produced by 山中さわお)が幕を開ける。

ジングルが終わるとまずはオープニングアクトCrazy Appleの4人が登場。山中さわお、ビートりょう、ウエノコウジ、クハラカズユキという強力なメンツ。


「特別な夜を目撃しに来た皆さん。今夜は今まで開催されたどのモッズメーデーよりも、モッドで価値のあるそんな夜にしましょう。コレクターズが放つ愛ある世界。コレクターズに向けられる愛ある世界。小さな花を添える俺たちクレイジーアップル。よろしくお願いします!」

さわおの少し震えているようにも聞こえたオープニングMCが終わり、ギターがイントロを奏でる。

♪GO! GO! GO!、♪Stay Cool! Stay Hip!、♪夢見る君と僕、♪僕の時間機械(タイムマシーン)の4曲を本当に嬉しそうに大切にプレイしていた。

彼らの解釈でのコレクターズナンバーはとても新鮮で、勢いのある演奏は大いに会場を盛り上げた。

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そしていよいよ大トリの登場。

舞台側から「準備OK?そろそろ行くよ!」と声が掛かる。客席後方のPA・照明テントの中で僕と謙太郎くん(照明)はアイコンタクトを取る。卓のフェーダーを握る手が汗ばむ。

ブルーがかった照明の中メンバーが現れ、冒頭に書いたオープニングシーンだ。

どんな愛ある世界が展開されるのかしっかり見届けたいという想いとは裏腹に、なんかフワフワとした経験したことがない感覚だ。(その証拠に写メをあまり残せていない。笑)

そういえば北上ライヴのときコータローが同じようなことを言っていたのを思い出す。緊張でも感動でもない、どこか雲の上にいるような不思議な感覚だったと。

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キーボード2人・コーラス2人を従えたコレクターズは、曲のポップなニュアンスがより具体化してキラキラ感が増すといった印象だ。ツボを押さえたキーボードプレイ、華やかさとソウルフルを兼ねたコーラス隊はほんと最高であった。

そしてバンドのスケール感のある歌と演奏とステージングはこの大きな会場でもまったく違和感なく、むしろ大きさを感じさせないようにも映る。

この日のセットリストは掲載の写真を参照して欲しいが、頭3曲を終えた加藤クンの最初のMC「すごいな。これが1万人か。でもおれには若干狭いな(笑)」というのはまんざらでもない感じがした。

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ここから豪華ゲスト陣が、奥田民生、TOSHI-LOW、山中さわお、草野マサムネ+田村明浩、吉井和哉、そして若大将・加山雄三と続いていくのだが、その選曲も含めて言葉では言い表せない眩い至福の連続であった。

それはあの場で体感した人にしかわからない素晴らしさであり、説明するのは野暮というものだろう。それを選択した人だけの宝物なのだ。(内容については来月末のCS放送でチェック)


そして裏のハイライトはゲストとサポートが去り4人だけで演奏した♪百億のキッスと千億の誓い、♪Nick! Nick! Nick!だったのではないかと思ったりする。

メロディーの素晴らしさが浮き彫りになったこともそうだが、ゲストもキーボードも同期もコーラスもないのだが寂しくならないというか、アンサンブルとか音の厚みとかがまったく変わらないのだ。これには驚いたし発見だった。要するに4人だけでCDに収録されている他の楽器の分までカバーしていたということだ。

鋼のように鍛え上げられたアスリートの如し強靭なバンドサウンドとボーカル。ちょっと格が違うなということをまざまざと見せつけられた。

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アンコールの♪僕はコレクター、では本番中からステージ袖で盛り上がっていた他ミュージシャン達が、予定外の者まで乱入するという大団円を迎えた。あとで加藤クンが「知らない人もいた(笑)」と語っていたほどだ。最初どうノレばいいのか戸惑っていたコレクターズ初心者のオーディエンスも、ここではダ~リダリリ~と手を上げ振っていた。この光景も素敵だったし感動的だった。

このバンドはどれだけ愛されリスペクトされ、観る者を熱くさせるのか。

盆踊りも登場し渾然一体となったラストは、より現実感をなくしトリップ感覚を増長させたのではないだろうか。菅ちゃんの音程を外した歌声もナイスだった。


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こうして祭りは幕を閉じた。

照明の謙太郎くんと、こんなにステージ上が見えないままオペレートしたのは初めてだねと笑いながら握手した。遠いしバックライトが眩しいのとで、僕らの所からはメンバーの表情や細かい動きはほぼ見えなかったのだ。勘と音だけでハウスPAと照明をやりきった心地いい疲労感をお互いに労う握手だった。

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私事で恐縮だが、東京でのリハに参加してきたとはいえ、本番でサウンドチェックもなくちゃんと音が出せるのかというプレッシャーは大きく、それを打ち消すために数日前から飽きるほどイメージトレーニングをしてきた。1曲目が愛ある世界だったからなおさらで、いつもの4人だけなら自信はあるが、今回はゲストサポートも入っていて音数が通常の倍以上、2度のリハでは全体を掴み切れていない部分もあった。


そしてバンドや菅ちゃんやファンの人たちのことはもちろん、コレクターズ初体験の人たちが大勢いると思うと、絶対にいい音を出さなければという使命感があったし、あとで他の人に音を任せればよかったと絶対に思われたくないという自分自身の意地もあったのである。病気で欠席の山品カントクの分もあるし、どこか東北代表みたいな気持ちもあった。

結果は皆さんに判断してもらうほかはないのだが、自分としてはバッチリ出来た部分もあるが、もう少しやれたと思う部分も多々あり、おれもまだまだだなぁ~と更なる努力と経験が必要だと痛感している。他のスタッフの皆さんが素晴らしい仕事っぷりだったので、なおのことそう思うのだが。

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僕の車で一足先に会場を出た加藤クンとコータローとで、仙台市内の全体打ち上げ会場へと向かった。まだ店にはあまり人が来ておらず、僕らは奥のテーブルに案内され腰掛け控えめに乾杯する。

だんだんと出演者やスタッフが集まってきて、加藤クンとコータローを見つけた民生くんや吉井くん、タイジくんらもこちらのテーブルに座ってくる。


僕はそそくさと他のテーブルへ移動し、なんだか幸せな空間だなとワインを飲んだ。それは自分が幸せというのではなく、この場にいる全員がハッピーな表情をしていて、つまりそれはこのフェスの大成功を物語っているわけで、みんながそれぞれいい仕事をしたということ。そしてその中心に今宵はコレクターズがいるという事実が、とても心地よかった。

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乾杯の挨拶は加藤クンが、締めの挨拶はコータローが指名されお互い個性的な(笑)挨拶をしたのだが、2人とも同じように口にしたのは「皆さんのお陰で今日のステージに立てた。」ということだった。

それはここにいる全員はもちろん、応援してくれたファンの方々のことをも差しているのだろう。何度も苦杯を舐め回り道しながらここまで来た、彼ららしい挨拶だと思った。

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みんなと別れたあと、昼間とは違い風がだいぶ冷たくなった夜道を歩きながら考える。今日のことは本当に現実だったのだろうか。リハのときにコレクターズもようやくここまで来たかと感極まった自分が、予想に反してこの日は感激で涙することはなかった。それほど夢のような時間だったということか。


数時間前の演奏を頭の中で蘇らせる。

今宵のステージは確かに大舞台だったが、これが彼らのゴールではない。これがきっかけとなりもっともっと多くの人に聴いて欲しいと願っているが、そんな観点からも要するに通過点のひとつなのである。

このバンドはまだまだ上に行ける!と強く感じさせてくれる圧倒的なパフォーマンスと演奏、あんなのを見せられたらここで感傷に浸っている場合ではない。

来年はコレクターズの30周年イヤーなのだ。


東北のイベントだからこそ僕も関われた。それは本当にメンバー及び各関係者に感謝している。こんな機会は僕にはそうそうないだろうが、自分に出来る範囲で微力ながら今後も彼らを応援し続けたいと思う。

そして僕にまで頑張って!と声援をくれた皆さんにも、心から感謝だ。

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そういえばあの日の真城めぐみのTweetが最高にイカしてた。

「おい!コレクターズの事おっさんとか言うなよ!あんなおっさん自分の周りみて居るか?」

いろんな意味で(笑)本当にその通りだよなぁ。


一夜限りの愛ある世界、

あの瞬間確かに、ハートの鼓動で地球は廻っていた気がする。


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by higehiro415 | 2015-05-04 23:48 | ライヴ