佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
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MOD TONE_仙台・盛岡

2013.3.23 sat. 仙台MACANA
予定より少し楽器車到着が遅れそうだというので、念入りに準備をする時間があった。
いわき・水戸とPAをやってきて、より細かいところや修正するべき音作りのポイントが明確になっていたので、それを念頭にスピーカーのチューニングをし、リバーヴのEQとパラメーターを調整する。
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基本的な音のイメージは前回のブログに書いたが、それに加えてもうちょっとギターとベースの重なりを重厚に出すこと、音の隙間で鳴るドラムのフィルを印象的にするバランスとリバーヴ感、ボーカルエフェクトの細かいニュアンスとメリハリ、加藤クンのアコギの音など、いくつかの宿題を自分なりに与えていた。

どの会場であろうとベストを尽くしているが、やはり慣れや分析をする時間(機会)は必要だし、今回の演奏のクセみたいなものもつかめたので、この日は前週以上に腕が鳴る。なんといっても僕の地元であるし、無意識に気合いが入る感覚があった。

狭い会場が良くないということでは決してないが、ザ・コレクターズのようなダイナミックな生音を出すバンドは、この位の広さとPA機材のほうが更によく聞かせることが出来るし、照明も映える。オーディエンスだって見やすく聴きやすいのではないかと以前から進言していたこともあり、どんなことをしてもイイ音を出さねばという責任もあった。
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楽器車は30分ほど遅れて到着し、急いで楽器類をホールへと搬入する。地下2階分の階段を荷物を持って何度も上り下りするとさすがにヘトヘトになるが、10年前までは平気だったなぁ〜などと思いながら運んだ。
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ローディー秦クンが楽器を手際よくセッティングするのと平行して、僕はマイクスタンドを各楽器にセットしていく。

セッティングが一段落し楽屋へ行くと、加藤クンが約束通りにChange Energyのプリントが入ったミリタリーパーカーを持ってきてくれていた。羽織ってみるとサイズもピッタリだ。
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僕個人の考え方として社会的な発言は誤解を招きやすいし、反原発とか声高に言うつもりはないのだが、加藤クンの「こういうのはさ、1人1人がきちんと意見を持つことが大事で、それには多少は発言が目立つおれたちみたいな職業の人が声をあげることも必要だと思うんだよね」という言葉に、なるほどと納得したりもする。

それは例えばポール・ウエラーが「Motownサウンドは最高だよ!」と発言し、Motownを知らないリスナーが興味を持ち聴いてみるきっかけになるというのと同じ構図だろう。強制ではなくあとは聴いた人の自由に委ねられるという意味でも。

仕事でもよく行き知人も多い福島の状況を見て、僕もこの位のこと(Change Energyとプリントされたコートを着ること)は出来るなぁと思うのだ。正しいとか間違ってるとか、良いとか悪いとかじゃなく、単純にいかがなもんかと自分で感じるだけである。

偶然にも翌々日に仕事させてもらったジェーン・バーキンが「おかしいと思ったことや疑問がある時は、相手が友達であろうと政府であろうと、きちんと意見しないと誤解は解けないし何も変わらない。気持ちよく過ごせる環境にするには、皆さんそれぞれが考えを伝え話し合うことだ。それに対して誠意の無い対応や聞く耳を持たない相手はNo Goodということでしょ」みたいに言っていたことともリンクする。

話が逸れてしまったが、ミュージシャンといえど所詮は僕らと同じ一人の人間で、そこで奏でられる音楽は大なり小なり想いみたいなものが投影される。それが恋愛のことであれ社会のことであれマインドのことであれ、もう若手ではないのだからヒューマンがあればこそリアルに響くのではないだろうか。

さて、サウンドチェックはドラムの阿部Qちゃんから。生音がわかっているしバスドラムやスネアなど、通常のように1つ1つを叩いてもらい調整するやり方はしない。始めから3点(キック、スネア、ハイハット)で音をもらい、2つのタム、3枚のシンバル、そしてトータルとサクッと進む。

これは入念じゃないということでなく、僕がロンドンにいた頃に学んだことで、一般的な日本のやり方とは逆だ。要するに最終的にはドラムだけで9本のマイク、他の楽器やボーカルも含めると20本ほどのInputをまとめるわけで、単体の音を気にするよりも全体の音のイメージを大切にしろということだ。

もちろん全体の音のための1つ1つも大事だが、ライヴハウスだと生音も結構聞こえるし、やはりトータル(バンド全体)で鳴るサウンドに重点を置く。

歌をきっちり聴かせたい場合は特に、1つ1つの音を決めて重ねていってもうまくいくとは限らない。だからある程度の調整にとどめ、バンド全体でのサウンドチェックで1つ1つ気になるところをいじっていくほうが僕はしっくりくるし時間短縮にもなる。

Qちゃんのドラムはタイトでチューニングもいいので、いじり過ぎずバランスに気をつければとてもやりやすい。今回はシーケンサーも使用。
続いて小里クンのベース。低域のふくよかさと中域のバキッとした感じが持ち味だ。

加藤クンのエレキギターとアコースティックギター。彼の声の音域とぶつからないように調整する。特にアコギはバンドの音に負けじと出してしまうと痛い音になるので要注意だ。歌声はキーが高いのでキンキンせず細くならないように気をつける。

コータローのギター。これは前回も書いたがアンプのスピーカーの音だけではなく響きも加味して、リッケンとVOXのあの音をいかに再現するかに尽きる。そして歌はスモーキーな声質をあまり変えずに、でもパリっとするように調整。

こうしてリハーサルへと流れていく。照明さんは曲の出だしや色合いやきっかけなどを確認し、シーンを調整卓にメモリーしていく。
ステージ上はいかに気持ちよく演奏できるかが鍵なので、メンバーは生音やモニターを確認しながら音の状況を把握していく。
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僕はステージからの注文に応えながら客席の至る場所を動き回り、音の聞こえ方をチェックしていき、少しずつバランスや音質を調整する。
普段は聞こえないが音の隙間にだけ残るように、リバーブ(残響音)やディレイ(遅延音)を微妙に足すことも計算する。ここも自分なりのこだわりの1つだ。

結局はお客さんが入れば音も変わってくるし、もちろん演奏だってノリで微妙に違ってくるので、最終的には本番中の耳と咄嗟の判断になるのだが、それに備えるための最低限の準備である。

コレクターズは百戦錬磨だし演奏や生音の作り方も上手いので、この日のリハも30分ほどで終わった。僕の音のほうもいい感触で、あとはお客さんが盛り上がるような展開になれば、相当すごいライヴになるだろうという予感がした。
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開場時間になり、僕が担当する4ヶ所(いわき・水戸・仙台・盛岡)のために選曲したModsテイストのBGMを流す。これは食前酒みたいなもんで、メインディッシュを引き立てようと勝手に選曲したものなのだが、何も言わず許可してくれた事務所とメンバーに感謝である。

開演予定ほぼきっかりに準備OKの合図がくる。
BGMをフェイドアウトするのと同時に客電が落とされ、SEのスタートボタンを押す。
フロアに歓声と手拍子が起こる。

加藤クン以外のメンバーが登場し各々の位置につき、楽器を手にする。この瞬間は何度経験しても僕も緊張する。
ほどなくコータローのこれでもかと言わんばかりにヴィヴィッドな音色のギターカッティングで、この日のライヴも幕が開いた。

加藤クンが現れ歌い始めると、フロアが更に揺れていつものダイナミックなグルーヴが一瞬で会場中に充満する。
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POPでノリがいいナンバーが4曲続く。軽いMCのあとは、初期の名曲がまるでDJプレイのようにつながっていく。
前半は前週よりMCが少なめで、よりシェイプアップされた印象だ。

オーディエンスの盛り上がりも、僕が仙台で長年見続けてきたコレクターズの中では一番のような気がした。仙台人である僕が言うのも変だが、仙台の人はどこか醒めている印象があってそれはシャイだということもあるのだろうが、それをここまで熱狂させるのだから、やはり今の彼らのパフォーマンスは円熟の極みと共にエネルギーに満ち溢れているのだと実感する。
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中盤にはお楽しみの(?)爆笑MCも炸裂。話題のPodcast「池袋交差点24時」も相変わらず絶好調だが、加藤クンとコータローのこの面白すぎる絡みは今に始まったことではない。昔から変わっていないのだ。

新曲やコータローがボーカルをとる曲も、ツアー中盤を過ぎていい具合にこなれてきている。
今回のインストナンバーは個人的に相当気に入った。弾けたグルーヴと途中からグニャっと歪む感じが、とてもクールでMODなのだ。僕もここでは音をゆがませる。
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後半は否が応でも胸が高鳴る怒濤の名曲が続き、本編が終了する。
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アンコールは僕も何がくるのか知らされず毎回違う曲をやり、あの定番曲で幕を閉じた。
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この日はダブルアンコールがなかったが、それは本編ですべて出し切った気迫の演奏だったことと、残念ながらお客さんが少し帰ってしまったからではないのかと勝手に想像する。でもそれがアンコールの正しき姿である。
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まぁそれにしても素晴らしすぎるライヴであったことは確かで、僕も納得の音を出せたこともあり、終わった途端に心地よく力が抜けたのであった。

早くビールが飲みたい!(笑)と思いながら、また長い階段で機材を上げ車に積み込み、急いでメンバーが待つ打上げ会場へと向かう。
先週から仙台ではラーメンで〆ね!と決めていたので、つまみはほどほどに。若い頃はライヴ後のビールが楽しみで頑張ったよね、などと和気あいあいと飲む。

そして今夜は初心に返って上海ラーメンにしようと移動し、ビールなど飲みながら「やっぱり旨いなぁ〜」と舌鼓を打つのであった。


2013.3.24 sun. 盛岡club change WAVE
ちょっと肌寒い朝だった。それでも昨年(奇しくも3.11)の盛岡は確か雪が降っていたからそれよりいいなと思いながら、珈琲をすすりホテルでメンバーを待つ。

先週と同じように僕の軽自動車には加藤クンとQちゃんが乗り込み、楽器車と2台で盛岡へ移動する。車中は、例えばもっと魅力的なルックスの車があれば欲しいけどないよね、とかいつものようにとりとめの無い話をしながらだ。
高速も空いていたし、一度トイレ休憩をしただけで順調に会場に到着した。

ライヴハウスのスタッフ数人も手伝ってくれ、楽器を搬入する。しかしここのスタッフの搬入搬出手伝いの頑張り様は半端ない。
こっちも楽だということ以上に、その動きで他のハコと差別化しようという努力が見て取れ、一緒にやってる感もあり気持ちいい。これは色々なバンド関係者からも耳にしていた。

メンバーは思い思いにランチへと外出し始め、コータローが「佐藤クン、そこら辺にメシ行こうよ」と誘ってくれるが、この会場でのPAは初なので「ちょっといろいろ準備したいから行ってきて」とランチをあきらめセッティングする。
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ビルも機材もそれほど新しくはないが、何かハコの想いが詰まっているような、そんな柔らかい響きがする会場だなと感じた。

昨日と同じように準備は着々と進んでいく。徐々にメンバーもランチから戻ってきて、自然とサウンドチェック〜リハへとなだれ込む。
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モニターがちょっと聞こえづらいことを除けば、予想通り適度にライヴ感のある気持ちいい音の響きで、頭を悩ませること無くリハは終わった。

ライヴは動員がもうちょいあればとも正直思ったが、先週から札幌ライヴとキャンペーンも続きやや疲れ気味だった加藤クンの声量も落ちることなく、メンバー全員むしろ逆に気力を絞り出す感じが、よりロックに見えた。
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演奏は昨日と同じように素晴らしかったのだが、なんていうか、感情があふれ出すステージングだったと思う。
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事実MCでの加藤クンは「人は少ないけど、なんか調子いいな(笑)」と言っていたし、後で訊いたら「別に岩手だからっていう意識はなかったけどね」と言っていたコータローの動きは、いつもより前に迫ってくる感じがあった。Qちゃんも楽しそうにドラムを叩いていたし、小里クンの体の動きはいつもより揺れていた。
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客席の声援の大きさと熱さは倍くらいの人数のように思えたし、きっとそういう波動がステージ上にも伝わったのではないだろうか。それはもちろん僕にも自然と伝わってくるわけで、だからよりライヴっぽい音になったのだ。
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何よりパフォーマンスが最高にエキサイティングで、演奏が上手いとか曲がいいとかを超えた、すごいなぁ〜という感嘆の言葉でしか表現できない代物である。
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こうして僕のコレクターズとのツアーは終了。あと何本かやれたらいいのになぁとも思うが、悔しいけど自分が地方にいる環境とか単なる腕(技術)とかの問題があるのもわかっているし、でもそれよりも、このバンドに少しではあるが関わらせてもらえていることが誇りでもあり有り難くもあるのだ。

きっとファンの人たちも、このバンドと出会えて良かったと感じているはずだ。そう思える魅力がコレクターズには詰まっている。
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語弊はあるが決して一般的には立派じゃないかもしれない(笑)4人が紡ぎ出すあのサウンドは、他の誰が真似ようとも到底敵わない凄みと貫禄と青さと温度があり、そこに作り物ではない本物のMODロック魂が宿っているような気がしてならない。
そこら辺が多くのミュージシャンにリスペクトされる要因でもあるだろう。

club changeの店長とも、こういう勇気が湧いて楽しくて圧倒的なライヴこそ、若い人やバンドマンや音楽関係者にもっと見てもらいたいよねと話したが、心からそう思う。

打上げは感じのいい居酒屋へ。盛岡の音楽状況やら岩手の桜の話題やらで楽しく飲む。
眠いけどもう1杯だけいこうよと2軒めに突入した数人は、そのBarで流れていたツェッペリンのライヴ映像を観ながら、ジミー・ペイジやリッケンバッカーを酒の肴に結局3~4杯飲んでしまったのであった。


2013.3.25 mon.
ホテルをチェックアウトし松本社長と秦クンとQちゃんと小里クンは楽器車で東京へ、加藤クンはキャンペーンとインストアイベントのため新幹線で仙台へ、僕はコータローを乗せ岩手県北上市に寄り道し、ずっと音楽の話をしながら仙台へと戻った。
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コータローと北上に行ったのは22年振りだろうか。あの時は青森からの帰りでメンバーもいたのだが、これについては機会があれば本人の了承を得て書いてみたいと思う。


さて、ちょうど今日は宇都宮でのライヴ(きっと盛り上がっただろう)だったから、MOD TONEツアーは残すところあと5本だろうか。

こうなると全部が必見なのは間違いないが、個人的に来週末の沖縄(那覇・桜坂セントラル)は単純に観てみたいなぁ。会場とも合いそうだし。

そして新木場でのファイナルは、今回のセットリストが最高に映える舞台になるはずで、ここは迷わず参戦することをお勧めする。

もちろん僕も応援に駆け付けるつもりだし、MODなTONEに思いっきり身を委ねたい。
by higehiro415 | 2013-03-31 01:12 | 音楽

MOD TONE_いわき・水戸

2013.3.16 sat. いわき(福島)
ツアーが始まったばかりの2月中旬、東京で古市コータローと飲んだとき話を聞いていた。
今回のセットリストについて、そして久しぶりにリッケンバッカー1本で全曲演るということ。

そのとき彼はこう締めくくった。「ま、来月楽しみにしててよ!」
ツアーを3本終えたところだったが、かなり手応えがあるのだとわかった。

その時点で僕なりに音のイメージは固めつつあったし、この日の会場club SONIC iwakiは好きなハコだしその音響特性とか機材も手のうちに入れていたので、サウンドチェックは順調である。

昨年の反省を生かし、最前列にもきっちり歌が聴こえるよう専用スピーカーを配置し臨んだ。
ライヴPAは技術や耳の良さはもちろん必要だが、それ以上にバンドの生音や曲や個性を理解するということも重要だと思う。
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今回の僕の作戦は、ドラマチックな流れのセットリストをシーンごとに音の緩急もつけること、そして何といってもリッケンバッカーの音をカッコよく出すこと。

さらに綺麗な音というよりは今のコレクターズの醍醐味である臨場感あふれるダイナミックなリズム、そしてボーカルは埋もれずに聴かせるというのが明確な目標だった。
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そこに近付けるようスピーカーのチューニングをしマイクアレンジをし、各パーツの音質と音量とエフェクトを調整する。
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ちょっと迷ったのはギターだ。リッケンにVOXのアンプという組み合わせは、自分もバンド時代に使っていたものなので、あの独特の音をいかにリアルに出すかということに余計シビアになる。

いろいろ試した結果、アンプの裏側の音も隠し味で足してみたらいい感じになったので、そのマイクアレンジでいくことにした。加藤クンのボーカルマイクはいつものように持ち込んだ。
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バンドはツアーの折り返し地点だったが、僕はこの日から計4本(いわき・水戸・仙台・盛岡)のPAを担当させてもらうということで、使う楽器や音色など確認しながらのリハーサル。
それでも1時間ほどで問題なく終了した。

楽屋では差し入れでいただいたフルーツケーキやらシュークリームを食べながら、リラックスムードで開場時間を迎える。

ドアオープンになるとフロアにどんどん人が入ってくる。動員はちょうど1年前のここと同じくらいに見えたが、あきらかに新しいファンが増えているのがわかる。
Podcast効果もあるのだろうが、まずはいいライヴを続けているからこそのことだ。
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SEの中メンバーが登場し、オープニングナンバーのイントロが鳴る。
ツアーが終わるまでセットリストは割愛するが、ツアータイトルMOD TONEの幕開けにはピッタリのナンバーだ。

その後曲が進むにつれグイグイと引き込まれていく絶妙な曲順で、これまで以上に起承転結が明確で劇的なのではないだろうか。
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そこに阿部Qちゃんのタイトなドラム、小里クンのうねるベース、コータローのドライヴィンギター、加藤クンの伸びのあるボーカル。

ライヴバンドとして群を抜く安定感と圧倒的なパフォーマンスが加わるのだから、僕のほうまでついつい熱くなり前のめりになってしまう。
そして相変わらずのおどけたMCにも、笑いをこらえられなくなる。

個人的には、リッケンでこの幅広い曲調をどのように弾きこなすのかと注目していたギタープレイだが、エフェクターを使いまくるわけではなく、弾き方でもって多彩なニュアンスを見事に聴かせてくれた。
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あのギターは良くも悪くも音に癖があり、どちらかというと歯切れのいいコードカッティング(例えばThe WhoのI Can't ExplainやThe JamのIn The Cityとか)に向いているはずだが、繊細な単音も綺麗な音をしていて完全にやられてしまった。

そしていつも思うことだが25年前の曲も今の曲も、まったく同列に聴くことができるという作品(メロディー)のクオリティーにも脱帽する。
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フロアは昨年と比べて一体感がとても増幅された空間になり、約120分の凝縮された時間はあっという間に過ぎた。

アンコールのあとエンディングのSEを流しても鳴り止まない拍手に、ダブルアンコールとなり、ライヴは幕を閉じたのであった。
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打上げは駅前の炭焼き居酒屋にて。
アラバキRock Fes.の話から音楽の話、福島の現状やら放射能の話やらしてお開き。

次の日もあるからと言いながら、居残り組5人(さて誰でしょう?)はサクッとラーメン食べてホテルへと戻ったのであった。


2013.3.17 sun. 水戸(茨城)
朝11時にホテルを出発し水戸へと車で移動。
僕のミニカー(軽自動車)には加藤クンとQちゃんが乗り込んだ。窮屈そうだが乗ってくというので安全運転で突っ走る。

車中では場所的に避けて通れない震災や放射能の話題になる。加藤クンが南相馬という看板を見つけ「佐藤クン、こっから南相馬に行けるの?」と訊いてくるが、避難区域があるから途中は通行できないよと答えると、すごく悲しそうな顔になった。

その他マスコミの体たらくぶりやニューアルバムの話などしていたら、予定より30分ほど早く会場の水戸Light Houseに到着した。
三々五々お昼を食べたあと、楽器を下ろしセッティング開始。
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僕は初めての会場だったので念入りにスピーカーやハコ鳴り(会場の音の響き)をチェックする。とても味のあるハコだ。

ホール内は横長で昨日のいわきよりデッド(音が響かない)ではないので、スペース的に考えてもちょっとラウドな音になると予想できた。
音作りは難しいのだがステージ上は演奏しやすいだろうし、よりロックなサウンドで挑もうと決める。

サウンドチェック〜リハは昨日の今日なのでサクッと終わった。
この日もオープニングなどの照明を指示しに、コータローが照明卓までやってきて打合せする。
開場までの間、楽屋ではツアーファイナルの打合せも行われていたようだ。
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ドアオープンになりあっという間にフロアが満杯になる。このギュウギュウ感は盛り上がること必至の状況である。

予想通りオープニングからフロアが揺れる。男性からの掛け声も多い。
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曲が進むにつれヒートアップしていく会場の熱気を感じながら、ついにThe Collectorsの時代が来たなぁと感慨深くなる。

このバンドと出会って25年、仕事では関わっていなかった時期もあるがずっと見続けてきた。ようやく余計な垣根が取っ払われ、真っ当なロックバンドとして評価されるようになったのではないか。
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話は脱線するが、そもそもMODSを全面に出したが故に、苦しんできたこともあったように想像する。
MODSバンドはその本当の意味も含めて、日本ではなかなか理解されない分野だ。

これは僕個人の意見だが、MODSというとあのロンドン60年代のユースカルチャーやファッション(映画「さらば青春の光」に代表される)ばかりにスポットが当てられ、そのスピリッツというかアイデンティティーはなかなか語られずにきたのが日本のシーンではないか。

新しくてスタイリッシュなものに独自の解釈を加えるという先取り感覚のMOD(Modernな、Coolな)センスは、ユースカルチャーという伝統的な古いスタイルとはある意味対極に感じられることもあり、両方を知らないとややこしかったりする。

だからこそ、もうModsではないけどいまだにModだよ、というPaul Wellerのような発言(加藤クンやコータローもそうだし僕もそうだ)も出てくるのだろうが、ジャンル分けしたがる日本(特に2000年以降)では更にわかりづらい存在なのだ。(クールという言葉は「イカす」「粋な」「カッコいい」と訳す必要がある。)

乱暴な解釈だが、ユースカルチャー論者からはModsがPsychedelicやRockに変わっていったように映ったかもしれないし、Modsに興味のない人からは何だかオシャレすぎて取っ付きにくいと思われたところもあるだろう。

それでも僕が長年見てきて言いたいのは、ザ・コレクターズはグッドメロディーのModsテイストを持ったModな『ロックバンド』だということで、それは今も昔も変わらないのである。

ライヴレポになっていなくて読んでくれた方には申し訳ないが、とにかくそんなことを踏まえてツアータイトルがMOD TONEだと知った時、これは勝負のツアーなのだなと確信した。

まわりを見渡しても彼らに憧れるバンドは数あれど、同じようなバンドは他に一切見当たらない。そういう意味ではまさにModなバンドだと言えるのだが(ややこしい?笑)、ようやく時代が追いついたというか、何の偏見もなしに音楽と演奏(キャラクターも?)で評価されてきたと強く思わざるを得ない、圧巻のステージと客席の熱狂であった。
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今週末3.23(土)仙台MACANA、3.24(日)盛岡Club Change WAVEは昨年のハコと比べ音響と照明をより効果的に使えるライヴハウスで、コレクターズには絶好の舞台になるはず。

この2日間もMOD TONEな選曲の客入れBGMを流す予定だし、音のほうも出来る限りグッドサウンドを提供できるよう頑張ります。

バンドマンや音楽好きの業界関係者も含め、ぜひ1人でも多くの方にご覧いただきたい。
そして多くのミュージシャンにリスペクトされる理由と意味を体感してほしい。

仕事云々は抜きにして、それが本物の音楽を愛する一人としての正直な気持ちなのである。

see you this weekend !
by higehiro415 | 2013-03-22 01:05 | 音楽
会場の向かい側にある英国風パブで、僕ら4人は思い思いにイングランドのエールビールやらアイリッシュウイスキーやらを片手に、この日のライヴについて余韻醒めやらぬといった面持ちで話をする。
それは音響の話やミュージシャンと裏方の関わり方や音楽業界の話にまで及び、笑いながらも熱く語り合う。

この日のライヴ会場だったZher the ZOO YOYOGIでの打上げを終えたとき、時計はとうに深夜0時を回っていて、僕は気が抜けたのと前日の寝不足もありだいぶいい感じに酔っていたのだが、ライヴに来ていた中村貴子さん(皆さんご存知だと思うが著名なラジオパーソナリティーで、貴ちゃんナイトというイベントも企画している熱き音楽人)から呼び止められた。

「ヒロさん、もうホテル帰る?今日はじっくり話したいことあるんだけどなぁ〜」
「お、いいですよ。じゃもう1軒行きましょうか!」
そんな訳で僕と貴子さん、小島くん(カムロバウンス)、アイタちゃん(Zher the ZOOスタッフ)の4人でプチ二次会へとなだれこんだのである。

貴子さんが目にいっぱいの涙を浮かべながら言う。
「浅田クンがさ、歌うのってこんなに楽しいんだと思ったツアーだった...って言ってたじゃない。あれ聞いたときホント嬉しくてさ。だってあの人はもちろんプロデューサーとしても才能あると思うけど、あの声とメロディーがあるのに勿体ないというか、1人でも多くの人に聴いて欲しいし知って欲しいし。だからもっと歌って欲しいってずっと思ってたんだよね。」

頬に伝ってきた涙を、華奢な手のひらで拭いながら続ける。
「もちろん声を商売にして身を削る大変さは私もよくわかるけれども。だから、そんな風に感じてくれただけでライヴうんぬんとは別のところで、このツアーにはすごく価値があったと思うわけ。浅田クン本人にもファンの人たちにも、私たちにも音楽シーンにもさ。いや〜、ホントよかった。」

同感だった。今回のミニツアーをそそのかしたのは、まさにそこがポイントだったからだ。
たった一人で音楽を第一線で続けていくことへの重圧。いくら業界関係者や仲間やファンから評価され応援されてはいても、基準もなく誰からも守られることのない孤独。
自分自身の音楽や才能への疑問や不安。そして音楽を愛し真摯に向き合うからこそ生まれる、葛藤やジレンマ。

それら沢山のものが蓄積されてきたことを想像できるからこそ、弾き語りワンマンをやって自分ともリスナーとも向き合いたいと語った浅田信一の決意というか、ここらで一回ケリをつけようという意思表示ともいえる発言に、ライヴPA以外にも何か協力できることはないだろうか?と思ったのである。

もちろん、東京から遠い場所で信ちゃんの歌を聴きたい!と待ってくれている人たちにも届けに行ったらどう?おれだったら聴きたいけどなぁ、というのが単純な理由ではあるが、たった1本のライヴ(下北440)を分岐点にするのは酷だとも思った。

だって向き合うってことは、そういうことであろう。いま自分がどこにいて、これからどこに向かうのか。それを確認するためではないのか。
だとするなら何度かの機会はあったほうがいいし、うまいこと弾みがつけば未来へとつながっていく。

信ちゃんの音楽と全国の温かいファンの方々を考えれば杞憂だとわかってはいたが、僕は僕なりにツアーの大成功にホッと胸を撫で下ろしたのも事実なのだ。
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そんな瞑想に、よく通る声で貴子さんが割って入る。
「でもさ〜、無常の世界って、ほんといい曲だよねぇ〜」
僕らはアルコールをグイッと飲み干し、大きくうなずいた。


リハーサルは仙台・札幌・大阪への遠征時とは、ちょっとだけ違う雰囲気だった。やはり集客も多いしファイナルだしホームグラウンドだし、緊張感が増す。
信ちゃんは耳がいいのでちょっとした音の変化に敏感で、だからこそいろいろ気にもなるのだろう。こちらもそのほうがやり甲斐がある。
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少しでも歌と演奏に集中できるよう、そして客席に高音質であの声とギターの音が響くようエフェクトも含めて調整に調整を重ねた。

音質の捉え方は好みも含めて人それぞれあるだろうが、僕が考える高音質はその声なりギターなりが一番カッコよく聞こえて、耳から入った音が脳や心臓をうっとりさせ足の先から抜けていくような、そんな音である。
要は音(周波数)そのものというより、音色といったほうがニュアンスとしては近いだろうか。かなり抽象的で申し訳ない(笑)。
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ライヴ音源も押さえておこうということでPro Tools(デジタルレコーディングシステム)を持ち込んでいたので、ギター用のマイクも立てPA卓の隣のPCもいろいろと調整する。

照明はいつものようにカイチョー(岡野さん)。アコギ1本なのでライトというよりは何か雰囲気のある明かりにしたいということで、信ちゃんが持ち込んだ何本かのろうそくをステージに配置し灯す。すごくいい雰囲気で開場時間を迎えた。
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この日は僕の主催ではなかったので、本来ならリハが終われば本番までは楽屋で一服したり軽く何か食べたりするのだが、何人かからコラボセレクトCDを東京でも欲しいと聞いたのと、一緒に「無常の世界EP」も売って下さいよ!と頼まれたので、PAブースの隣で急遽物販の怪しいおじさんとして売り子をする。なかなか面白かった。

フロアはあっという間に満杯になり、楽屋へ行こうにも人垣をかき分けるのに些か困難な状況になった。PAブース横の関係者スペースには知った顔もたくさん詰めかけている。こっちまでドキドキしてくる。
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楽屋から準備OKの内線電話がきてライヴは始まった。
拍手の中、信ちゃんが登場。軽く手を振りステージ中央の椅子に腰掛ける。マーチンを抱えシールドを差し込み、チューニングしてからオープニング曲のイントロを弾き始める。

♪LOSER〜♪月曜日の雨〜♪深夜バス
「久しぶりにプチツアーみたいに他のところに行って、自分の曲に新たな発見があったり、各地同窓会的な雰囲気もあり、ファンの皆さんに貴重な時間を与えてもらって。来てくれた人には悪いけど初日の440で厄が落ちたみたいで、充実したツアーになりました。ブルーノートのような気分で、それならそこに出ろって話だけど(笑)、飲みながらゆるい感じで最後までお付き合い下さい。」
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♪夏のうた〜♪風車〜♪EMPTY GLASS
間奏ではボブ・ディランのように、ルーズだけれど味のあるブルースハープを吹きながら歌う。
前半はMCも言葉少なで、客席も静かに熱視線を送る。ピンと張りつめた絹の糸を紡いでいくようでもあった。

「震災以前と以降では、環境とか考え方とか変わった人もたくさんいてさ。震災で感じたことを僕なりに歌にしようと思ったけど、ストレートなものは作ってもなんかしっくりこなくてやめたり。行き着いたのは、くよくよしても人間いつか死ぬし、だからこそ置かれた立場でやってくことが必要だと思って出来たのが、無常の世界という曲です。」
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♪無常の世界〜♪昨日の少年
最新曲とSMILEデビューのきっかけとなった曲の、驚くほど違和感がなくそれでいて鮮やかなコントラストは、このツアーのひとつのハイライトであったのではないだろうか。

まだ歌詞もなくアレンジもされていない状態の「無常の世界」をリハスタで聴いたとき、これは信ちゃんのあらたな代表曲になるメロディーだと直感したし、どんな想いで作ったのかは知らなかったが、歌詞が付いてから尚更その思いは強くなった。

無常という言葉は震災後の新聞で目にしたと本人がMCで言ったが、そもそも中世の日本人の無常観とは移ろいゆくものへの美意識で、だからこそ常なき様のサクラの花(Cherry Blossom)が愛されるという文献ともリンクし、とても彼らしい世界観なのだと納得もする。


「すんごい俺様ペースでやってるけど、後ろのほうとかダイジョブ?屈伸とか...できそうもないか(笑)。あと半分あるんでお付き合い下さいね。何やろうかな。ま、決まってるんだけどね(笑)。マティー君、氷持ってきてぇ。氷!」

「え〜、こいつがマーチンのD-28です。メンバー紹介(笑)。で、この娘がギブソンのJ-200ですぅ〜。サンキュサンキュ。こちらマティー君です。で、この子がiPad miniです。こんな感じに鳴ります〜。あれモニターが小さくなった?音量少し上げてもらおうかな。ツマミをいじってるのがヒロさんでぇ〜す。あはは(笑)」

iPad miniから流れてくる優しいリズムに合わせて、BreadのIfを彷彿させる美しい旋律の澄んだアコギのイントロで、休憩後の後半がスタートする。

♪虹橋〜♪And I Love You〜♪冬を歩く
拍手も歓声もだんだんと大きくなってきて、会場全体がなにかうねりのような渦の中へどんどん呑み込まれていく感覚。
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♪宵待ち〜♪I FOUND OUT
信ちゃんの声は少し枯れてはきたが、声量はキープしたままイイ感じだ。客席が満杯でフロアの音を確認しに出て行けないのがもどかしいが、自分の経験と耳を信じて音を出す。

♪Answer〜♪明日の行方
「本当にきょう集まってくれてありがとうございました。今回のツアーをやって、歌う楽しさみたいなのを思い出したというか。みんなの前で歌ってんだから今さらそんなこと言うなよ!という話かもしんないけど。

でもやっぱ、なんか楽しめない時もあるじゃないですか。いくら好きなことでも。これだけ長くやってると、良いときも悪いときもあるし、歌うってことが自分の中でハードルというかプレッシャーになることもあるんですよ。

だから今回ギターだけで回ってみて、もしここで心が折れて、もう歌わなくてもいいかと思ったら歌わないでいいか、みたいな感じでさ。
それで初日が大雪でしょ。もう神様に、お前は歌わなくてもいいよと言われてるみたいで。来てくれた皆さんには申し訳なかったんですけど、その日は自分の中でボロボロだったんですよ実は。

でもだから逆にこれで終われないっていうか。そこを乗り越えなきゃなみたいな。それで全国回ってみたら、皆さんの温かい声援と視線と裏方さんにも囲まれて。なんて幸せな男なんだと実感しつつ、歌うことがね、楽しかったんですよ。ははは。

なので、ちょっと味をしめたので来年はMARTIN, GIBSON & MEⅡみたいなね。」

「なんか打上げのシメみたいになっちゃったけど(笑)、本当に幸せな時間を過ごさせてもらったので、その僕が感じた幸せみたいなものが皆さんに伝染して。明日からもね、皆さんの生活に幸福が訪れるように、心から祈ってます。

そして一刻も早く暖かい春が、皆さんの元に訪れますように。そんな願いを込めて、最後に、春のうた。」

♪春のうた
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アンコール
「アンコールありがとう。じゃ、もう何曲かやらせてもらおうかなぁ〜」
♪IN EVERY PLACE〜♪Cherry Blossoms

ダブルアンコール
♪風をあつめて(ワンコーラス)〜♪ジグソーパズル〜♪ローファー
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こうしてファイナルは幕を閉じた。
フロアは照明の反射とオーディエンスの満足気な表情で、ほんのり春色に染まっている。

そしてこの旅を誰よりも近いところで見守ってきたステージ上のMARTIN D-28とGIBSON J-200は、旅の終焉をどこか寂しがっているようにも映るが、それ以上に誇らしげでもあった。
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弾き語りというスタイルはそのシンプルさゆえ誤摩化しがきかないというか、どこか丸裸にされる感じもあるのだろうが、だからこその魅力もダイレクトに伝わる。

歌声と歌詞とメロディーだけで様々な色や風景やドラマ、そして実際には鳴っていない音までをも鮮やかに連想させてくれる浅田信一の音楽は、やはりどこを切り取っても一級品でロマンがあるなぁと感じずにはいられなかった。ロマンは大切だ。

関係者やゲストも交じっての打上げは、それは達成感もあり楽しく飲んだが、そういえば信ちゃんとは席も離れあまり話はしなかった。
男同士だしお互いシャイだし、まぁいいか。でも締めの挨拶を、酔った僕に急に振るのは反則だ(笑)。

そして先述した二次会の店を出て(正確には閉店なのに粘り追い出されたのだが)、ホテルに戻ろうとする僕に貴子さんが言ったのだ。「ありがとう!」
僕も「いや、こちらこそありがとう!」と返す。同時にその場にいた小島クンとアイタちゃんにも。

さらにこのツアーに参加してくれた皆さんや、応援含め何らかの形で関わっていただいた方々にも同じように、ありがとう!と心の中で言った。もちろん信ちゃんにも。特別に彼の家の方角を向いてだ(笑)。
そしてハッピーと同じように、サンキューも伝染するのだと笑みがこぼれる。


ホテルまで、のんびり歩いて帰った。頭の中では「無常の世界」が流れている。

この星のすべてがまやかしでも、生まれては消えてゆく、僕たちの魂。

ギターを抱いた歌うたいは、探している答えの破片くらいは、このツアーで見つけたのだろうか。

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Thank you, Everyone.
読んでくれてありがとう。


P.S.
明日はあの3.11から2年。
こうして笑えることに感謝しようと思う。
世の中が穏やかにHappyになりますように。
by higehiro415 | 2013-03-10 03:42 | 音楽

MARTIN,GIBSON&ME in大阪レポ

2.16 sat.
「きょう何時着ですか?」
「東京駅に10時半ころ。昼頃出発?」
「大丈夫っすか?」
「着いたらお茶して待ってるからいいよ。」
「ランチどうします?」
「途中のどこかサービスエリア?」
「近くでインドカレー食べてから行きましょうか。」
「賛成!」
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雪の仙台駅から新幹線で東京へと向かう。福島を過ぎると空はだんだんと明るくなってきて、運転は大丈夫そうだなと安心する。
東京駅に着いた頃には青空がのぞいていて、スーツケースと預かっていたGIBSONを持って待ち合わせの三軒茶屋まで移動し、出発までの時間つぶしに喫茶店へ入った。

ギターを抱えてのバスや電車移動は結構大変だけれど、これも今日で最後だなぁ。旅も終わりかぁ…と、まだ大阪公演を残しているにも関わらず一抹の寂しさを覚える。
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コーヒーを注文しすすっていると、またメッセージが届く。出発にはもう少し時間があった。
「今どこですか?三茶に着いたら迎えに行きます。」
「さっき着いてコロラドでコーヒー飲んでるよ。」
「もう準備出来たので大丈夫です。」
「お、じゃ10分後に。」
慌ててコーヒーを飲み干し店の外に出る。SMILE15周年ツアーの時も、ここで合流し西へと向かったことを思い出した。

迎えに来てくれた浅田信一氏の車に乗り込み、まずは近所のインドカレー屋へ。インド人の店員との会話から、常連なのだとわかる。
「7時間みてれば着くよね?」
「ヒロさん、大阪久しぶり?」
「うん。2年半振りかなぁ。」
「新しい高速道路できたから、前より早いっすよ。」
「そっか。高橋君のライヴで行ってるんだもんね。」
「っていうか1週間って早いっすねぇ。」
「ん?札幌からまだ3日だよ(笑)」
「そっか。あれ先週末じゃなかったんだ(笑)」
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スパイシーで美味しいインドカレーを食べたあと、大阪に向けて出発。
途中で運転を交代しながらの首都高〜新東名〜伊勢湾岸〜新名神のルートは、晴れていたし道路も走りやすく空いていたので快調に飛ばす。
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車内では今回のために2人で選曲した今宵CDR、この前の札幌で入手したバブルガムポップのオムニバス、60~70年代のマージービート系のコンピなどを聴きながら、「これ、いいね。誰?」とか「このアレンジ最高だね」とか、ほとんど音楽の話だけで約6時間のドライヴがあっという間であった。
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ホテルに到着し森山公一氏(オセロケッツ、The Ma’am)にメールを入れる。
「順調に着いちゃったんだけど、どうする?」
「早かったっすね。今たこ焼きパーティーという大阪的行事wに参加中ですので、ほどなく向かいま〜す。」
今回の大阪公演は森山と現地の音楽ライターO君に、会場選びなどいろいろ協力してもらっていて、前日に「前乗りですよね?2日間がっちり空けて待ってますぅ〜!」と森山から電話がきていたので、それも楽しみにしていた。

森山とプライベートで会うのは昨年の3月に彼が東京から大阪に引っ越すという時に飲んだ以来なのでおよそ1年ぶりだが、9月のイベントにも出てもらったし、たまに連絡を取り合っているしTwitterなどで状況も見ていたので久しぶりな感じはない。
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かすうどんでも喰おうかと新町まで歩き店に入り、信ちゃんと2人で先に乾杯して森山を待つ。
30分ほどで森山が合流し、お互いの近況報告などしながら楽しく飲む。

気兼ねない面子でしかもミュージシャン同士(ボーカリスト・プロデューサー同士でもある)だからこそ話し合える悩みや葛藤、その部分について僕は口を挟めないが、身近にいる裏方だからこそ客観的に言えることもある。

2人の話を聞きながら、自分の役割について考える。
PA(音作り)にしても今回のような企画制作にしても、僕は演者とファン両方の気持ちをきちんと理解し、橋渡しのような存在でいなければと強く思う。
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信ちゃんと2人で選曲したCDR(因みにジャケットはビートルズのAbbey Roadと同じ構図だが、これはMelody goes onというタイトルを付けたので、メロディーがここで生まれ続いているという意味でピッタリだと思った)にしてもチケットにしても、自分がファンだったら欲しいよなぁ…と作ったものだし、音作りに関しても自分が思う音を頑なに出すというよりは、その演者に合っていてなおかつファンの人たちが聴きたい部分を大切にしたい。
僕のやっている仕事など、プレイヤーとオーディエンス、そのどちらもいないと成り立たないのだから、バランス感覚というものを見失わないように気をつけるべきなのだ。

脱線してしまったが、とにかく音楽に関わる仲間として友人としていろいろな話をした。
H「せっかくの大阪だし森山の歌声も聴きたかったなぁ。」
A「あっ!森山、明日さオープニングアクトで歌ってよ!」
M「いやいや。有り難いけど信ちゃんファンに睨まれまっせ〜。待ってたのに変なおっさん出てきたら。」
A「いいじゃん。おれが聴きたい!2〜3曲やってよ。」
H「いいねいいね!遠征最終日にスペシャル感が増すなぁ〜。」
M「ほんまですかぁ?いや〜またの機会にしましょうよ。」
A「なんで。やってよ。ミリオンボーイ!」
M「出ろって言って曲まで指定ですか(笑)」
H「はい、じゃ決定ね!」
M「この先輩2人には逆らえんなぁ。わかりましたよ。1曲だけやります。」
A「んじゃTwitterで告知しとくから(笑)」
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こうして森山のオープニングアクトは一瞬で決まり、そろそろいい時間だねと会計を済ませホテル方面へと歩く。
森山はまだ飲み足らないようで、もう1軒どうですか?と誘うが「明日あるし今日は戻るかな。2軒めはオープニングアクトのギャラってことでヒロさん人質で(笑)」と信ちゃんは帰り、残った僕らはタコタコキングで飲んだ。

そこに仕事終わりのO君も合流し、地方都市での音楽業界についてなど熱い話をする。僕は仙台を盛り上げようと試行錯誤しているが、O君も地元である大阪を何とかしたいと頑張っているので、何かと共通項があり盛り上がる。
お互い地元で頑張って、年に1度くらいは一緒に何かやれるといいな。
夜も深くなりお開きになった。あの2人はどこかもう1軒行ったに違いない。


2.17 sun.
昼前にロビーに集合し、ランチに出掛ける。
古市コータローに教えてもらったという定食屋に、パンチのある揚げ物を覚悟して食べに行ったのだが、日曜で休みらしく仕方なく近場の手打ちうどん屋に入る。

昨夜はかすうどんが食べたいとうどん屋に飲みに行ったにも関わらず、つまみだけいろいろ頼んで結局うどんを食べずに帰ってしまったので、ちょうどいい。
店の雰囲気からして老舗っぽい感じで、うどんもなかなか美味しかった。

そのあと古い喫茶店を見つけ珈琲をすすり、中古レコード屋にでも行こうかと話したが、この日は入り時間が少し早いので断念し一旦ホテルへ戻る。

会場となるJANUS diningはホテルからすぐだったので、時間になり2人でギターを抱え歩いて行く。
僕らは初めての場所(信ちゃんは上のライヴハウスには高橋君と来たらしい)だったが、思った以上に広くて快適な空間だ。

まずステージの位置を決める。どうにでもお好きなようにと岸本店長に言われるが、スピーカーが吊られている位置と暖炉の前というシチュエーションを考慮し、横長に使うことにした。

ほどなく森山も現れる。「おはようございますぅ。ぼく歌うとき信ちゃんのギター貸して下さい。」
やっぱり自分の持ってこなかったんだねと僕が言うと「1曲だけで持ってきたら、なんか気合い入ってるようでカッコ悪いじゃないすか(笑)。ま、気合い入れて歌いますけど。」
彼のこういうロックフィーリングは好きだし、すごく理解できる。

PA機材をセットしサウンドチェック。
天井も高くてスピーカーが吊ってあるので、音が上から降ってくるようだ。シャワーのようだなと思い、この日の音をイメージする。スピーカーと耳の距離があるので、ぼんやりして歌詞が聞きづらくならないように、芯はあるけど耳に痛くない音を心掛ける。
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木が使われているからか会場自体の音の響きもよく、リハーサルは順調だ。信ちゃんもやりやすいと言うし声もバッチリだ。
PAがステージ横にあるのだけが気を遣う。音は聴こえるのだが、客席から丸見えなのだ。曲ごとにいろいろ調整するし、ノッちゃうし(笑)けっこう動くほうなので、見られると緊張するし出来れば目立たないところがいいが仕方ない。
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信ちゃんに続き森山も軽くサウンドチェック。信ちゃんは嬉しそうに見つめている。
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この日はお店のスタッフに加え、ビザメン大阪公演を画策したレディース2人にもヘルプをお願いしていたので、準備がすこぶる早くて助かった。ありがとう!

開場時間が近付くにつれ、入口付近にはお客さんがだんだんと集まって来て、気分も盛り上がってくる。
定時にドアを開ける。ダイニングバーということでフードも用意してもらった関係で、開場から開演までは1時間をとった。

受付を終え席を確保しカウンターに並ぶ誰もが、待ち望んでいた日がようやく来た!というような興奮気味の表情に見える。
信ちゃんは楽屋で、森山や挨拶しに来たゲスト達とリラックスムードだ。

僕は旅の終わりをこの目に焼き付けようと、楽屋とフロアを行ったり来たりしながら、ライヴ前の現場の雰囲気を楽しむ。
チケット予約のメールやり取りを直接しているので、顔はわからないが「あの人はちゃんと来てるかなぁ〜?」とか急遽来られなくなった人のこととか、いろいろ感慨深いものなのだ。

そして仙台・札幌と、精神的にもパフォーマンス的にも安定した素晴らしいライヴを見せてくれた信ちゃんが、今夜も楽しくいい気分で歌えるといいなと思っていた。
開演時刻になり簡単な前説のあと、森山を呼び込む。
いつもと変わらぬ独特のリラックスしたムードのMCのあと、約束のミリオンボーイ(オセロケッツ)を熱唱する。
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その最高のムードメイカーぶりもさることながら、やはり曲も歌声も抜群で、本当に惚れ惚れしてしまう。この男もやはり歌ってナンボのミュージシャンである。

歌い終わってそのまま信ちゃんを呼び込む最高のオープニング。
ハイタッチで入れ替わる。予定調和ではない互いのリスペクトがはっきりと交錯するそのハイタッチは、とても美しい光景だった。

そしていよいよ浅田信一のライヴの始まりだ。この日もお客さんの顔が見えるくらいの照明でと本人から注文があり、客席は少し明るくしていた。
今日は僕のところからもお客さんの顔がほぼ見える。食い入るようにステージを見つめるみんなの目は、ほんと♥型に見えた(笑)。
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客席の呼吸を感じながら、そしてそれに合わせるかのように丁寧に歌い時には話しかけ、ライヴは進行していく。声も含めてすこぶる調子がよさそうだ。

客席の様子は前半どちらかといえば、青白い月のような心地いい静寂と緊張感があったものの、暖炉の薪にだんだんと火が燃え移ってゆくかのように徐々に赤く染まっていく。
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短めの休憩となり客席後方で見ていた森山の所に行き、音どう?と確認する。
人が入って少し吸われたような気もするからもっと出してもいい、というので後半はもう少しレベルを上げてみることにする。

ライターのO君に「いや、マジでいいっすねぇ。ところでIn Every Placeやる?」と声を掛けられ「たぶんね。好きなの?」「そうなんですよ。あれ聞いたら涙だなぁ〜」などと会話する。
信ちゃんもトイレで一緒になったお客さんに話しかけたり、ご機嫌の様子だ。

後半が始まり手拍子がおき、ようやく大阪らしいエネルギッシュな空気が充満していく。
歌もギターもそれに呼応し、リハの時にイメージした通り、音のシャワーとなって会場中に降り注ぐ。僕も胸が踊りついついリズムを取ってしまう。
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「懐かしい顔も客席に見えて嬉しいし、こんなに待ってくれている人がいることに感謝です。来てよかった。来年も来るので、また来てね」会場からは「まだ2月なのに(笑)」という声も飛ぶ。
大きな声援のなかのアンコールまで、本当にしびれるライヴであった。

大阪に信ちゃんを連れてきてくれてありがとうございます!と帰り際何人かに声を掛けられたが、それは関西で待っている人たちが沢山いると知ったから思い立ったことだし、本人が行くと決断してくれたことがすべてなのである。僕は指でちょいと背中を押したに過ぎない。

打上げは友人や関係者10名ほど交え、そのままJANUS diningで。
関西の人たちとはあまり飲む機会も多くないので、なんかいつもと違う新鮮さがある。

今日のライヴの話やら森山の今後の話やら、政治の話やらLINE POPの話やら、僕が信ちゃんをいじったりいじられたり。席を移動しながら雑多な感じで盛り上がる。これも大阪らしいではないか。

そろそろ店もおしまいということで、最後に信ちゃんから一言もらって締めようとなった。
赤ら顔で笑っていた信ちゃんが急に真面目な表情になり話し始める。今回のツアーのこと、想い、そして感謝の気持ちと今後の決意など。

「明日からは僕も皆さんもそれぞれ別の場所で頑張って、大変なこともあるだろうけれど、皆さんが各地で頑張っているからこそ僕も励みになるわけで。またこうして楽しく集まれたら嬉しいです。今日はありがとうございました!」

そうだよな。旅は今日で終わるけれど、また次を目標に頑張ればいいのだと納得する。
人生笑っていられれば幸せだろうけど、決して楽しいことばかりではない。苦しいことや悲しいことも沢山あって、でもだからこそ人の痛みが理解できたり優しくなれたりもするのだし、笑うことの大切さもわかる。
始まりには終わりがあり、終わったらまた始まればいい。次に笑って会えることをイメージして、前進するのみだ。

あとは三々五々解散となり、信ちゃんはホテルへ、森山とO君と僕ら数人はまさかの連日タコタコキングへINしたのである。
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2.18 mon.
昨日のリベンジを果たすべく定食屋とん平へ。
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営業前だったが入れてもらいミンチカツを食べたあと、ほどよく心地いい疲れと共に東京へ戻る。
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東京に着いたらとりあえずツアーの中打上げでもしようとなり、コータローも呼ぼうよと提案した。
「でもこのまま帰ってからブクロまで出るのキツくないすか?」
「いや三茶にしようよ。おれも三茶に泊まるし。」
「コータローさん三茶まで来るかなぁ?飲みに来たの見たことないよ。」
「ま、とりあえず連絡してみるよ。」

確かに普通であれば来ないだろうと思ったが、今日はコータローも気に掛けていた信ちゃんのツアー帰りだし、コレクターズの始まったばかりのツアー話もあるだろう。
なんとなくだが来てくれるのではないかと予感がした。彼にもいろいろこの旅の出来事を聞いて欲しかったし、今後のことで相談したいこともあった。

僕がメールした時点でそれを察してくれたのか、気持ちよく駆け付けてくれた。
仕事終わったら待ってるよと同じく呼び出した達ちゃんも合流し、ホッピーなど飲みながら和気あいあいと時が過ぎる。なんかただの友達飲み会のようでもある。
それがひどく心地よくて、信ちゃんへの労いとしてはなかなか良かったなと思う。
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旅を思い出しながら同時に目の前の楽しい光景を見ながら、生きてくことは選択の連続だと痛感する。
例えば今日飲もう!と選択しこのメンバー全員が集まることを選択したから、いまこの瞬間があるのだ。当たり前のことだが、ちょっとした選択の違いで日々の意味や喜びはずいぶんと違うものになるよなぁ〜などと考える。

そして「秋になんか面白いことやろうよ!」と、またそそのかし作戦を選択する僕なのであった。
楽しい目標を立てて、とりあえず秋まで頑張るのだ(笑)。悪いことじゃないよね。

さて明日(もう今日だ)のファイナルが楽しみだ。
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by higehiro415 | 2013-03-02 02:57 | 音楽