佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
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お陰さまで予約ソールドアウトとなりました!

相変わらず慌ただしい日々を送る古市コータローだが、年内にもう1本ソロをやりたいなという本人の希望により、下記ソロ公演が決定したのでお知らせします。

7月の仙台イベント、8月の盛岡、そして先日の東京キネマ倶楽部へのゲスト出演とこの夏3本のソロライヴを見届けたが、ボーカルが著しくパワーアップしさらなる進化を遂げていた。
比類なきロッキンシンガーソングライターによる、年内ラストとなるブルースを是非!

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古市コータロー acoustic solo live
12月の野良猫のブルース

2016年12月18日(日)
Zher the ZOO YOYOGI
open 17:00 / start 17:30
¥4,500 + 1D(当日¥5,000+1D)
*完売の場合は当日券の販売はありません。

チケット予約
9.10(土)am 10:00〜 下記メールにて受付開始
groovecouncil@gmail.com
KTR12係まで

お名前・ご希望枚数(お一人様2枚まで)・郵便番号・住所・
電話番号を必ず明記の上、メールにてお申し込み下さい。

定員になり次第、受付を終了させていただきます。
お申し込み多数の場合は抽選となります。

チケットご購入の詳細は、受付後3日以内にメールにてお知らせしますので、
groovecouncil@gmail.com からのメールを受信できますようご確認下さい。



by higehiro415 | 2016-09-03 09:03 | 告知 | Comments(0)
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Thank you. Sold Out !

先日の受付開始5分で予想をはるかに上回る申し込み数となった古市コータローBDライヴは、なんと当選倍率2倍という争奪戦となりました。
会場キャパの問題で、全員参加となるとオールスタンディングしかもギュウギュウ詰めとなり、アコースティックライヴを観る環境としては相当に厳しいものになってしまいます。それではせっかく来ていただいても楽しんでいただけないのではないかと判断し、本当に申し訳ないと思いながら抽選にさせていただいたことを、まずお詫びします。
多くの皆様の気をもませてしまい、本当にすみませんでした。

ちょうど予約開始日はコータローソロバンドツアー仙台公演の日。打ち上げの席でコータローと策を練りました。
彼も僕も気持ちは同じ。できることなら一人残らず皆さんに来ていただきたいという思いがあります。
会場の予定も店長マティーくんが心意気で融通を利かせてくれました。
そんな訳で、急遽ではありますが追加公演が決定しましたのでお知らせします。

ただ、まずは抽選で外れた方を優先にご案内しているので、一般発売の枚数は30枚のみです。
こちらも抽選となってしまいますが、何卒ご了承ください。

**********
古市コータロー 52nd Birthday Acoustic Live
シケモクに火をつけた瞬間のバラッド〜追加公演

2016年5月31日(火)
Zher the ZOO YOYOGI
19:00 open / 19:30 start
前売¥4,000+1D
限定30枚(スタンディング)
お申し込み多数の場合は抽選となります。

チケットご予約方法は下記をよくお読みになりメールにてお申し込み下さい。
3/27(日) AM 10:00〜(定員に達し次第、受付は終了させていただきます)
件名:古市BD追加係
枚数:お一人さま1枚のみ
・氏名
・郵便番号
・住所
・電話番号
・メールアドレス(お申し込みと違う場合のみ)

メール受信確認後3日以内にご連絡差し上げます。


by higehiro415 | 2016-03-24 21:46 | 告知 | Comments(0)

今回の仙台はスペシャルだからさ、これまでとちょっと違う感じを出したいんだよね。と言っていた本人の希望に添って、珍しくジャズナンバー(Vince AndrewsLove oh love)をオープニングSEにした。軽快なスウィングビートにのって主役が片手を軽く上げながらステージへと登場すると、フロアから大きな拍手が起きる。


「ありがとう。きょう弾き語りは何回めかなんですけど、ちょっと今なかなか味わったことのない光景で()。高いのかな、ステージが。みんな立ちたい?大丈夫?(客席から大丈夫!の声)オーライ!OK」僕はタイミングを見計らって1曲目「のらりくらり」のリズムトラックをCut Inさせる。

Whisky Man Againと題した古市コータロー弾き語りライヴin仙台は、こんなオープニングで始まった。

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3曲が終わるとこう切り出す。

「今日は、去年の12月にツアーをやりまして、それのなんていうの?あれ、なんつうんだこういうの。何?(客席からリベンジ!)そう、リベンジだよ()。仙台リベンジということで来ました。なんか台風の情報とかあって、えーまたぁ!?みたいな、やばいかなと思ったんだけど、今日は無事に来れてまずはよかったと思います。去年来てくださった方もいると思うんですけど、札幌の次が仙台ということで、札幌はギンギンに晴れてたんですけど飛行機がないということで全然こっち来れなくて、やっとの思いで来たんだけど、でもそんときも我々の乗った飛行機しか飛ばなかったというね、ほんと危ない。あとでもうゾッとしたけどね。そん時はゾッとする暇もなかったんだけど。まぁそれでライヴは出来て、そういう状況のライヴだからなんていうのかな、皆さん気持ちがひとつになり(静寂の客席)なってないのかよ!()もうほんとに心に残るライヴになったんですけどね。でもやっぱりこうノンストレスで来てさ、やぁどうもどうもって感じでやりたいなって思ったのが、今日のライヴなんですね。こういうトリッキーなタイミングで仙台来ましたが、まぁひとつヨロシクということで、今日は最後までお付き合いください。」

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多くの方から中止や延期ではないのになんて律儀なという言葉もいただいたが、帰りの都合で途中退席した方もいたし、何より皆さんを長時間待たせたということ、そしてきちんとリハ(気持ちも含めた)など準備が出来ないままライヴを見せてしまったという不本意さが僕らに残っていたのである。

アクシデントによる電話中継や公開サウンドチェックというレアな状況、ライヴ自体や音も通常とさほど変わらないクオリティーではあったのだろうが、そこはやはりリベンジしたいとあの時から考えていたのだ。この企画を持ちかけたとき二つ返事で「うん、やろうよ!」と快諾してくれたコータローだが、レコーディングなど厳しいスケジュールの合間を縫って仙台に来てくれて、その優しさと男気がこの日の会場には充満していたように思う。

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セットリストは上記写真(私用PAセトリ資料)の通りだが、昨年のツアーと今年5月のBDライヴのものを混ぜ合わせ、さらに新しいものを盛り込むという美味しいとこ取りのメニューだ。1曲目にリズム同期を持ってくるのも実験とはいえ斬新だったのではないか。

オリジナル曲の弾き語りクオリティーは5月よりさらに饒舌なニュアンスが増し、表現の幅が広がっている。ギターに関しての腕前は説明不要だろうが、単なるギタープレイではない部分の弾き語り特有のダイナミクスというか、自分の歌に対してのアコギの位置関係がより明確になっていたと思う。これは弾き語りというスタイルを完全に手の内に入れ進化させたものだろう。歌は完全にボーカリストとしての声と化している。回数が少ない上に半年ほどでここまでなるだろうかと、コータローの鍛錬とミュージシャンとしての勘の良さ(感覚の鋭さ)に恐れ入る。

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MCでは、早朝ラジオ体操に通い昼はアイスを食べるという、子供のような夏を満喫している様子を話してくれる。また、シャンプーを付けずに髪を洗っていたり、紅生姜が食べたくて牛丼屋に行ったのに紅生姜を乗せるのを忘れたりと、最近のボケっぷりっも告白。暑いからかなと言っていたが、歳のせいもあると思うよ、コータロー。だって俺も最近そんなのが多いもの()

暑い繋がりで急に思い出したのは中華屋の外国人。片言の日本語で「アヅイから〜」とラーメンを運んでくるとう思い出話も聞かせてくれた。

恒例のカヴァーコーナーではボツになった曲と共に若大将の「海・その愛」をワンコーラス。珍しく本牧ブルースの歌詞をど忘れしやり直す場面もあったが、あれはあれでお茶目な感じが出ていて悪くなかった。


まぁそんなリラックスムードで、2時間のライヴはあっという間に終了してしまった。

本人も言っていたが、本当にこのライヴをやってよかったと僕もそう感じている。音のほうでリベンジできたこともそうだが、地元である仙台・東北に何か新風や面白いことを提示することで、まわりの人が楽しんでくれてそれが故郷と音楽への恩返しになるとといいなぁと、ここ4年やってきているのだ。


仙台ではなかなか集客が厳しく、もちろんそれは自分の力不足なのだが、集客がないと経費の問題で希望の会場が借りられなかったり東京や大阪から演者を呼べなかったりという制約が付きまとい、最近は仙台でのイベントをうまく仕掛けられないでいた自分なのでなおさらである。

きっと地方に住む音楽好きの共通な感情として、東京はいいなぁ〜という思いがあるのではないだろうか。音楽カルチャーならほぼ何でも揃っていることは、とても羨ましいことだ。それでもコンプレックスをバネに地元(地方)を盛り上げようと頑張っている人が沢山いるし、僕もその中の一人として何か貢献出来ないだろうかという思いは強い。

話が脱線してしまったが、だからこそ「マジな話なんだけどDNAなのかなんなのか、東北にくるとホッとします。」というコータローのMCには、僕も含め勇気付けられた東北人がたくさんいたのではないかと察するのだ。

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そして開演直前にステージに上がりギターのチューニングをしてくれたのは、Going

Under Groundの松本素生くん。だいぶ前からコータローさんの弾き語り見たいから本人には内緒で仙台に行こうかなぁ〜と言ってくれていたのだが、前日イベント出演した会津から高速バスで本当に来てくれた。昼過ぎに仙台に着くというので迎えに行き一番町のカフェモーツアルトで珈琲を飲みながら談笑したのだが、これもまた素敵な時間だった。彼の熱い音楽愛や温かい人間性に触れることができた。


素生くんが頃突如会場に現れたときのコータローは本当に驚いた様子だったが、とても嬉しそうでもあった。セッションでもという会話になるが、急にやるには音合わせの時間がないということで、スーパーローディーとしてチューニングに出ることになった。せっかく来たのだから声も聞きたいと思う反面、なんとも贅沢でマニアックなサプライズだなとも思いニヤリとしてしまう。

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この日はお手伝いに友人らも数人来てくれた。関西からデザイナーのC子、フリーパーソナリティーの富岡浩美ちゃん、チェリストのMMさん、盛岡のMOD345号くん、いつもありがとう。現場の雰囲気を体験させたいと教え子のK平も連れて行ったのだが、リハ中にそれを知ったコータローが「ステージに上がっておれのギター弾いてみろよ!」というナイスな一場面もあった。緊張しながらアコギを引くK平は「プロのギターと音響ってこんなにいい音するんですね」と感激している。いい経験になっただろう。それと好意的に会場を提供してくれいろいろ協力してくれたClub Junk Box店長の板橋くん、そしてスタッフのみんなもいつもありがとう。

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打ち上げは行きつけの店で。別会場でライヴだったクハラカズユキ、うつみようこも乱入し店の半分を占拠し盛り上がる。途中どうしても食べたいという素生くんのために僕とコータローと3人で中抜けしていつものラーメン屋へ。どう?美味いだろ!と自分の店のように言うコータロー。素生くんんも、これは間違いないっすね、とスープまで飲み干す。このラーメン屋の親方は職人気質で愛想が良いほうではないのだが、よく連れていくコータロー(コレクターズ)を応援してくれている。先日コータローから、オヤジにプレゼントしてくれと頼まれTシャツとソロCDを渡したのだが、この前はなんか豪華な頂き物しちゃってスンマセン!と満面の笑み、そんな親方もレアだった。

打ち上げの店に戻り店内に流れるアラバキ2015の映像を見ながら、ワイワイと焼酎やワインのボトルを次々と空にしたのだった。


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昨年の初弾き語りツアー2本目でのアクシデント、「あれで本当に強くなったし、おれの人生に用意されていたことなんだね。」と語ったコータローだが、マイナスをお釣りが来る程プラスに転換していくエネルギーとパッションは、やはり凄いと思うし見習わなければと心に念じる。


そういえばあの日はチョーキーも見に来てくれてライヴ後この店で飲んだなぁ。楽しかったが、精神的肉体的疲労と安堵感で僕らは放心状態だったことを思い出す。豪快に飲みまくる今宵は、そういった意味でもまさしくリベンジ遂行となったのであった。

来てくださった皆さんも素敵な余韻を楽しんでくれていればいいなぁ〜と思いながら、夜風に吹かれて帰路につく。

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*****

次回はこちらでお会いしましょう!

THE COLLECTORS tour 2015 “Super Duper”

10/31 青森:Quarter

11/1 仙台:ClubJunk Box




by higehiro415 | 2015-08-19 09:49 | ライヴ | Comments(0)

コータローがGibson 335をしなやかにコードストロークすると、VOX AC30からはいつもの独特の音が鳴り響く。QちゃんのタイトなドラムとJeffのグルーヴィーなベースが重なる。いつもと寸分違わぬコレクターズサウンドだ。いやさらにバンド感は増しパワーアップしている。

そしてこの日は特別なプラスアルファがある。真城めぐみと畠山美由紀という日本を代表する2人の歌姫によるコーラス、高野勲と山本健太というセンス抜群のキーボーディストが一緒だ。


オープニングのインストが終わる頃、ユニオンジャックのジャケットに身をまとった加藤クンがステージに登場すると、およそ1万人の観客からウォー!という歓声が沸く。

Qちゃんのカウントで照明がドカンと明るくなり、シンセ音と共に♪Love~というボーカル&コーラスが大自然の星空へと吸い込まれていった。

記念すべき1曲目はこのトリビュート企画のタイトルにもなっている「愛ある世界」。僕はデジタル音響卓のフェーダーを慌ただしくいじりながらも、一気に夢のような空間へと引きずり込まれていった。

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15回目を迎えるARABAKI Rock Fest. 2015にTHE COLLECTORSが出演、それもトリビュート企画だと連絡が来たのは昨年の初秋だっただろうか。徐々に具体的な形が見え始め、豪華ゲスト陣とタイムテーブルを知ってからは、本当にこの日が待ち遠しかった。

そして何度も、夢ではないだろうか?と思ったのも事実で、主催であるGIP・菅Pは勇気ある夢のある男気溢れる決断をしたなと感心する。


遡れば昨年コータローBDを記念した伝説の北上ライヴがかなり大きな伏線の一因になったようだが、そういう意味ではザ・コレクターズという稀有な存在のバンドは、ファンのみならず音楽を心から愛する我々関係者や音楽業界全体にも夢や希望を与えてくれているのではないだろうか。

同時に戦略や金や権力や癒着などではなく、純粋にバンドの音楽性と魅力と周囲の愛によってもたらされ実現した企画ということに、とてつもなく大きな価値があると思うのだ。

まして僕や東北のファンにとって、このフェスでというのが最高の喜びでもあった。

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当日の朝は緊張からかワクワクからか、おそらくその両方なのだが、かなり早く目が覚めた。雨の心配など微塵もない雲ひとつない快晴。

出かけるにはまだ時間があったが忘れ物などないか入念に準備していると、コータローからメールがきた。

やっぱり予定より早い新幹線で行こうかな。

彼も早く起きてしまって時間まで待っていられなくなったのか?と笑いをこらえながら返信する。

仙台到着何時?会場まで乗せてくよ。


こうして他のスタッフやメンバーより一足先に僕らは会場入りした。時間的にもよかったのか道中はまったく渋滞などなくスムーズだ。車中は今月の彼のBDライヴのために選曲したコラボCDRのサンプルを聴きながら、今回はこれまでと違う感じでいいねなどと話しながら。そしてゲスト出演を打診された若大将がひとこと「おれも出してくれるの?」と言ったというエピソードを聞き心温まる。


陸奥ステージと荒吐ステージの後方中間にある広大な楽屋スペースに到着すると、知った顔がたくさんいて、その開放的な雰囲気も手伝って否が応でも気分が盛り上がってくる。これもフェスの醍醐味だ。

コータローと二人で、まだ今ならいいだろうとビールで乾杯。

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ケータリングコーナーの先の楽屋脇にチャボさんの事務所社長を発見し挨拶に行く。中に入ると「お~!コータローくん、佐藤ちゃん!」と満面の笑みで握手を求めてくれるチャボさんに、コータローは何やら秘蔵の写真を見せ盛り上がっている。とても微笑ましい。


今回のコレクターズ・スーパートリビュートのゲストを見ても、加山さんを除けば皆コレクターズ(加藤・古市両氏)より年下で、まぁ音楽に年齢は関係ないとはいえ、やはりチャボさんのような大先輩が第一線で活躍していることは僕ら世代にはとても励みになるし、ひいてはコレクターズが下の世代を刺激しているという伝承ラインは、とても感慨深いものがる。


1時間ほどすると機材車や他メンバーも会場に到着し、スタッフ全員で陸奥ステージを下見しに行き、舞台袖で細かい作業や手順をミーティングする。愛ある仲間たちだ。

ローディーのスーさんと秦くん、そして病床の山品さんに代わり舞台監督をやってくれる萩さん(コレクターズの東京での大きい現場をいつも仕切っている。奇跡的に空いてて助かった!)、照明は高橋優くん等もやっている謙太郎くん、PAはハウス(会場)が僕でモニター(ステージ上)に山本さん(東北以外でのコレクターズではハウスをやっている)、制作にVintage Rock若林さん、マネージャー松本さん。

現地PAや舞台は僕が仲良くさせてもらっている会社が担当しているので、ステージスタッフも完璧だ。

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こういう大きなイベント現場はスタッフがモノをいう。一人一人がプロフェッショナルに役割を果たすことで、全体の質がグレードアップするからだ。出演者が最高のパフォーマンスを見せるならば、最高のお膳立てを用意する必要がある。それが文字通りステージとなり多くのオーディエンスを酔わす。もちろんバンドの素晴らしさに勝るものはないのだが、美味しい料理は綺麗な皿にセンス良く盛り付けたほうが、より美味しく感じるではないか。それと同じだ。

何としても僕も最高の仕事をしなければと、あらためて思う。


楽屋に戻るとオープニングアクトCrazy Appleの面々も集まってきていた。和やかだがちょっと緊張しているようにも見える。他出演者も入れ替わり立ち替わり挨拶しに訪れる。こんなところからも多くのミュージシャンからリスペクトされるコレクターズの今の立ち位置がわかる。

メンバーはラーメンを食べたりカレーを食べたり他出演者と談笑したり、リラックスしているようで頼もしい。


刻々と時間が過ぎ、ウルフルズの本番中にステージ裏で楽器類を下ろす。そしてトリ前クロマニヨンズの演奏をステージ袖で聴きながら、ライザーの上に各楽器をセットしマイク類をアレンジしていく。Crazy Appleの分もなので、2セットである。

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転換時間は60分。長いようだがその間にステージをセットチェンジし、ハウスで46チャンネル、モニター16系統のチェックなので、そんなに余裕はないのが現状だ。

隣にいた土田さん(池24ディレクター)も「なんかこっちが緊張するなぁ~」と録音機材をセットしている。


なんとか時間きっかりに回線などのチェックを終え、いよいよTHE COLLECTORS Super Tribute~愛ある世界~(produced by 山中さわお)が幕を開ける。

ジングルが終わるとまずはオープニングアクトCrazy Appleの4人が登場。山中さわお、ビートりょう、ウエノコウジ、クハラカズユキという強力なメンツ。


「特別な夜を目撃しに来た皆さん。今夜は今まで開催されたどのモッズメーデーよりも、モッドで価値のあるそんな夜にしましょう。コレクターズが放つ愛ある世界。コレクターズに向けられる愛ある世界。小さな花を添える俺たちクレイジーアップル。よろしくお願いします!」

さわおの少し震えているようにも聞こえたオープニングMCが終わり、ギターがイントロを奏でる。

♪GO! GO! GO!、♪Stay Cool! Stay Hip!、♪夢見る君と僕、♪僕の時間機械(タイムマシーン)の4曲を本当に嬉しそうに大切にプレイしていた。

彼らの解釈でのコレクターズナンバーはとても新鮮で、勢いのある演奏は大いに会場を盛り上げた。

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そしていよいよ大トリの登場。

舞台側から「準備OK?そろそろ行くよ!」と声が掛かる。客席後方のPA・照明テントの中で僕と謙太郎くん(照明)はアイコンタクトを取る。卓のフェーダーを握る手が汗ばむ。

ブルーがかった照明の中メンバーが現れ、冒頭に書いたオープニングシーンだ。

どんな愛ある世界が展開されるのかしっかり見届けたいという想いとは裏腹に、なんかフワフワとした経験したことがない感覚だ。(その証拠に写メをあまり残せていない。笑)

そういえば北上ライヴのときコータローが同じようなことを言っていたのを思い出す。緊張でも感動でもない、どこか雲の上にいるような不思議な感覚だったと。

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キーボード2人・コーラス2人を従えたコレクターズは、曲のポップなニュアンスがより具体化してキラキラ感が増すといった印象だ。ツボを押さえたキーボードプレイ、華やかさとソウルフルを兼ねたコーラス隊はほんと最高であった。

そしてバンドのスケール感のある歌と演奏とステージングはこの大きな会場でもまったく違和感なく、むしろ大きさを感じさせないようにも映る。

この日のセットリストは掲載の写真を参照して欲しいが、頭3曲を終えた加藤クンの最初のMC「すごいな。これが1万人か。でもおれには若干狭いな(笑)」というのはまんざらでもない感じがした。

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ここから豪華ゲスト陣が、奥田民生、TOSHI-LOW、山中さわお、草野マサムネ+田村明浩、吉井和哉、そして若大将・加山雄三と続いていくのだが、その選曲も含めて言葉では言い表せない眩い至福の連続であった。

それはあの場で体感した人にしかわからない素晴らしさであり、説明するのは野暮というものだろう。それを選択した人だけの宝物なのだ。(内容については来月末のCS放送でチェック)


そして裏のハイライトはゲストとサポートが去り4人だけで演奏した♪百億のキッスと千億の誓い、♪Nick! Nick! Nick!だったのではないかと思ったりする。

メロディーの素晴らしさが浮き彫りになったこともそうだが、ゲストもキーボードも同期もコーラスもないのだが寂しくならないというか、アンサンブルとか音の厚みとかがまったく変わらないのだ。これには驚いたし発見だった。要するに4人だけでCDに収録されている他の楽器の分までカバーしていたということだ。

鋼のように鍛え上げられたアスリートの如し強靭なバンドサウンドとボーカル。ちょっと格が違うなということをまざまざと見せつけられた。

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アンコールの♪僕はコレクター、では本番中からステージ袖で盛り上がっていた他ミュージシャン達が、予定外の者まで乱入するという大団円を迎えた。あとで加藤クンが「知らない人もいた(笑)」と語っていたほどだ。最初どうノレばいいのか戸惑っていたコレクターズ初心者のオーディエンスも、ここではダ~リダリリ~と手を上げ振っていた。この光景も素敵だったし感動的だった。

このバンドはどれだけ愛されリスペクトされ、観る者を熱くさせるのか。

盆踊りも登場し渾然一体となったラストは、より現実感をなくしトリップ感覚を増長させたのではないだろうか。菅ちゃんの音程を外した歌声もナイスだった。


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こうして祭りは幕を閉じた。

照明の謙太郎くんと、こんなにステージ上が見えないままオペレートしたのは初めてだねと笑いながら握手した。遠いしバックライトが眩しいのとで、僕らの所からはメンバーの表情や細かい動きはほぼ見えなかったのだ。勘と音だけでハウスPAと照明をやりきった心地いい疲労感をお互いに労う握手だった。

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私事で恐縮だが、東京でのリハに参加してきたとはいえ、本番でサウンドチェックもなくちゃんと音が出せるのかというプレッシャーは大きく、それを打ち消すために数日前から飽きるほどイメージトレーニングをしてきた。1曲目が愛ある世界だったからなおさらで、いつもの4人だけなら自信はあるが、今回はゲストサポートも入っていて音数が通常の倍以上、2度のリハでは全体を掴み切れていない部分もあった。


そしてバンドや菅ちゃんやファンの人たちのことはもちろん、コレクターズ初体験の人たちが大勢いると思うと、絶対にいい音を出さなければという使命感があったし、あとで他の人に音を任せればよかったと絶対に思われたくないという自分自身の意地もあったのである。病気で欠席の山品カントクの分もあるし、どこか東北代表みたいな気持ちもあった。

結果は皆さんに判断してもらうほかはないのだが、自分としてはバッチリ出来た部分もあるが、もう少しやれたと思う部分も多々あり、おれもまだまだだなぁ~と更なる努力と経験が必要だと痛感している。他のスタッフの皆さんが素晴らしい仕事っぷりだったので、なおのことそう思うのだが。

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僕の車で一足先に会場を出た加藤クンとコータローとで、仙台市内の全体打ち上げ会場へと向かった。まだ店にはあまり人が来ておらず、僕らは奥のテーブルに案内され腰掛け控えめに乾杯する。

だんだんと出演者やスタッフが集まってきて、加藤クンとコータローを見つけた民生くんや吉井くん、タイジくんらもこちらのテーブルに座ってくる。


僕はそそくさと他のテーブルへ移動し、なんだか幸せな空間だなとワインを飲んだ。それは自分が幸せというのではなく、この場にいる全員がハッピーな表情をしていて、つまりそれはこのフェスの大成功を物語っているわけで、みんながそれぞれいい仕事をしたということ。そしてその中心に今宵はコレクターズがいるという事実が、とても心地よかった。

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乾杯の挨拶は加藤クンが、締めの挨拶はコータローが指名されお互い個性的な(笑)挨拶をしたのだが、2人とも同じように口にしたのは「皆さんのお陰で今日のステージに立てた。」ということだった。

それはここにいる全員はもちろん、応援してくれたファンの方々のことをも差しているのだろう。何度も苦杯を舐め回り道しながらここまで来た、彼ららしい挨拶だと思った。

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みんなと別れたあと、昼間とは違い風がだいぶ冷たくなった夜道を歩きながら考える。今日のことは本当に現実だったのだろうか。リハのときにコレクターズもようやくここまで来たかと感極まった自分が、予想に反してこの日は感激で涙することはなかった。それほど夢のような時間だったということか。


数時間前の演奏を頭の中で蘇らせる。

今宵のステージは確かに大舞台だったが、これが彼らのゴールではない。これがきっかけとなりもっともっと多くの人に聴いて欲しいと願っているが、そんな観点からも要するに通過点のひとつなのである。

このバンドはまだまだ上に行ける!と強く感じさせてくれる圧倒的なパフォーマンスと演奏、あんなのを見せられたらここで感傷に浸っている場合ではない。

来年はコレクターズの30周年イヤーなのだ。


東北のイベントだからこそ僕も関われた。それは本当にメンバー及び各関係者に感謝している。こんな機会は僕にはそうそうないだろうが、自分に出来る範囲で微力ながら今後も彼らを応援し続けたいと思う。

そして僕にまで頑張って!と声援をくれた皆さんにも、心から感謝だ。

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そういえばあの日の真城めぐみのTweetが最高にイカしてた。

「おい!コレクターズの事おっさんとか言うなよ!あんなおっさん自分の周りみて居るか?」

いろんな意味で(笑)本当にその通りだよなぁ。


一夜限りの愛ある世界、

あの瞬間確かに、ハートの鼓動で地球は廻っていた気がする。


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by higehiro415 | 2015-05-04 23:48 | ライヴ | Comments(1)

もう20年以上前の話だが、第2次バンドブームまっただ中、僕は仙台のFという音楽イベント制作会社にいた。

そのお陰で本当に多くのバンドのツアー制作やPA(音響)を担当させてもらい、それが縁で今も仲良くさせてもらっている方々も多いのだが、中でも年に1度の仙台ロックンロールオリンピックという、野外ロックフェスの先駆けともいえるイベントに携われたことが、その後の大きな糧ともなった。


単発のものはあったけれど、毎年恒例の野外ロックフェスというのは、当時国内にはこれしかなかった。1981年、HOUND DOGRCサクセション、ARBという3バンドで始まったこのイベント、高校生だった僕は友達連中と参戦し大いに刺激を受けたものだ。

東北が誇るそのイベントを後に自分が手掛けるようになるとは夢にも思わなかったが、強い思い入れがあったぶん今も鮮明に記憶に残っている。


その会社を退社するとき、1人の男が僕のところを訪ねてきた。

「今度xxxに入社したSgといいます。佐藤さんが辞めると聞き、お願いにきました!」

僕が担当していたバンドのいくつか(シェイディー・ドールズ、ニューエスト・モデル、ザ・コレクターズ)を自分が引き継いで担当したい、という話だった。


もちろん別の会社の社員に自分が辞めるからとバンドを斡旋することも出来ず、バンドだって事務所が付いているのだから僕に何ら権限があるわけではないのだが、その筋の通し方とバンドへの情熱、そしていつの日か憧れのロックンロールオリンピックのような野外フェスをやりたい!と言った真っすぐな瞳に心を動かされたのも事実で、とにかくそれは君と事務所が決めることだと前置きして、上記3バンドの事務所の社長を紹介した。

そのSgこそ、今やARABAKIROCK FEST.の名物プロデューサーとなったSgなのである。


昨年、とある飲み会でSgと久しぶりに飲んだとき、コレクターズの話題になった。

「今年は北上ライヴも実現したし、いいアルバムも出てNHKとのタイアップも決まり、かなりいい感じだとは思うんだけど、30周年手前の来年(2015)、東北からもうひと仕掛けしてさらに盛り上げたいなぁ〜」

「そうですよねぇ。もう再来年で30周年なんですね。すごいなぁ〜」

Sgちゃん、協力頼むよ。最初に担当したバンドでしょ。あのとき必ず大切にする!って言ってたじゃん()

「言いましたっけ?()。でも、ちょっと考えてみます!」


そしてそんな話をしたのも忘れ始めた頃、コレクターズのARABAKI出演が決まったと東京から連絡がきた。しかもトリビュートという企画で単なる出演ではないとのこと、あの20年前のことを思い返しつつ武者震いした。

しかも陸奥ステージの大トリということがわかり、僕はすぐSgに「さすがSgちゃん。ありがとう!」とメールを打った。


もちろん僕が何かしたわけではないし事務所の人間でもないので、そんな風に言うのはおかしいとは思うのだが、コレクターズをより多くの人に見てもらえることと、あの日と同じようなSgの男気と変わらぬ情熱が嬉しかったのである。夢追い人は初心を忘れてはならないのだ。

同時にそれは、バンドがそれに値する活動を続け、彼にそう決断させるパワーがあったということに他ならない。


さらに東京側から知らされたのは、音のほうは僕に任せたいということだった。これにも相当驚いた。

これほどの大きなプロジェクトともなれば、いくら僕が仙台にいるとはいえ東京からスタッフ全員が乗り込んでくるのが通常だからだ。そう思っていたので運転手でも買って出ようかと考えていた。


まだまだ未熟な自分にこの大仕事を預けてくれた事務所、制作会社、そしてメンバーに大感謝しながら、その恩を返すためにも(先述のドラマを完結させるためにも)何が何でもいい仕事をしなければならない!と自分にプレッシャーをかけているところだ。


とはいえ、舞台監督にホッピーY品さん、モニターPAY本さんという心強い仕事人も一緒だし、楽しみながらあの広大なスペースに心地いい音を響かせたいと思っている。

多くの観客の皆さんにも、より喜んでもらえるように。


そんな訳で、めちゃくちゃ気合いの入っている今年のアラバキなのである。

and more・・・の発表も待ち遠しいではないか。

桜はすでに散っているだろうけれど、心にMod Flowerが咲き乱れるのは間違いないと断言する。


参加の方は会場でお会いしましょう。あっ、広いし暗いし会えないかな?(笑)




by higehiro415 | 2015-04-08 00:44 | 日記 | Comments(4)

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昨年12月、人生初の弾き語りソロツアーを大成功させたあの男が、

多くのアンコールの声に応え、再びアコースティックギターで歌う!


東京公演はソールドアウトとなりましたが、

神戸公演のみ若干チケットあります!


古市コータロー

51バースデー弾き語りライヴ

my rule


2015527() チケット残りわずか!!

神戸:kobe liveact bar VARIT

19:00/19:30

定員120

1階イス80/2階立見40

全席自由¥5,0001D

groovecouncil@gmail.com

古市51神戸係まで

枚数・氏名・郵便番号・住所・電話番号・メールアドレス

を必ず記入の上お申し込み下さい。


2015530()  SOLD OUT !

東京:Zher the ZOO YOYOGI

18:00/18:30

定員130

(イス50/立見80

全席自由¥5,0001D

企画制作:GROOVE COUNCIL


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by higehiro415 | 2015-03-28 22:42 | 音楽 | Comments(0)

Whisky Man Blues ツアーレポ

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12月8日仙台公演の翌日、朝起きて自宅のベランダに出た。すっきりと晴れた空が広がっていた。タバコに火をつけると昨日の出来事が無意識に浮かんできて、何故か涙があふれて止まらなくなる。なんの涙なのか自分でも戸惑い必死に理由を探してみたものの、よくわからなかった。
開演が大幅に遅れはしたがライヴを開催できたことへの安堵感なのか、なんとしても仙台まで辿り着いてやるという執念が実った達成感なのか、もし飛行機が飛ばなかったらという心労からの開放感なのか、誰一人帰らず待っていてくれたお客様への感謝なのか。おそらくすべてのことが一気に押し寄せてきたのだが、それだけ気を張っていたのだと気付く。
とにかく僕らが会場に到着したときの温かい歓声と拍手と空気感は、一生忘れられないだろう。


わずか1週間5公演の古市コータロー初の弾き語りツアーだったが、とてつもなくドラマチックで最高に楽しい旅になった。
奇しくもWHISKY MAN BLUESと名付けた全国ツアーの日々を、僕の目線で申し訳ないが振り返ってみたい。
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12/5(金)
コータローは羽田から、僕は仙台から、千歳空港で合流し札幌市内のホテルへと向かう。
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何年かに一度の大寒波が来ているらしいと聞くが、そんな気配はまったく感じられない晴天で、僕らは「天気も味方してくれるなんて、きっといいツアーになるね」などと話しながらの車中。
もちろんツアー初日である翌日の段取りも打合せするが、一番真剣だったのは今夜の店とシメのラーメンをどこにするか?という話題だった。
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ホテルにチェックインしてすぐに、最近お気に入りのススキノの居酒屋へと向かい、ツアーの成功を祈りつつ乾杯する。前日に「ノージンギスカンで」とメールをもらっていたので、カニやアスパラに加え僕は前からここで食べてみたかったジャーマンポテトを頼む。「ジャーマンポテト!?いまどき注文しないよねぇ」と笑っていたコータローだが、いざテーブルに運ばれてくると「佐藤クン、イイ色してるねぇ〜。こりゃ間違いない!」と箸をのばし舌鼓を打つ。「じゃがいもが違うよ。美味い!」
そういえば仙台で僕が一番好きなラーメン屋へ初めて連れて行ったときも、運ばれてきたラーメンを見て「この盛り付けと色は間違いない!いい仕事してるねぇ〜」と言っていたことを思い出した。
このセンスこそ、彼の美的感覚と嗅覚を端的に表しているのではないだろうか。それが音楽やファッションにも通じているのだから、ブレない個性はより鮮明になるのである。
「ツアー、どんな感じになるかねぇ。緊張とかしてないの?」「それがさぁ、全然してないのよ、怖いくらい(笑)。まぁ明日やってみないと何ともね」などと、風邪も治りかけだし明日からはボーカリストということで軽く切り上げようと話していたにも関わらず、白ワインのボトルをご機嫌に数本空けてしまった。
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帰りはもちろんラーメン屋へ。ふと壁を見ると、明日明後日は工事のため休みます、と貼り紙がしてあった。僕らは「あぶなかったぜ〜。今日来ておいてよかった!」と歓喜の声を上げながらラーメンをすする。
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外に出るとさらに気温は下がっている。K「やっぱり北海道は空気の冷たさが違うな。東北の冬を知っているおれでも寒い」とホテルへと帰還。


12/6(土)
朝8時半にホテルのロビーで待ち合わせ。最近の僕らはここで食べる朝食、いや厳密にいえばサラダドレッシングなのだが、そのためにこのホテルを押さえている。午後の入り時間までどうしようかと行動を相談しながら、やっぱり美味いよねと2人ともサラダを3皿ずつ平らげた。

11時、ランチはラーメンと決めていたので、その前にレコード屋さんに向かう。今回はスーツケースに荷物が入らないからレコードは買わないと言っていたコータローだったが、結局は送ればいいかと2枚購入。店内で「おっ!これあったよ」とか「これ持ってる?」とか、まるで学生のように夢中になっている様は自分でも可笑しくなるのだが、至福の時間であるのは確かだ。
買ったレコードを抱えラーメン屋へ。昼時でちょっと混んでいたが、大人しく列に並び無事にラーメンをきめて一旦ホテルへ戻る。
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初日ということで少し早めに会場の円山夜想へ向かった。本間店長がいつもの笑顔で迎えてくれ和む。入口のところに12~3枚の来訪ミュージシャンの生写真が飾ってあるのだが、ちゃんとコータローの写真を一番手前に置いていてくれた。こういうちょっとした気遣いも嬉しいではないか。
一服してまずはセッティング。その間コータローにはグッズコンプリートの方への特典ポストカードにサインを入れてもらう。

今回ステージ上に譜面台は置きたくないと言う。普段は足下に置くモニタースピーカーも出来る限り両脇に避けて、姿すべてが客席から丸見えになるようにしたらどうかと提案されていたので、それがどんな風に客席から見えるのかレイアウトしてみる。
モニターはアコギ1本だし僕がちゃんと音を返してあげれば問題ないと思っていたが、譜面台は歌詞の問題もあるし、本当にいいの?と何度か確認した。
しかしあっさり、15回も1人でリハやってきたし、ウェラー(僕らが大好きなPaul Wellerのこと)もそんなステージでカッコよかったんだよね、と言う。
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このこだわりと潔さ、そしてその理想を実現させるための影の努力こそコータロー真骨頂だ。この美意識の高さが、そう簡単には真似の出来ないワン&オンリーとしての存在に彼を高めていく。
アコギ1本とはいえロック魂に裏打ちされたエピソードだと思うし、音楽はその佇まいやルックスも大事だという意味で、僕もとても共感できるのである。
客席からステージを見たらかなりカッコいいではないか。これでいこうと即決した。

ギターには最近ゲットしたというプリアンプDIを通しサウンドをチェックをする。ボディの鳴りがいい具合に再現されるので、その音を最大限に引き出せるようスピーカーをチューニングした。
ボーカルマイクはAKG/D7とAUDIX/OM5の2種類を持ち込んだ。どちらも試した結果、声に合うということもあるが、よりアコギの音にマッチしていたOM5に決定。
初日ということもあり感触を確かめるようにリハは進む。

お互いの感覚がフィットしたところで、同期もののリハ。今回は2曲ほどリズムに合わせて演りたいというので、テンポやパターンなどをメールや電話でやり取りしながら打ち込みを作らせてもらった。どのタイミングでフェードインしてアウトするかも含めて、コータローのイメージに合わせて操作を確認していく。手作業なので緊張するが、その時の状況に応じて微妙に変化を付けられるので僕も演奏気分になれて面白い。
それから1ヶ月以上前に送られてきたオープニングとエンディングのSEも確認。これも彼の中ではどのタイミングでどうするかというのが決まっていたようだ。実際に試してみて僕が客席からそれをチェックする。音以外の部分もそうやって作り上げていく。もちろん照明の感じもである。
セットリストも含めて、アコギ1本でダラダラやるのではなく、ひとつのショーとして完結させたいのだと理解し、レベルの違いはさておき、自分も音以外も気になる性分なので少しは力になれるだろうと俄然燃えてくる。

「佐藤クン、いま何時?」
「5時過ぎたとこだよ」
「そろそろリハ終わって、乾杯しようか」
僕らは冷やしておいたシャンパンを早々と開けた。初日だし今日はあまり飲まずにやったほうがいいかな、と昼間は言っていたはずだが。
「信ちゃんにも少し飲んだくらいのほうがコータローさんは声出ますよ!と言われたしさぁ」と、ニューアルバムをナイスプロデュースした浅田信一の言葉を引き合いに出すが、ちょっと自分を落ち着かせたかったのかもしれない。

開場し本番を待つ。心なしかお客さんは、どんなライヴになるのか?という期待と緊張が入り交じった表情に見えるが、なんせ人生初の単独弾き語りであるのだから、それは本人にも予想がつかないところだ。物販コーナーも賑わっている。
開演時間が迫ってきたので、僕はステージのテーブルにジャックダニエルのロックを置きチューニングしてから楽屋へ。
「ほぼお客さん入り終わってるけど、時間どうする?」
「それならオンタイム主義でいこうよ」
「了解!」
開演予定時間をほんのちょっと過ぎたころ、僕はオープニングSEのボタンを押した。
ゴールデンカップス「午前3時のハプニング」をバックに、コータローは髪の毛に手をやりながらちょっとだけはにかんだ面持ちで、割れんばかりの拍手のなか客席を通りステージに上がった。

「どうも。あれ、硬いんじゃないの?(笑)リラックスして、ま私もなんですけど。今日はようこそ。なんせやったことないことをやりますんで、時間の経ち方から何からみえないんですけど。まぁ今日は僕と一緒に作る感じでやっていきましょう。今年は札幌3回目かな。3回目だったら、言ってもいいかなぁ・・・ただいま!」(キャー!ひゅーっ!by客席)
19年前の2ndアルバムMountain Topから「あてのない影」のイントロを弾きはじめる。
古市コータローが新たな一歩を踏み出した、記念すべき瞬間だった。
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やはり勝手がつかめないせいかMCは多めで途中何度か客席に話しかける場面もあり、それが逆に会場内の空気を和ませてゆく。
新旧の曲とカヴァーやインストなど織り交ぜて、とてもバラエティーに富むセットリストだ。
「僕のはじめてやることにお付き合いいただきまして、ありがとうございます。皆さん記念すべきオーディエンスということになります。ホントありがとう!」
20曲2時間ぴったりで本編終了。アンコールで再登場の時には、写真を撮ってもいいよ、の一言で会場内は一瞬にして記者会見さながらのシャッター音が鳴り響く。初日ならではのサービスで、ステージ上でいろいろポーズをきめる姿に俳優の片鱗をみる。
アンコールも渋くビシッと決め、上々のツアースタートを切ったのであった。
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打上げはそのままマルノクで。
ライヴの感想を尋ねると、はじめはさすがに指がいつもと違う感覚だったようだが、このツアーへの手応えをつかんだようでとても楽しかったと答えが返ってきてホッとする。まぁステージでの笑顔とアドリブMCを聞けば、心から楽しんでいるのは明白だったのだが。
程よく飲んでから会場を後にし、この旅早くも3食めのラーメンを決める。食べながら「佐藤クン、明日の昼ラーメンどこにする?」と真面目に訊いてくるコータローであった。

札幌・円山夜想の本間店長、今月で辞めてしまうという熊さん、いつも札幌に行くと協力を惜しまずいろいろ助けてくれるKzy、Ri-komo、Ysk、Yu、そしてSgo女史。今回もまたお世話になり本当にありがとうございました!




12/7(日)
朝起きてカーテンを開けると、昨夜までとは違って真っ白な風景に変わっていた。モーニングの約束は8時半。僕は少し早くロビーに下りて外の雪の積もり具合を確認する。札幌にしてはそれほどでもない。
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時間ぴったりに下りてきたコータローと食堂で話す。例のドレッシングをたっぷりかけたサラダを口に放り込みながら、ライヴの改良点や方向性の確認など。Kのサラダ皿を見るとドレッシングがスープのように溜っていて笑ってしまう。かけ過ぎではなかろうか。
どうやら千歳空港発の朝の便が欠航したとの情報が入ったので、スマホでフライト情報をチェックすると確かに欠航や遅れが多いが、僕らが乗る仙台行き便は定刻となっていて安心する。

ホテルをチェックアウトして空港へと向かう道は思ったより雪が積もっていて、ヒョウのような氷の塊が風にあおられ車の窓ガラスを勢いよく叩いていた。予定の便は相変わらず定刻となっていたが、少しは遅れるかもな、でも出だし好調のこのツアーが阻まれることはないだろうと信じ、とにかく早く空港に着いてラーメンを食べようと急ぐ。

ANAの荷物カウンターは長蛇の列だったが、掲示板には搭乗手続き受付中の文字があるのでそのまま並んだ。昨日の札幌公演に東京から来てくれて、今日の仙台にも来る顔見知りのファンの人とばったり遇うと、予定の便が欠航になったらしく次の便に振り替えになったという。列はいっこうに前に進まず、掲示板は搭乗手続き一時中断中と表示が変わっていた。
ちょっとマズいなと思いはじめ係員に状況を確認する。今のところ何とも言えないというが妙に歯切れが悪い。こりゃ危険かもと他航空会社のカウンターへと走る。JAL、Air Doともに発着未定、Skymarkの13:50発が搭乗手続き受付中だというので、それに乗り換えようと決断する。
このまま待って飛ばないよりも、仙台到着が予定より50分遅くなるがリハを短く切り上げれば大丈夫と2人で話し、新しい航空券を買い直し無事に荷物を預けた。
逆にゆっくりラーメン食えるね!などと余裕をかましラーメンをすすったあと、まだ時間はあったがロビーには欠航や遅れで行き場のない人たちが溢れてきたので、僕らは早めに搭乗口に入り待つことにした。

外はもう雪が降っているどころか晴れ間さえのぞいてきた。しかし広い滑走路には機体が全然無くて、必死の様子で除雪車だけが走り回っている。どうやら千歳空港に着陸出来なくて引き返したり、出発地で欠航が決まったりしているようだった。要するに飛べる機体が現場に無いというお手上げの状態だ。
僕らは通路のコンセントの前に座り込み、スマホを充電しながら逆算と対策を練りはじめる。時刻は予定を過ぎて14時になっていた。それでも15時に飛べれば17時には会場に着く(開場17時半・開演18時)からサウンドチェックが30分出来る。問題ないと踏んでいた。
昔のロックバンドは平気で入り時間遅れたり、開演時間に会場入りしたりする連中もいたよねぇ、などと冗談交じりで話していたが、だんだんと僕らは口数が少なくなっていく。

カウンターへ問い合わせる。僕らの乗る飛行機はいまどうなっているか訊くと、まだ茨城空港にいるという。刻々と状況が変わるのでまた他の飛行機に乗り換えたほうがよいかと、預けた荷物をすぐ出せる場所に移動して欲しいと頼み、他会社カウンターへ行き情報収集するが、なんと遅れどころか次々と欠航になっていた。15時になる頃には元々乗る予定だったANA便の欠航が決まった。早めに決断して助かったが、あのまま並んで待っていたらと思うと背筋がゾーッとする。
仙台ではなく羽田や福島などに飛びそこから電車で仙台へ移動するという方法も考えたが、どうシュミレーションしても到着が21時にしかならず、さすがにこれは無理だということで、とにかくこのまま待つのが一番と判断する。
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多少遅れてもなんとか飛んでくれと祈る気持ちと、何としてでも会場に辿り着いてやるという執念が心を支配する。
会場到着リミットを19時半とすると仙台空港着は18時半、そうなると千歳空港17時発じゃないと間に合わないので茨城空港を15時半までに飛び立ってくれれば可能性はある。何度も状況を確認していると、15時20分ついに茨城空港で足止めになっていた飛行機に乗客が乗り込んだとわかった。
すぐにSNSで開場は予定通り17時半、物販販売のみ行いライヴは到着次第すぐ19時半頃予定で開催します!と告知する。

不幸中の幸いだったのはこの日の公演が僕のホーム仙台だったということ。すぐにライヴハウスの店長トムに連絡して事情を説明し、PAスタッフには出来る限りこんな感じで準備しておいてくれと細かく指示を出し頼む。
物販には今回のツアーグッズデザインを担当してくれたCKが関西から応援に駆け付けてくれていて、グッズの内容等はバッチリわかっている。もう1人のヘルプは友人でフリーアナウンサーの富岡浩美ちゃん、彼女に頼んであったのもラッキーであった。
チョーキーを連れてライヴを観にきてくれることになっていた岩手の345号くんにも、遅れるからとメールを入れる。
(345号くんのブログ http://collector345.blog63.fc2.com/ )
信頼出来る人たちが向こうで段取りしてくれる安心感で、僕らはすぐに到着してからのイメトレへと移行した。
電車の時間など途中で帰る人もいるだろうから、セットリストは無視して新譜のやつとかみんなが聴きたそうな曲は先にやるよと言ってくれた。帰らなければならない人にはそれでも申し訳ないので、ツアーのために作った演奏用のピックをプレゼントしようと決めた。

掲示板には仙台行き17時10分発という文字が現れる。他の会社が欠航続きのなかSkymarkの意地に感激し、コータローの持つ運の強さに感謝する。
あとは無事に飛んでくれることだけを願い、いまやるべきことを考えるのみ。
仙台に到着したらすぐに会場に電話を入れるつもりだが、その音声を客席に流せないだろうかと思い付く。トムにお願いしたら、なんとかやってみます!と言ってくれた。
そして予定よりさらに遅れたが、17時40分ころ僕らを乗せた機体はようやく空へと羽ばたいたのである。あとで聞いたら他の便はすべて欠航になったらしい。危機一髪だった。

「佐藤クン、飛ぶまでにちょっとロスったから向こうで荷物がすぐ出てこなかったら痛いね。それにしても30年やってきて初めてだよ、こんなの」
「おれもだよ。PAだけならまだしも主催ともなると重みが違う」
「着いたらもうさ、そのままステージに上がって音出るの確認して始めちゃおう」
「そうだね。あとは本番で何とかすればいいか。モニター大丈夫?」
「何とかなるよ、昨日の感じにしてもらえれば。今日が初日じゃなくてよかったよ〜」

仙台空港には18時50分頃に着陸した。急いで荷物受け取りのベルトコンベアへ走ると同じ便に乗ってきた先述のファンの人が僕らの荷物とギターを持って立っていた。「荷物最初に流れてきたので取っておきました!」ナイスアシストだ。別便乗り換えの可能性もあり荷物を出しやすくしてもらっていたため、早く出てきた様子だった。ラッキー!
荷物をリレーのバトンのように受け取り、そのまま外へ。Tに待機してもらっていた車に乗り込み会場へ向かう。コータローがその日のMCで言っていたが本当に空港には1分しかいなかった。

車の中から会場に電話を入れる。浩美ちゃんの「中継がつながりました〜」という声とみんなのざわめきがうっすら聞こえてきた。偶然だがレポーターのプロがいて助かった。
「いま仙台空港に着きました。もうちょっと待ってて下さい!いまコータローに代わります」
「もしもし〜。みんな聞こえる〜!?おとこ古市、マッハでそっち向かいます!」

すぐにトムからメールがきた。「電話中継ウケてたので余裕あれば再度お願いします(笑)」
あとどんなに急いでも30分以上はかかるので、入場者のドリンクおかわりはこちらで持つことにした。会場側も快く協力してくれたお陰だ。
高速を降りたとき再度電話中継を入れる。「いま長町インターなので順調ならあと15〜20分で到着するはず。コータローはいま車の中でリハやってま〜す!」電話口から大勢の笑い声が聞こえた。
見慣れた街並が目の前に迫ってくるが、ここがゴールではない。着いてただライヴをやるだけじゃ納得できないのは僕もコータローも同じだろう。ツアー2本目ならば、どんな状況であれ完成度という点においては1本目を超えなくては意味がない。なんだが試されているような気がしてくる。もうすぐ着くという安堵と同時に腕が鳴った。

パークスクエアの前で車を降り、スーツケースとギターを持ってエントランスへの階段を走り下りた。ホールのドアを開けるとフロア満員のお客さんの、どよめきにも似た歓声と拍手が鳴り響く。不思議な感覚だった。
スーツケースを引っ張ったままステージに上がり、コータローはダウンもマフラーもそのままでギターケースからアコギを取り出す。僕はスーツケースを開けてマイクを取り出しマイクスタンドに装着する。このとき気を付けたのは洗濯物が飛び出してこないかだけだった(笑)。必死だ。
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プリアンプDIにシールドをぶち込み僕はPA席へと移動。声とギターがスピーカーから出ることだけを確認しステージへ戻り、こっちOKだよと伝える。
主役が着替えに一瞬楽屋へ行っている間に、僕はマイクを使いいくつかのインフォメーションとお詫びを。すぐにPA席に戻り同期やSEの入ったiPadをつなぎ込む。着替えを確認しオープニングSEのボタンを押すまで10分位だったろうか。本来の開演時間から約1時間45分押しのライヴスタートとなった。

2曲目までは必死に音の状態を普通にもっていくようPA卓をいじり倒す。そこからようやく微調整に入り、3曲目でほぼ通常レベルまで持っていけた。ステージ上のコータローは何事もなかったかのように見事なパフォーマンスを繰り広げている。これぞプロフェッショナル。努力と経験によって蓄積された底力、それを出し切るハートの強さも必要だろう。さすがだ。
途中、セットリストがコータローの手元にないことに気付き、どうせだからとウイスキーと共にステージに差し出すことにした。ちょうどPA席の前にチョーキーがいたので、このグラス持ってきて!と頼み僕はセットリストを、チョーキーは「えっ?おれが?」と言いながらもロックグラスを手渡す。「チョーキー!」と一言だけ発しそのウイスキーをグビッと飲む。これ美味いな。いい酒だなぁ。
チェックしていなかった同期のipadは本番で合わせた。Everyday EverynightからMonochrome Girlへはリズムフェードアウトに続きフェードインするのだが、手に汗をかいていて画面のフェーダーがうまく動かず焦った。
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この日の名言はMCで発した「ごめんね&ありがとう」である。
待たせてごめんね、そして待っててくれてありがとう!というまさに偽らざる心の叫びだろうが、語呂や言い回しが可笑しくてツボに入ってしまった。
何人かのお客さんが帰らねばならない時間には「そろそろ時間?ちょっとこれだけ聴いてって」とアルバムタイトル曲Heartbreakerをプレイ。
終演時間のこともあり少し短めにしなきゃねなどと言っていたが、結局は予定の曲すべてを演りきった。
ライヴが終わり楽屋へ。
「おつかれ〜!乗りきったね。」
「そうだねぇ〜、ホッとしたよ。でも佐藤クン、さすがに疲れたね(笑)」
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打上げにはチョーキーも参加してくれた。5月のコレクターズ北上ライヴの時はステージでのサプライズ数分間と、チョーキー達が飲んでいた店に顔を出しに行った10分間しか会えなかったが、今回は事前に一緒に飲もうよと誘っておいたのだ。北上のときの感じから、おれはいいよと遠慮がちに断られるかもと思っていたが、来てくれた。コータローも僕に「チョーキーと一緒に飲めるの?」と嬉しそうだった。
もちろん酒が進むにつれ話ははずみ、北上の高校時代のことやアマチュアバンドのことなど、まるで同窓会みたいだなと思う。いや、こうやって飲みながら2人が差しで話すのは20年以上ぶりなのだからある意味そうなのだが、少年のように笑う顔に刻まれた皺や表情を見てやはりそれとは違うとすぐに思い直す。ある種の運命や宿命を背負って生きてきた2人の男が交錯する今だからこその深みある美しさというか、とにかくそんな2人を見ながらの酒は格別であった。おかげで、疲れていたのにまた飲み過ぎてしまったではないか。
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みんなで一緒にホテルまで歩く。仙台の夜は冬の匂いが確実にしていたが、札幌の寒さと遅延事件の冷や汗に比べれば、気持ちの問題も含めて爽やかでさえあった。数時間前までの出来事がまるで夢のように感じられる。
歩きながらコータローがポツリと言う。
「佐藤クン、それにしてもさぁ、今日はしびれたねぇ〜。おれたちベテランでよかったよね」
まったくである。あの状況の中お互い120%を出し切り、なかなかいい仕事が出来たのではないか。仕事の質と、最悪の場合を想定しつつ前向きな思考を崩さなかった精神力。そしてそれを大袈裟に見せずクールにこなしたいという美意識。何も言わなくともそこら辺の共通認識が出来ていたことも大きかった。

ただ、疲労の中ものすごい瞬発力を使ったためアドレナリンが出まくり、やはり冷静には振り返れないので、その判断はあの場にいた皆さんに委ねようと思う。
初の弾き語りツアーに初のアクシデント、本人は2倍疲れたであろう。労いの気持ちを込めて声をかける。
「じゃ、明日11時半ね。移動日だから飛行機遅れても大丈夫だね」空を見上げると、丸い月が優しく笑っていた。
みんなと別れ1人家路につきながら口に出す。「ごめんね&ありがとう!」コータローやスタッフも含めあの場にいた全員に感謝する。
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12/8(月)
朝の涙は冒頭の通り。背伸びをしたら身体中が痛かったが、気分はすっきりだ。
11時にホテルのロビーへ。チョーキーに北上のDVDを渡す約束をしていたのである。
「例の場面はハイライトでがっちり映ってるよ!あ、おれの部分はとばして観てね(笑)」と手渡すと、ふ〜んと言いながら「ありがとう。大切に観させてもらいます」とホント大切そうにカバンにしまい込む。
11時半にはコータローが下りてきて、チョーキーや345号くんに見送られ、僕らは仙台空港に向かった。余談だが後日345号くんからもらったメールで、その日の帰りチョーキーがまた音楽やりたいなぁ〜と話していたと知り、とても嬉しくなった。

昨日とはまるで違う平和感ただよう仙台空港でまずはランチ。僕はこの秋に食べ損ねていた、はらこ飯(宮城県亘理の名産でシャケといくらのご飯)を注文。コータローは仙台味噌ラーメン。
「またラーメンかぁ。攻めるねぇ」「だって今日から大阪だからラーメンとはしばしお別れだしさ。ところで今夜のメシ、どうする?」
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飛行機は定刻通り出発し伊丹空港に到着。ノンストレスっていいねぇ〜!などと言いながらタクシーでホテルへ行きチェックインし、ソロアルバムのインストアイベント会場であるタワレコ梅田茶屋町店へ。
控室ではこの日MCをするJanus店長の岸本優二氏と打合せ。
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「ほんまに僕とのトークでええんですかねぇ。なに訊けばいいすか?」
「そんなのアドリブでいいよ。アルバムの話はいろんなところに載ってるからしなくていいよ。同じこと喋ってもしょうがないし」
「マジすかぁ〜?」
「マジマジ。おれたちいつもそうだもん」
イベントはアルバムの話をすることなく、2人の雑談で終了。そのあと長い行列のサイン会をこなすスターであった。
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シンガーの咲ちゃんはじめ関西の仲間と合流し乾杯。昨日も結局飲んじゃったねぇ〜などと、今夜もワインのボトルが次々と空いてゆく。仕事を終えた森山公一も合流。アルバムへの素晴らしい提供曲を褒め倒しつつ(笑)会話ははずむ。
「ところでコータローさん、初めての弾き語りどうですか?」
「札幌は初日で、昨日の仙台はハプニングでしょ。だからまだわかんないけど、楽しいし何かつかみかけてはいるんだけどね」
「ニューギターの調子もバッチリですか?」
「うん、いい感じだよ。仲間にプレゼントしてもらったやつだから、なんかみんなで旅してるみたいな感覚もあるしさ」
「1人リハもけっこうやってはりましたよねぇ」
「そうだよ。歌詞覚えるのもあったけど、アコギを持つ姿がしっくりくるまでやりたかったんだよね」
「おれも見習わなあかんなぁ〜」

程よく飲んで店を出たのだが、ホテル近くのAORバーに寄っていこうとなり、やっぱりアナログ盤はいいなぁ〜とまた乾杯し夜は更けたのであった。
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12/9(火)
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気持ちいい天気だ。午前中のうちに僕らは中古レコード屋へ向かった。大阪に来ると毎回寄ってしまう良心的な店だ。無言でガサゴソとレコードを漁る。時折いつものように向こう側から声が聞こえる。「佐藤クン、これこの前千円で買ったやつ。150円だってさ」
何枚か収穫したあとはランチだ。これまたいつものインディアンカレー。昼時で混んでいて店の前のショーケースを見ながら待つ。「やっぱスパかな。あれ、大盛りってどのくらいだっけ?普通じゃ足らないしなぁ」旅の楽しみを満喫するコータローであった。

今日の大阪公演の会場は心斎橋JANUS。アコースティックには少し広いんじゃない?とブッキングの際にコータローは心配していたが、イスを置いて飲みながらゆったり見るにはベストだし、コレクターズでやり慣れてるからとここに決めた。
予定より30分早く会場に入らせてもらう。仙台のとき後半でギターの音が少し歪んでいた問題を解決したいのと、札幌・仙台とやってきてさらにいい音を追求したいのとで、プリアンプDIの設定をチェックしたり修正したりしたかった為だ。それに照明が効果的なハコなので、そのリハや明かり作りにも時間を割きたいとコータローは考えていた。
会場に着くと開口一番こう言った。「1人だと広いなぁ〜。ここで1人でやるの?」札幌も仙台もコンパクトで客席と近いステージだったので、余計に広く見えるのは確かだ。彼にはまた新たな試練が与えられたのである。
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音のほうは3公演めにしてようやく時間と手間をかけてリハーサルすることが出来た。ギターの音はよりダイナミックになり、マイクと口の距離や角度などもコータローと話しボーカリストとしての比重も大きくなる。僕は札幌と仙台でイメージした曲ごとのリバーヴを12種類ほど作った。
あとは曲ごとに照明の感じを確認しながら全体の流れを追う。「この曲はさ、赤っぽい感じのあかりがいいんだよな。佐藤クンそっちから見てどう?」「いいねぇ。でももう1色あってもいいかも」「じゃ照明さん、この後ろの青も少し足してもらえる?」
同期を使う2曲はもちろん、オープニングやエンディングのあかりのキッカケも今日は細かく指示を出す。コータローが目指していたと思われる、アコギ1本のエンタテイメントライヴショーの全貌が今夜ついにベールを脱ぐのだ。楽しみが増す。
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開場1時間前にステージ側の準備が終わると、「佐藤クン、楽屋で一杯やろうよ!」とシャンパンを開け本番に備える。物販と記録映像撮影は、いつもお世話になっているチームナニワカのメンバーが手伝ってくれる。感謝!
来場者全員にプレゼントしたいとコータロー自らが自腹で作ったポストカードは、JANUSのスタッフが配布してくれるという。今日はほんとステージに集中出来る環境が揃った。
この日の開場後、グッズコーナーに長蛇の列ができ賑わっていた。失礼ながら大阪ではあまりお目にかからない光景で嬉しい。

ライヴは非常に完成度が高くメリハリのある2時間となった。MCも絶好調で、気分よくギターをプレイし歌っているのがわかる。もちろん札幌も仙台も楽しくプレイしていたのだが、初日の緊張感と仙台の窮地を乗り越え、さらにパワーアップした男の姿が浮き彫りになっていた。ステージや客席の広さなどまったく気にならないし、むしろスケール感があっていい。特に歌は本当に堂々としていて、ボーカリスト古市コータローが誕生した瞬間にも思えた。
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本編ラストで興奮はMaxに達し、アンコールは楽曲を提供した森山公一も見守るなかでのBaby Moon。沁みた。
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ライヴ後は何人ものお客さんに、大阪に来てくれてありがとうございました!と声をかけられる。とても嬉しいことだが、僕はただ、ツアーをやってみようというコータローの手伝いをしているだけなのでなんか恐縮してしまうが、それだけ待ち望まれていたのだということだ。

打上げはそのままJanusで。
M「いやぁ〜、ほんまいいライヴでした!」
K「のらりくらり、とBaby Moon、だいじょぶだった?」
M「サイコーでしたよ。特にBaby Moonはあんなえげつないタイミングで歌ってもらえて感激ですよ。ヒロさんもえげつなぁリバーヴかけるし(笑)」
K「確かに今日のリバーヴはきてたね。ステージにいてもわかったもん。きた〜って(笑)」
H「あら、かけすぎた?でもラスト3曲のあとでしかもあの照明なら、あの位が逆にいいかなと思ってさ」
K&M「いや、最高!」
H「森山も歌えばいいのに。いい曲なんだから」
M「コータローさんに大阪のブルース作れ!と言われて作りましたからねぇ(笑)。歌ってもええですかねぇ」
K「もちろんだよ。歌えよ!」
この2日後の森山のBDライヴでは、Baby Moonをコータローからもらったピックでセルフカヴァーしたようだ。とても色気のあるバージョンだったらしい。聴いてみたいな。

いい感じにアルコールもまわった頃だ。
「佐藤クン、今日さ、なんかつかんだよ。弾き語りのコツというかやり方というか」
「やっぱり?なんかギターも歌も完全に肉体化してたよ」
「マジで?いやぁ、かなり楽しいもんだね」
「そりゃよかった。でもあと東京だけって勿体ないよね」
「そうなんだよねぇ。せっかく慣れてきたのにあと2本だもんなぁ。もっとやりたいよ(笑)」
ワイングラスの中の氷がカランと音を立てる。まるでその言葉を祝福しているように感じた。




12/10(水)
この日で一旦解散。コータローは新幹線で東京へ。僕は飛行機で仙台へと戻る。


12/12(金)
代々木ザーザズーでの追加公演日。ブッキングの段階では翌13日にファイナル1回の予定だった。しかし東京公演はすぐに売り切れるだろうと予測していたので、コータローには2daysにしようよ!と言ってみたのだが、弾き語りだし1日でちょうどいいんじゃない?と返答されていた。
初めてのことなので確かに動員も読めない部分はあったが、せっかくの機会を見逃さざるを得ないファンの人が沢山いるかもと思うと、なんか諦めきれなかった。
店長のマティに相談すると、前日ならまだ空いているから仮でしばらく押さえておきましょうか?と言ってくれたので、本公演がすぐに売り切れるようだったらコータローを説得して追加公演を打とうと思い、予約日に結論出すからと仮押えしてもらう。
案の定チケット予約は1分で定員をはるかに上回り、追加公演をやらないと暴動が起きるよ!(笑)とすぐに連絡して、この日の追加公演が決まったのである。
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今日の命題はあきらかだった。札幌で種を植え、仙台で土を耕し、大阪で芽が出た花を咲かせるのが今日である。
PAは通常のメインスピーカーに加えステージ前列用に2つ、そしてカウンター側にも1つ、会場内どこにいてもギターの音が響き、覚醒した歌声が聴こえるようにとセッティングする。
ギターを抱えたコータローが到着した。「今日もよろしく。ところでエンディングのSEなんだけどさ、流すタイミングもうちょっとだけ早いとどうかな?」もちろん賛成だ。実は僕も大阪のときに、決めていたタイミングよりちょっと早くSEを出したい衝動があったのだと答えた。こういうのは感覚に従ったほうがいいに決まっている。「リハの最後にチェックしてみよう!」
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音決めはすんなりと終わり、あとは照明を作るために1コーラスずつチェックしていく。僕は大阪で試した12種類のリバーヴを今日は曲ごとに全部変えようと思っていたので、それを確認しながらのリハだ。照明が曲に合うシーンを作っていくのと同じように、気付かれない程度ではあるが1曲1曲をよりカッコよく聴かせる音作りにしたかった。それが出来るのはこういったツアーの醍醐味でもある。
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photo by shibaeri

ツアーグッズとして作ったバンダナは、客席から見えるようにドリンクテーブルから垂らそうとコータローが言った。小さいことではあるが、こういう工夫もツアー中の楽しみといえるだろう。
物販は関西からRちゃんが手伝いに駆け付けてくれた。
リハ後はキタくん、O氏も交え楽屋で景気付けの乾杯。キタくんが尋ねる。「コータローさん、やっぱり飲みながらやってるんですか?」「当たり前だろ。そのほうが声出るみたいだし」

万全の態勢で開場となり、続々とお客さんが入場してきてあっという間にフロアが満杯になる。この日もBGMは今回のためにセレクトした下記だ。
No Tell Lover _ Chicago / The Beauty Of You _ Camelle Hinds / Running Away _ Lindy Layton / It Ain't Over 'Till It's Over _ Lenny Kravitz / It's A Shame (ver.Europeenne) _ Clémentine / Have You Ever Had It Blue _ The Style Council / Got To Get To You Girl _ Jermaine Jackson / Digging Your Scene _ Ivy / Never Never Love _ Simply Red

ライヴは5分押しでスタート。
コータローは余裕すらあるように見え、完全にシンガーとしての佇まいを纏っていた。中盤頃、信ちゃん(浅田信一)が到着しPA席の僕の隣に陣取る。「どうすか?」「いい感じだよ!」
今回のアルバムを素晴らしいものにしてくれたプロデューサーの信ちゃんに敬意を表して、とセットリストに入れた彼のカヴァー「ローファー」の時は、急に隣でごそごそと上着を脱いだり落ち着かない様子だった。もし表情を盗み見て涙が見えたら僕も泣いちゃうんじゃないかと思って顔は見ないようにした。何より名曲だし、相当にハートのこもった熱唱だったのである。
新譜からの曲の時は、隣でハモリパートを歌う信ちゃん。レコーディングを思い出しているのだろうか。トークバック用のマイクを向けてそれをスピーカーからこっそり出してやろうかと思うほど贅沢なPA席であった。隣にはヴィオラ奏者の田中景子ちゃんも来てくれている。

客席ドリンクカウンターの方に目をやると、ソトマル(外丸兼次・健児)もいた。コレクターズと僕がちょうど出会った24~5年前、外丸はバレットというバンドをやっていた。仕事でも絡むことになるのだが、僕がギターを弾いていたバンドとよく対バンした仲である。コレクターズと同じ事務所の時もあった。
彼は数日前、仙台公演の打上げで僕がFacebookに書いたチョーキーの文字に反応し、としはる!?とコメントをくれた。バレットの初期、アイゴンがギターでチョーキーがベースだったのだ。そしてコータローの東京はいつ?と訊いてきたので、たまには来なよ!と声をかけていた。
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ライヴは、大阪での完成形がより緻密にダイナミックに進化していた。気心の知れたスタッフがいる慣れたハコというのも安心感があったと思う。
MCでは「明日で終わりかぁ。寂しいなぁ〜」と言っていたが、これだけのライヴを観せられたら誰もがそう思うのではないだろうか。もちろん僕も同じ想いだ。
エンディングSEクラレンス・ブラウンのSame Old Bluesが鳴り響くなかポーズを決め去っていくコータローは、映画スターのようでもある。彼が目指していたアコギ1本でのライヴショーは、この日完全に1つのパッケージとして結実した。
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打上げには信ちゃんやキタくんや外丸も参加してくれた。外丸とコータローはアマチュア時代からの仲間だったという。あの頃は毎日つるんでたよねと、外丸は当時のちょい悪バカ話をいくつも繰り出す。その記憶力もすごいが、エピソードが今にも当てはまるから、変わってないのだなぁ〜と笑ってしまう。とても嬉しそうでよかった。30年ぶりに一緒に飲んだ様子は外丸がブログに書いてくれた。
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先に帰った外丸から夜中にメールがきた。「今夜のコータローの猫手アコギ、さとうマジックでエエ感じでしたよ」パンクスなのに可愛いやつだ(笑)。
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明日もあるからとそれ程深い時間になる前にお開き。信ちゃんが「明日何時入りですか?」というので「4時前かな。早く来れるの?」というと「ヒロさんの手伝いしに4時に来ますよ(ニヤニヤ)」
みんなと別れ新宿のホテルまで歩く。ちょっと遠いが夜風に触れながら帰りたかった。札幌に前乗りした時からちょうど1週間。あの時はツアーが一体どんな感じになるのだろう?と本人も僕も手探りだった。正直僕は、コータローの初チャレンジが無事に終わってくれればいいな、とにかくステージに立ってギターを弾き歌ってくれさえすれば今回は成功だと最初思っていた。しかしハードルを飛び越えるとまた高いハードルを設定するドMっぷり全開の主役に引っ張られ、なかなか見ることの出来ない風景を楽しませてもらっているなと実感する。
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歩きながら脳内はこの1週間を再生していた。大ハプニングもあり決して綺麗な訳ではなくどちらかといえば奮闘に近いのかもしれないが、巧妙に構成された連続ドラマのようだ。タイトルはやはり「Whisky Man Blues」だろうか。もしくは「ソロ市・大冒険」とか。
明日の最終回はどんなドラマが待っているのか。早く結末が見たいような、永遠に終わって欲しくないような複雑な気持ちになる。新宿高層ビルの明かりが霧に反射し、万華鏡のように目映く揺らいでいた。




12/13(土) ※photo by shibaeri
氷入りの白ワインを飲みながらコータローが僕の肩をつかむ。
「佐藤クン、ブルースだったねぇ〜!」
打上げでのこの一言が、まさにこのツアーを物語っていた。
「コータローがMCで言ってたけどさ、おれも終わるの寂しくて昨日あんまり眠れなかったんだよね(笑)」「やっぱり?しかしさぁ、仙台の一件が効いたね。いま思えばあれが逆によかった」
ツアーファイナルは予想をはるかに上回る素晴らしい出来となり、テーブルには空になったワインボトルが無数に転がっていた。
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ツアー最終日、どこか落ち着かず入り時間より少し早く僕は会場に到着した。間もなくコータローも早めにやってきたが、会場が空いておらず外で立ち話をしながら待つ。こんなこともひとつの思い出になる。
ステージやPA・照明も昨日のセッティングのままなので、今日は準備がほとんどない。リハというよりは総決算の仕上げというか、そんな感じで音と照明は最終確認と修正をしていく。コータローは声出しとギターの指慣らしかと思いきや細かいフレーズも練習していた。
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サウンドチェックが始まるころ信ちゃんもやってきた。ステージに上がり足下ではなく両脇に離して置いたモニターを聴いている。「コータローさん、このセッティングは思い切りましたねぇ」「アコースティックならこれ悪くないね。ナチュラルに聴こえてやりやすいかもよ」「なるほど〜」
今度は客席に座って音を確認し、僕のいるPA席まで来た。「ほんのちょっとだけ中域上げたらどうなんすかねぇ?」「モノ足んない?」「いや客入れして吸われたら抜け悪くなるかなと」そんな話をしてちょっとイコライザーをいじる。うむ、確かにこっちのほうがいいかもしれない。さずが名プロデューサーだ。
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「コータロー!ギターの感じちょっと思い付いたことあるから曲によって少しいじっていい?」「もちろん。任せるよ!」この日はボーカル用にリバーブ20種類、ディレイ5種類、ギター用にリバーブ8種類を準備した。綿密に準備をし微調整はライヴの瞬間的なグルーヴに合わせ臨機応変に。
スチール撮影にはしばえり、ライヴ収録に池24の土田Dも来てくれている。「青い風のバラード」を作詞したせきさんも福岡から駆け付けた。リハが終わる頃には仲間たちが集まってきて、ファイナルの雰囲気ぷんぷんである。もちろん楽屋では酒盛りがはじまった。

ドアオープン。あまりギュウギュウにならないようスタンディングスペースを広くとったが、それでも窮屈な思いをさせて皆さんには申し訳なかった。
本番直前のチューニングには信ちゃんがステージへ。
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この日の演奏はしなやかさが上乗せされていた。とても自由にみえる。
「あてのない影」「Nothing or Something」「青い風のバラード」「のらりくらり」「涙はいつも遠くに光る」「Slide Away」「この夜」
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メロウな曲が並ぶ前半戦に続き中盤にはカヴァーを3曲。ダイナマイツにTスクエアにゴールデンカップス。
そして同期を使った「Everyday Everynight」「Monochrome Girl」で変化をつける。
ボツになったカヴァーを数曲歌ったあと「Oh! My Dear」
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MCではこれからSSW(シンガーソングライターの略)と職業欄に書くかとか、ボーリングが得意だとか、ツアーを振り返ることなどなく思い付くままの話題を喋る。ただ、最終日になるのが嫌で眠りたくなかった…とか、終わっちゃうなんてさびしいなぁ〜、といった本音も覗かせた。
僕の隣に座って見守る信ちゃんは「ライヴも素晴らしいし音もバッチリですね!」と親指を立てる。

後半への導入部は今回の新譜のプロデューサーでもある浅田信一の名曲「ローファー」。続いて「君がいたら…」「Heartbreaker」と歌に真っ向勝負を挑んでいくセクションだ。本当に歌が板に付いてきて、ずっと前から弾き語りをやっている人のようだ。
その後「それだけ」「いつかきっと」で会場のボルテージは上がり、「Mountain Top」では圧巻のギタープレイにフロアから溜め息と歓声がわき起こる。本編最後にギタリストとしての魅力をギュッと真空パックしてみせる。
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そしてアンコールでのムードあふれる「Baby Moon」で夢心地にさせるという、最高のセットリストではなかったか。
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ファイナルということもあり拍手が鳴り止まず、この日はダブルアンコール。もうやる曲がないと言いながら再びの「Heartbreaker」でツアーは幕を閉じた。
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感無量とはこのことだ。一瞬放心状態になったが、すぐに後ろの照明卓のIちゃんにお礼の目線を送る。バッチリだったよと。
ツアーを全制覇した人はどの位いたのだろう。図らずも1本とて同じようなライヴは無かった。どれもが違ったその瞬間最高のパフォーマンスで、すべてがレアなものになったと思う。ライヴの空気感を大事にする彼らしい5本だった。
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打上げはさすがに人も多かったので、しんみりならずに済んでよかった。全員が笑顔だ。
ツアー成功記念に写真を撮ろうと提案する。初のチャレンジを成功させたコータローにふさわしく、記念写真もこれまでに無いものをと思った。お姫様抱っこしか思い付かなかった(笑)。
「おれ案外重いよ!」「いや大丈夫。持ち上げたら3秒でシャッター押して〜!」まわりが沸いていた。
何度見ても笑ってしまうが、このツアーを象徴しているようでなかなか気に入っている。
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先述の、ブルースだったねぇ〜と話したあと、コータローはこう続けた。
「ほんとにやってよかったよ。マジで楽しかった。機会があったら、またやってみたいなぁ」

僕は心の中で、連続ドラマのエンド画面を「Fin」から「Continue」に書き換えた。

thanks to everyone.





by higehiro415 | 2014-12-21 04:11 | 音楽 | Comments(2)
こちらもソールドアウトになりました!

全公演ソールドアウトにつき、東京での追加公演が急遽決定!
予約は明日の10:00〜(詳細は以下をご参照下さい)

古市コータロー solo acoustic tour 2014
Whisky Man Blues追加公演

12月12日(金)東京:Zher the ZOO YOYOGI (ザーザズー代々木)
open 19:00 / start 19:30
*定員120名(イス60/立見60)

チケット:¥4,500(全席自由/1ドリンク別)
     
【チケット予約について】
9月3日(水) 10:00〜 下記の内容でメール受付 
▶ groovecouncil@gmail.com 古市コータロー2014追加公演係
枚数・氏名・郵便番号・住所・電話番号・メールアドレスを明記してお申込み下さい。
お一人様2枚まで。
受付け後2日以内にチケット予約状況とご購入の詳細をメールにてご連絡しますので、迷惑メールフィルターなど設定の方は上記アドレスからのメールが受信出来ますよう、設定の変更をお願い致します。
申込み数が定員に達し次第、受付けは終了させていただきます。
整理番号はメール受付順となります。

※なお12/13本公演の抽選に漏れた方を優先的にご案内をさせていただきますので、ご了承下さい。


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写真は2014.9.1 北上にて
by higehiro415 | 2014-09-02 16:54 | 告知 | Comments(1)
お陰さまで全公演ソールドアウトとなりました!

THE COLLECTORSのギタリスト・古市コータローが、ついに自身の音楽人生で初となる弾き語りソロライヴを敢行することになった!
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今年5月には彼の50歳を記念するザ・コレクターズ北上ライヴを伝説のドラマにし、現在はバンド20枚目にして最高の1枚!と評されるニューアルバムを引っ提げソールドアウト続出の全国ツアー中。

その合間には新譜プロモーションイベントの他、加山雄三King All Starsの一員としてフェスやお茶の間を賑わし、さらには緊急バンドやアナログ・モンキーズ、はたまたDJとしての活動など、今まさに“最もノッてる男”と評判の古市コータロー・4大都市ソロツアーがいよいよ実現する。


古市コータロー solo acoustic tour 2014
Whisky Man Blues

12月6日(土)札幌:円山夜想(マルヤマノクターン)
open 18:00 / start 18:30
*定員70名(イス35/立見35)

12月7日(日)仙台:Live House PARK SQUARE(パークスクエア)
open 17:30 / start 18:00
*定員80名(イス50/立見30)

12月9日(火)大阪:Music Club JANUS(ジャニス)
open 19:00 / start 19:30
*定員150名(イス150)

12月13日(土)東京:Zher the ZOO YOYOGI (ザーザズー代々木)
open 18:00 / start 18:30
*定員120名(イス70/立見50)

チケット:前売 ¥4,500(全席自由/1ドリンク別)
     当日 ¥5,000*定員に達した場合は販売致しません。


【チケット予約について】
9月1日(月)午後8:00(20:00)〜下記アドレスにてメール予約開始 
▶ groovecouncil@gmail.com 古市コータロー2014係
*公演名(札幌・仙台・大阪・東京)・枚数・氏名・郵便番号・住所・電話番号・メールアドレスを明記してお申込み下さい。
各公演お一人様4枚まで。複数公演ご希望の方は1通のメールで結構です。(例:札幌2枚、東京1枚)
受付け後2日以内にチケットご購入の詳細をメールにてご連絡しますので、迷惑メールフィルターなど設定の方は上記アドレスからのメールが受信出来ますよう、設定の変更をお願い致します。
なお申込み数が定員に達し次第、受付けは終了させていただきますのでご了承下さい。

50歳を迎えさらに転がり続ける古市コータローのあらたなチャレンジ、ぜひお見逃しなく!
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ここからは余談だが、昨年末から雑談の延長としてソロライヴもいいねと話していた。そして今年春のアナログモンキーズLiveの打上げのとき、信ちゃん(浅田信一)はじめ仲間から背中を押され、あの北上ライヴの大成功を経て一気に現実のものとなったのである。

先日、僕が仲井戸CHABO麗市さんと北海道〜東北とツアーした道中でチャボさんが「コータロー君は元気?」というので、実は…とソロツアーの話をしたところ「それは決心いっただろうなぁ。これまでやったことないんでしょ?すごい!でも彼にとっては今後のことも含めてイイことだと思うよ。聞きたいなぁ。応援してるからと伝えといて!」と言われた。
とてもほっこりしたし、コータローが多くのミュージシャンから注目されていることを証明する裏話ではないか。

ソロツアーを唆したものの、本来はギタリストであるコータローがこれまでやったことのないソロでの弾き語り、しかもツアーともなると、どんな心境かと思うのも事実だ。

しかしそれでも「いまここでソロに挑戦して壁を超えてみるってのも、なんか意味があると思うんだよね」とサラリとこのツアーを決断した古市コータロー、全面的に協力したいと思わせる男らしく潔い説得力であった。

そして彼が最近また飲んでいるという古いウイスキーのように、なんともいえない絶妙な味わいのあるブルースが各地で繰り広げられることを、今から想像してニヤけているところである。
by higehiro415 | 2014-08-05 09:43 | 告知 | Comments(2)

Sweet Road To Youth

THE COLLECTORS
古市コータロー50歳バースデーライヴ in 北上
2014年5月10日(土)

「北上の地にこのメンツが集まってくれて、こうして一緒に飲めていることがすごい幸せだし、今日のライヴでようやく自分に落とし前をつけることができました。皆さん本当にありがとうございました!」
コータローが打上げのシメで発した言葉を聞き、感無量になった。
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彼にとって因縁の地である岩手・北上でライヴを開催したということ以上に、そこに友人やスタッフや仲間から多くの協力や応援があり、さらには全国から集まってくれた沢山のファンに見守られドラマが結実したことにこそ、とても大きな意義があったのだと思う。
こんなにも周囲に愛されているバンドやギタリストは、そうそういない。

今回のライヴの意味は昨年9月にこのブログに書いたので省略するが、5/10のコータロー凱旋ライヴは単なるバースデーライヴではなく、30年以上前からの点を線でつなぎ合わせ未来へ向かわせるという、壮大なロマンが詰まったものだったのだ。
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昨年の春、ツアーの途中でコータローと2人北上に立ち寄り、さくらホールを下見して「ここでやろう!半分くらい集客できればいけるよ!」と話し合った日から412日、超満員の観客の皆さんと一緒に見届けることができて、ほんと素直に嬉しい。

このライヴの裏方は、いつもの東京スタッフに加え僕の大切なブレーンでもある仙台・盛岡のスタッフ合同の最強メンバーで臨んだのだが、これも大成功のひとつのポイントだった。仕事の実力(クオリティー)だけではなく、スタッフ間の信頼関係も大きく物を言ったからだ。

いくつかのサプライズに関してだが、バースデーケーキは北上の洋菓子店アンデルセンの職人Tさんに頼み作ってもらったもので、信ちゃん(浅田信一氏)にステージに持ってきてもらえない?と相談したところ「それ断れるわけないじゃないですか(笑)」と快く引き受けてくれた。
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入場時に皆さんに配り、サプライズ時に満開の桜のように会場を彩ったピンク色のケミカルライトは、ファン有志の方々の気持ちとアイディアと準備と提供だ。

受付でそれを配布してくれたのは以前僕のブログを読んで「自分の地元岩手での記念すべきライヴ、手伝えることがあれば何でもやるので言って下さい!」と連絡をくれた人たちと、コレクターズをリスペクトする仙台のTheシミー(The黄昏カラアズ)。
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コータロー高校時代の山本先生は、事務所であるWonder Girlに、先生と一緒にライヴに来る予定だという方(コータローの先輩)から連絡があり、対面が実現した。

加藤クン、コータロー共に24年振りの再会となった伝説の初代ベーシスト・チョーキーは、岩手のコレクターズファン345号くん(彼のブログで北上ライヴのことが感動的に描かれている! http://collector345.blog63.fc2.com/ )がいろいろと動いてくれた。
おれも会いたいし、せっかくだから一緒に演奏もしたらどうだろう?チョーキー用のベースは持ってくから!と言ってくれたのは、加藤クンである。

僕はただこれらを実現させるために提案したり交渉したり調整したりしただけで、最初から用意されていたかのような絶妙なタイミングと、各方面の方々の尽力と理解が、あのスペシャルなサプライズコーナーを演出したのである。
特に主催のVintage Rock若林氏、事務所のWonder Girl松本氏には色々とわがままを聞いていただき大感謝。

さくらホールの職員K君も開催が決まってから、せっかく来てくれるのだからといろいろ宣伝をしてくれていたりして、多くの人の(もちろんファンのみんなも含めた)それぞれの熱い想いが、あの日のドラマを生み出したのだと思う。
細かい全貌を知っていたのは、僕と当日の段取りを相談していた舞台監督の山品さんだけだったので、誰かに言ってしまいたくなるのを堪えるのが一番大変だった(笑)。


5/9(金)
朝イチで明日の開場時のBGMを選曲したあと、手持ちのマイクとファン有志から送られてきたケミカルライトの入った段ボールを積み込んで、仙台から北上まで車を走らせる。
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雲が厚く途中で雨もポツポツきたが、まったく気にならない。明日のことが(まずは今日なのだが)楽しみすぎて、天気のことなど心配する暇もなくあっという間に北上に到着した。
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空がまた明るくなった12時半過ぎ、コータローと松本社長が駅の改札から出てきて合流。
「佐藤クン、ついにきちゃったねぇ〜この日が。明日は天気良さそうだから安心したよ。」
渡哲也ばりのサングラスをしたコータローは、なんだかとても嬉しそうな表情だ。
まずは腹ごしらえをしようということで、懐かしのスパゲッティーを求めてJUMPへ移動。3人でミートソースをキメる。
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今日はコータロー思い出の場所を巡る日だ。
当時住んでいたというボロアパートをあちこち探し歩いたり、飲み屋街やアーケードがなくなってしまった商店街、高校にも行った。
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北上展勝地では「マイナスイオンがすごい。リフレッシュするなぁ〜」などと、風に揺れる新緑やキラキラと反射する川、遠くの山々を眺めたりした。
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夕方の岩手日報の取材の前に、一旦ホテルに戻りロビーでひと休み。
コータローが「ちょっと電話してくる」と席を外した隙に、僕はすかさずフロントに尋ねた。「古市宛てに何か届いていませんか?」
まだ届いていないようだった。
やっぱりそんなに上手くはいかないよなぁ〜とがっかりする自分に言い聞かせる。「いや。ここまできたのだから、近い将来必ず会える日が来るはずだ。サプライズは明日もあるのだから欲張るな!」

そろそろ新聞の取材に出掛けなければと時計を見た時、綺麗なフラワーアレンジメントを持った花屋さんらしき人が入ってきてフロントに花を置いた。
僕は咄嗟にフロントへ近寄り「もしかして古市宛てですか?」と尋ねると同時に、添えられた封筒が目に入った。古市耕太郎様と書かれていた。

フロントでその花を受け取りロビーのテーブルに置く。胸が高鳴る。
そこに電話を終えたコータローが戻ってきた。
「コータロー。なんか花が届いたみたいだよ。」
「え?楽屋じゃなくホテルに花が届くなんて初めてだよ。」
添えられた封筒をあけ中のメッセージカードを読んでいる。
「佐藤クン!これ、田園のママ?」
彼が北上時代一番の思い出と語る、喫茶「田園」のママから花が届けられたのだ。
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Podcastで「カプチーノ、よろしく!」と宿題を出された気分になり(笑)、こりゃ何とかしたいなと本格的に捜索に動き出した。どこにいるのかも生きているのかもわからなかった。
岩手の知人数人に情報提供を呼びかけ、北上にいる親戚には店の跡地周辺の聞き込みをしてもらう。

4月後半、まだ物件を手放してはいないようだが、だいぶ前に店を閉め娘さんがいる仙台に引っ越したとの情報をつかんだ。そういえば、デビューしてから一度だけ娘さんから手紙をもらったことがあり、仙台にいるらしいとコータローから聞いたことがあった。ただそれは20年以上前のことだ。
北上にいるなら人口も少ないしどこかでつながるかもと期待していたが、仙台となると逆に難しいと思いながら、自分が住む街にいるなんて何か縁があるのかもしれないとも感じる。

親戚の必死の聞き込み調査により、ママの旦那さんが以前務めていた北上の職場が判明した。ダメモトで引越し先の住所を聞き出そうと試みたが、もちろん教えてはもらえなかった。ただ対応してくれた方がとても親切で、代理で電話をかけてくれたのである。

偶然にもママらしき人が出たらしく事情を説明したようだが、だいぶ歳もとり昔のことはあまり憶えてないとのことだった。
本当に惚けてしまったのか、それとも怪しいと思われたのか、とにかくここで捜索は断念せざるを得なくなる。

4月末、アラバキ出演のため前乗りしたコータローと飲んだ時に、そのことを正直に話した。サプライズは無理になってしまったからだ。
「驚かせようと思ってたんだけど、ここまでしか出来なくてゴメン」と言うと、「そこまでわかれば十分だよ。ありがとう!そっかぁ。生きてたかぁ。」と慰められた。

人事を尽くして天命を待つ。その言葉が僕の頭を支配する。
やれることだけはやっておこうと手紙を出すことにした。住所がわからないので、先日電話をしてくれた人に頼んで郵送してもらった。

手紙には、勝手な捜索のお詫び、探している経緯と僕の気持ち、そしてコータローの生い立ちと現在、「田園」が彼の青春の1ページにいかに深く刻まれているかということを綴った。娘さんにも読んでもらえればと微かな望みを賭け、娘さんから連絡が来たこともあったらしいと付け加えた。
これでダメなら後悔はない。

それから数日して知らない番号から携帯が鳴った。ピンときた。
声を聞き、向こうが名乗る前に僕は言った。「××さんですよね?」
どうして自分の名前を知っているのかと驚いていたので、コータローから聞いていたと伝えると、さらに驚いた。「私の名前まで憶えていてくれているんですか?」
田園の娘さんからの電話だった。ついに見つけた!

話を聞くと、訳あってちょうどその日は北上に行っていたらしく、仙台に戻ってきたら僕からの手紙が届いていたので、すごくびっくりしたとのことだった。
それもそのはず、店の中に置きっぱなしだった荷物を片付けに行っていたようで、そこでロックのレコードが出てきて「これ、たぶんコータローさんが置いていったやつだなぁ」と眺めていたら、ママが「それって学生服着てうちに来てた背の高い子!?」と思い出したというのである。
そんなことがありつつ仙台に戻ると、偶然にも僕からの手紙が届いていたと言う訳だ。

こんなことってあるのかいな?と僕も驚いた。
さらには、コータローが田園のことを今もそんな風に思ってくれていることに感動し、もしかしたら辛い高校時代を過ごし北上のことが好きじゃないかもしれないから、今度北上に来る時は「おかえり!」と温かく迎えてやれるようにしたいと言うのだ。

この話を聞きサプライズなど関係なく、その言葉を直接コータローに伝えてはくれないかとお願いしてみた。すると、ライヴには行けないが、何かメッセージは送れるよう母と考えてみますとのことで、宿泊先のホテルを教えて電話を切った。

先方のニュアンスから、話題になるようなことは避けたいし、純粋な気持ちの問題だということが伝わってきたので、ここに書くことは相当ためらったのだが、強い想いや真心は、通じるばかりか奇跡的なことを起こす場合もあるという証拠として、紹介させてもらうことにした。

話をはしょるとドラマが成り立たないので長くなってしまったが、このあと僕は娘さんに花が届いた御礼の電話を入れ、そのまま隣にいたコータローに代わった。
ついにコータローは娘さんとママさんと、電話越しだが直接言葉を交わしたのである。
なんとなくその場にいないほうがいいかなと思い席を外したので、何を話したかはわからない。いつか本人の口から語られるのを待とう。


夜には前乗りのスタッフもホテルに到着し、ホテル近所の居酒屋で焼酎のボトルを3本も空けてしまった。シメはコータローおすすめの知床ラーメンへ。
楽しい前祝いになった。
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5/10(土)
いよいよ当日を迎えた。天気はこれから良くなってくるらしい。
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僕らPA(音響)、照明、舞台、楽器スタッフは9時に会館に集合である。ホールは一からすべてを仕込むので、時間がかかるのだ。
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今日のミッションは昨日までの運転手や探偵ではなく(笑)、本業のPAである。機材は仙台でいつもお世話になっているところから持ってきてもらった。モニター(ステージ上のメンバー用PA)は普段はメインPAをやっている山本さんが東京から来てくれている。鬼に金棒だ。
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舞監の山品さんがステージにパンチカーペットを貼っている間に、照明チームはバトンを下ろしライトを吊り込む。僕らPAチームはステージ側と客席側に分かれ機材を運び準備していく。ローディーの秦くんは楽器を少しずつセットする。
ガランとしたホールが、だんだんとライヴ会場の様相を呈してくる時間はワクワクする。
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昼前くらいにPA機材はセットが完了し、メインスピーカーから音を出しホールの響きをチェック。今日のリファレンス(チェックのためかける曲)はG.LoveのAin’t That Rightだ。
客席すべてを歩き回り聴こえ方を確認する。思ったよりデッド(反響が少ない)で客席中央あたりに低音が少したまる以外は、どの位置もナチュラルに聴こえるので安心する。
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昼の弁当を食べ照明シュート(バトンに吊られたライトひとつひとつの当たる位置を調整)の時間を利用し、サプライズの段取り確認。本番中僕は動けないので、山品さんとVintage Rock若林さんに流れを説明しすべてを託す。

メンバー入りよりだいぶ早く、前乗りしていたコータローが会場にイン。ステージに上がり客席を眺めている。きっと夜のことを想像しているに違いない。
近寄り話しかけてみる。
「いい感じのホールだよね。やっぱり。」
「うん。いいねぇ〜」
「ここに満員のお客さんでしょ。いいライヴになりそうだね。」
「そうなんだけどさ。自分でも想像つかないんだよね。どんな感じになるか。」
それはライヴがどうこうというよりも、どんな気持ちになるのかがわからないということで、やはり彼も平常心ではいられないのだなと察する。

当日移動でやってきた他のメンバーも会場に到着したころ、ステージ上は各楽器のチェックだ。
JEFFのベースの音に触れるのは初めてなので、山本さんと秦クンに音の感じを聞き取り調査。小里クンとはだいぶ音質が違うとわかった。アラバキのときコータローから「ポップなニュアンスが出てるベースで、すごくいいよ!」と聞いていたので、僕なりにイメージを膨らませる。

メンバーのいない隙に、加藤クンが持ってきてくれたチョーキー用のベースもチェック。秦クンが「このベースがあるのコータローさんに見つかっちゃって。JEFFさんが試してみたいということにしておきました。」と苦笑い。

14時半からサウンドチェック、続いてリハが始まった。確かにベースの音は聴き慣れていたものとは違うが、まったく違和感はなくむしろ新鮮だ。
これまで自分なりに構築してきたコレクターズのライヴサウンドを修正する。特にQちゃんのドラムとJEFFのベースの関係性。どこら辺に定位させ、全体のバランスをどうするのか。

とにかく集まった皆さんにこのライヴをより楽しんでもらうために、迫力ある音とかクリアな音とかではなく(もちろんそれらを加味したうえで)、温かくて心の襞(ひだ)まで見えるような音にしたいと努めた。
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この日は加藤クンのボーカルマイクを、いつもと違うものにしてみた。コータローのボーカルマイクは3月のアナログモンキーズで試して本人が好きと言っていた、持ち込みのテルフンケンM80oak、通称こけしマイク(笑)。ギターアンプには贅沢に3本のマイクを立てた。
久しぶりのホールワンマンということで、いつもより念入りにリハーサルする。いい感じではないか。バンドサウンドに関しては何の問題もない。
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リハが終わり僕はロビーへと急ぐ。サプライズで配るライトを、企画してくれた有志のみんなが袋詰めしてくれ、それを配布チームへ引き継ぐ。
まわりには沢山のファンの人がすでに集まっていて、気分も盛り上がってくる。

各セクションの最終チェックも終わり、いよいよ開場時間だ。
この日のBGMはZombiesやStones、McCoysなどに加え、Ann PeeblesやCilla Black、Martha & The Vandellasなど黒人ものを取り混ぜ、ライヴタイトルでもあるSweet Road To Youthをテーマに選んでみた。それにしても素敵なタイトルだ。

客席の様子は、やはりいつもとは違っていた。どこかそわそわしているというか、これまで体験したことのない、未知の世界に引きずり込まれるような感覚だったのではないだろうか。
東京から信ちゃん、達ちゃん、コージも到着し客席に案内する。

楽屋に行くとコータローが廊下をウロウロしていた。
「あれ。もしかして緊張?(笑)」
「いや緊張っていうよりさ、なんかフワフワしてるっていうか、変な感じだよ。」
僕もそうだったし、客席も同じ。今日は特別な夜になるということを予感させる。


開演時間になりメンバーがステージに登場すると、割れんばかりの声援と拍手がホール全体に鳴り響く。ついに伝説の幕は切って落された。

NICK!〜から始まる今回のセットリストは、4月のうちにコータローから送られてきていたが、3日前に本編ラストがNever Mindに変更された。
まだ東京での追加公演が残っているので詳しくは割愛するが、新旧・緩急織り交ぜたベストな内容で、個人的には好きな並びだ。

僕のすぐ後ろには信ちゃんが立っていた。関係者席に座ったら?と言ったが「ヒロさんの仕事ぶり見学しますよ」とニヤニヤしている。なんともやりづらい(笑)。
1曲目の途中で「もうちょっとだけギターのエッジを立てたらいいんじゃないすか?」と言うのでEQ(イコライザー)をいじると、親指を立ててうなずいた。確かにこのほうが聴こえ方がいい。さすが名サウンドプロデューサーだ。

ライヴ本編については、正直うまく言葉にできない。最初から胸が熱くなり、僕も冷静ではいられなかったのだ。
演奏はいつだっていいのだが、それを軽々と飛び越える表現力や一体感。演奏や歌の細かな部分には、過去から現在へとバンドが(それぞれのメンバーが)転がり続けてきた歴史の重みが見え隠れする。
そしてそれが未来へと続いていくのだと確信させられる強靭な音の塊が、恍惚感を伴ったグルーヴとなって放出されていた。
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チョーキーのサプライズ登場については、相当悩んだ。
喧嘩別れではなかったにせよ、24年間も音信不通だった昔のメンバーに会って嬉しいのかどうかわからなかった。
奇しくも小里クンが脱退したばかりで、メンバーも様々な葛藤があることは想像できたし、ただ懐かしむだけなら楽屋で会えばいいのではとも考えた。

それでもコータローが若かりし自分に落とし前をつけるように、加藤クンやバンド自身、さらに今は岩手でまったく別の生活を送っているチョーキーも、各々が落とし前をつけるにはここしかないと判断し、加藤クンに提案した。
はじめ驚いて戸惑いを見せた加藤クンだが、すぐに賛同してくれたのだ。きっと会いたかったのだろうし、いろいろ考えてくれたのだろう。

チョーキーがベースを弾いたToo Much Romanticは、とても美しかった。
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「バンドはいろいろあるよ。でもね。最高だ・・・」
コータローの涙も加藤クンの涙も、とてもよく理解できた。グッときてしまった。
ずっとそばにいたわけではないが、僕も彼らを見続けてきたし年齢も近く性格も理解している。
まさに加藤クンがFacebookに綴った言葉にその理由が集約されている。

打上げで「佐藤クンにカッコ悪いとこ見せちゃったなぁ〜」と言っていたが、決してそんなことはなく、むしろいつもは軽口や皮肉でごまかしている加藤クン本来の優しさや純粋さが滲み出てて、めちゃくちゃカッコよかった。
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この北上でのコータロー・バースデーライヴは、彼の人生を一度精算すると同時に、図らずもザ・コレクターズのメンバー脱退の不安を完全に払拭し、あらたな歴史の幕開けになったのではないだろうか。そう強く思わせてくれる、感動的で素晴らしいライヴだった。
奇跡は偶然が起こすのではなく、それまでの頑張りや信念や想いが引き寄せるのだとも思った。

終演後は予定通りコータローが来場者1人1人に記念ピックを手渡しする。これも粋な計らいだ。感謝を表すにはこれが一番いい方法だと考えたのだろう。

ファンの方々から「コレクターズを好きでいてよかった!」という声をたくさん聞いた。
バンドにとって、これに勝る褒め言葉はないのではないか。
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打上げは居酒屋の大広間で。30人以上はいたであろう。
その中で東北に住んでいるのは僕と山品カントクだけ(仙台のPAチーム、盛岡の照明チームは帰ったので)という、不思議な光景だった。
お客さんと同じように全国から集まった仕事仲間や友人、沖縄のHさんやアンヌ隊員まで。ここでもまたザ・コレクターズ(そして古市コータロー)の愛され具合を思い知らされた。

途中コータローと僕は、先述の345号くんが近くで開催していたアフターパーティーに顔を出すためこっそり抜け出した。今回いろいろ動いてもらった御礼に僕は必ず顔を出すと決めていたが、コータローもそれを知って「おれも行くよ!」と言ってくれたのだ。

繁華街を歩きながら話す。
「佐藤クン。今日のライヴは最高だったよ。まぁ演奏は間違っちゃったけどさ。それも関係ないほど完璧だった!サプライズも先生はもしや?と予想してたけどさ、信ちゃんが出てきてびっくりして、ライトも綺麗だったねぇ。でもチョーキーには参った。想像もつかなかったよ。」
店に着くと15人程とチョーキーが飲んでいた。ほんの少しだけだったがみんなと乾杯できたし、コータローは嬉しそうにチョーキーと話していた。

10分ほどで打上げに戻り、盛り上がってお開き。二次会は連日の知床ラーメンへ。
ラーメンをすする一緒に行った連中をニンマリと見ながら「いいだろ。ここ!」と自分の店でもないのに自慢げに微笑むコータローであった。

ホテルまで戻りせっかくだからと写真を撮った。少年時代に戻ったようなコータローの表情がこの日の大成功を象徴しているではないか。
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5/11(日)
昨日から雑誌の密着取材が入っていたようで、この日も運転手で北上を巡る。
展勝地でカメラマンに質問された。
「佐藤さんって、PAですよね?どうしてサプライズや運転手までやってるんですか?」
それは登山をする人に「なぜ山に登るのですか?」と訊くのと同じで、「そこにコレクターズがいて、そして古市コータローがいるから。」と答えるしかない(笑)。

彼らが愛される理由はなんだろう?と考える。もちろん音楽や人間的魅力なのだが、それだけではない。
彼らはいろいろな人からの好意を自分たちのためだけに利用などせずに、きちんと音楽やファンに還元している。要するに循環しているのだ。みんなが気分がよくなる。

松本社長と話す。コータローの顔が昨日までと全然違うねと。
ホッとしたのか満足感か、確かに表情がやわらかい。

夕方、駅まで送り握手をして別れた。
これで北上でのドラマは終わりだ。一抹の寂しさはあるが、とてつもない充実感と、この夏にスタートするツアー、リリースするニューアルバムがさらに楽しみになる。

THE COLLECTORS...日本の至宝であるバンドのあらたな旅が、また始まった。


追伸
このブログを書きはじめた昨夜、こんなメールが届いた。

北上お疲れさまでした。
いやー、よかった!やった!ね〜(^▽^)
古市コータロー
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by higehiro415 | 2014-05-13 18:08 | 音楽 | Comments(6)