また、ひとつ。
2010年 05月 27日
20年以上も通い続けていた洋食屋(ハンバーグが絶品!)が、閉店してしまったのだ。
しかも前触れもなく突然に。
この前、近所の若奥さんが発見し「店、なくなってたよ!」と教えてくれた。
たまに皿洗いのお手伝いさんがいたこともあったが、基本的には優しい笑顔のオヤジさん(シェフ)が1人で店を切り盛りしていた。
息子らしき人や弟子らしき人がキッチンにいたことはなかったので、オヤジさんが病気でもしたら店とこの味はどうなるんだろう?と幾度も考えた。
考えたけれどもそんな込み入った話などしたこともなく、まだまだ先のことだと高を括っていたのである。
自分に何かが出来たわけでもないだろう。
長年通ったけれども、天気の話や店内のTVで流れるニュースについて「ひどいねぇ〜」などど軽めの会話を交わす程度であった。
慣れっこい僕にしては珍しいことではあるが、べらべらと客に話しかけることもなく、微笑みながら丁寧にハンバーグをこねる姿は美しかったし、それをぼんやり見ているのが好きだったのだ。
BGMなどなくても許せる唯一の店でもあった。
U字型のカウンターのみで8人も入れば満席。
改装した様子はなく店内は古くさいままだったし、男手ひとりの店なので飾り気などほとんどない。
それでも、いつ見ても清潔なキッチンはどんな装飾よりも店の雰囲気を明るくしていた。
そして何より、柔らかめのシンプルなハンバーグが、めちゃめちゃ美味かった。
今その場所には「空店舗。入居募集」の張り紙だけなので、いったいどういう理由で店を閉めてしまったのか知る由もない。
知ったところで、あの味はもう味わえないのだ。
いずれ訊こうと思ってはいたが、思い切ってレシピを教えてもらえば良かった。
父の時も痛感したが、いずれ…と思ったら、いま行動に移すべきなのである。
「この味に出会えて、僕の人生の幸せが増えました!」とオヤジさんにちゃんと伝えればよかった。
きっと「そう?ありがとう。」と軽く会釈して、小さな目をさらに細めて微笑んでくれたに違いない。
love & lost.