転がる石のように。
2010年 08月 08日
朝が来て夜が来て、また朝がくるように。
雨の日もあれば晴れの日もあり、曇りや嵐の日もある。
それでも進んでいかなければ見えないものがあるし、得られないものもあるのだ。
なかなかその気になれなかったが、ようやく書けそうだ。
まるで悪友との浮かれた修学旅行のような、あの音楽の旅についてである。
3人で車に乗って全国を巡った日々は、笑いあり涙あり、それはそれは永遠に忘れることが出来ない素敵な思い出として、心の中に真空パックされている。
SMILE 15th が終わったこと。
いや終わったというよりは通り過ぎたと言うべきか。
15th は終わったけれど、すべてが終わったわけじゃないから。
感覚としては、長い夏休みが終わったなぁ…という感じに似ているかもしれない。
たまにしか会えない従兄弟(友達でも恋人でもいいが)が夏休みの間だけ帰ってきていて、毎日一緒に遊んでいたのに、休みの終わりとともに遠くへ戻ってしまう。
わかってはいるものの、どこか寂しくて甘酸っぱく切ない、何とも言えない想いだ。
20年来の付き合いである古市コータロー(コレクターズ)から、ずいぶん前に話しは聞いていた。
SMILEといういいバンドがあり、そこの浅田くんってのがいい曲書いていい歌うたう、と。
さっそくアルバムを聴いた。他の若手バンドとは明らかに違っていて、駄曲がなかった。
ちょっと聴いただけで、どの曲もメロディーがくっきりと浮かび上がってきたし、とてもバランス感覚に長けたバンドだなぁ〜と思ったのを憶えている。
以前、仙台のエフエムの番組で信ちゃんがマンスリーレギュラーだった時もあった。
しかし、何故か出会わずに何年もの月日が過ぎていた。
どうして今まで接点はありながら交わらなかったのか?
もしお互いかなり尖ってたであろう若い頃だったら、素直に近づけなかったかも知れない…と思うと、今で良かったのだと納得する。
必然とはそういうものだ。
どこでどう化学反応が起きたのかわからないが、今や僕にとっての大切な友人であり、とても尊敬するミュージシャンでもある。
これはまだ誰にも言ったことはないのだが、浅森坂というユニットで信ちゃんに初めて会った時から感じていたことがある。
僕が音楽的に信頼する2人のミュージシャンに、顔付きが似てるってことだ。
いや似てるって表現は、ちょっと違うなぁ。
1人はルースターズの大江慎也、もう1人はオリジナルラヴの田島貴男。
見比べると似てるはずがないのだけれど、ライヴ中のふとした折に醸し出す表情というか、面影がダブる時がある。
それは単純にパーツが似てるとかいう話ではなく、才能ある人の顔っていうか…うまく言えないけれど、何か同じ匂いがするのだ。
達ちゃんとは、今回のツアー初日の横浜で初めて話した。
打ち上げの時、まわりの人にはガツガツ絡むのに、僕にはぎこちなかった。
しかしツアーが始まり朝から晩まで一緒にいるようになると、一気に打ち解けた。
「ヒロ兄がそんなにくだけたバカな人だとは思わなかったよ。厳しくて怖い人だと思ってた」と、確か大阪のライヴ後の打ち上げで言った。
嬉しい告白だった。
ツアー中の達ちゃんと僕の会話の95%はくだらないものだったが、京都の夜だけは違った。
お互いの生い立ちとか人生観に触れる話をした。
彼の天性とも思える調子の良さは、実は自分の何かを守るために、だんだんと身につけたものではないか?と思うようになった。真相はわからないけれど。
日常でもステージでもくだらない冗談を言って、いつもまわりを和ませるムードメイカー。
能天気なふりをしてるけど、でも本当はとても優しくてナイーヴな面を持った男なのである。
はじめは久しぶりの緊張感と遠慮があったものの、本数をこなすごとにギタープレイも顔の表情も変わってきて、ツアー後半は「SMILEのギタリスト、鈴木達也」として堂々たるパフォーマンスを見せた。
先日のE.SMILE(ファイナル)でのギタープレイも素晴らしかった。
適度にグルーヴし安定感もあったし、エフェクターの音色も良かった。
とても頼もしく見えたなぁ〜。
一平ちゃんは、浜松で僕に声を掛けてくれて少し話したのが最初。
結局、一緒に仕事をする機会はなかったけれど、たぶんすぐに仲良くなれるだろうと思う。
あの飄々とした笑顔とステージ上の姿を見て、そう直感した。
7/23の渋谷QUATTRO。
最初は用意されたVIPエリアで観ていたが、途中からはフロアへ出ていき観た。
溢れかえる観客のみんなと同じ目線で、ライヴを焼き付けたかったから。
ステージの上のメンバーはもちろん、ビートに合わせて揺れる会場全体が眩しかった。
僕なりのライヴレポを書こうと思っていたのだが、それはファンの方々に任せることにしよう。
いま僕らに出来ることは何だろう?と考える。
関われて幸せだったという想いを胸に、それぞれの場所でそれぞれに前に進んで行くことではないだろうか。
いつかまた集まれたときに、今よりもキラキラと輝いていられるように。
そうすることがSMILE 15thに対する感謝の気持ちであるし、メンバーそれぞれへのエールでもあると思う。
そう、僕ら自身の旅が終わった訳じゃない。まだまだ続いてゆくのだ。