佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

実録_Koiwai Rock Fes.2000〜牧場のMods対決

前日のポール・ウェラー・アフター・パーティー『ALL MOD CONS! Sendai』の余韻とこの日の期待感で脳内アドレナリンが出ていたのか、ほぼ眠れずに朝になった。それでも全然苦にならないから不思議だ。

友人を乗せ岩手県小岩井牧場へと車を走らせる。たしか2回目(3回目かも?)のKoiwai Rock Fes.という野外イベントのために。
この年の出演は真心ブラザース、グレイブヴァイン、オリジナルラブ、ムーンライダーズ、ザ・コレクターズ、そしてポール・ウェラー。(だったはず)

ポール・ウェラーのライヴは日本とイギリスで相当数観てきたが、この日は特別な感情があった。
ひとつは地元東北の野外フェスに出演するということ。
そして、もうひとつの理由は何といってもザ・コレクターズとの「牧場(まきば)のMODS対決!」が実現するからだ。

当時の僕はエフエム仙台で「加藤ひさしのビートサレンダー」というラジオ番組を担当していた。(担当というか、強引に企画書を通しやらせてもらっていたのだが…)
当然、加藤くんは「ウェラーにインタビューなんて実現したら最高だよね。佐藤クン、よろしく!w」と盛り上がっていたのは言うまでもない。
しかし事前にウェラー側(招聘元)にインタビューの申請を出したが、当然のように「取材は一切お断り」と返事がきて、夢ははかなく消えたのだった。

牧場のMODS対決!にしてもコレクターズの出番が早くて、ポール・ウェラーの会場入り前にライヴが終わってしまう(加藤くんが当日のMCでもネタにしていたが)という事実がわかり対決にはならなかったのだが、それでも大好きな2組が同じステージに立つというだけで、僕の気分は高揚した。


会場に到着し関係者入口でBack Stage Passを受け取り楽屋へ向かう。仮設ステージの裏側に大きなロッジがあり、その中がテーブルごとに仕切られて各バンドの控室になっていて、すでにコレクターズの4人は到着し、のんびりコーヒーをすすっていた。
昨夜の出来事を簡単に説明した後、ウェラーの楽屋どこ?と加藤くんに訪ねると「VIPはあっちなんだってさ〜」と楽屋ロッジから50mほど離れた先に建てられたプレハブを指差した。
f0210751_174577.jpg

インタビューは難しいが楽屋に挨拶は行けると思うよ!と伝えると「なんか近付いちゃダメみたいなこと言われたよ」と言うではないか。
なに〜!?様子を見ようと外に出てプレハブに向かうと警備のバイト君が立っていて、ここは関係者も立ち入り禁止ですと確かに言う。

急いで本部テントに向かう。取り仕切っていたのは仙台のイベンターで、そこのボスが顔見知りだったので掛け合う。
「昨日ベーシストに会って話をしたら、きょう楽屋に遊びに来いと言われたんですよ。彼らが楽屋入りしたら行っても大丈夫ですよね?」
「いや、悪いけど向こうサイドの希望で、ウェラーの楽屋付近は出演者も出入りNGなんだよね」
「本人が来い!って言ってるのに?」
「ダメなものはダメなんだよねぇ」
「誰の許可取ればいいんですか?」
「ウェラー側の招聘元だけど、事前にNGって言われてるからさ」

頭ごなしの心ない言い方に僕は珍しく熱くなったが、顔見知りであるし今後の付き合いも考えて、それ以上食い下がるのはやめた。
楽屋に戻りメンバーにそれを伝えると「ま、仕方ないね。ウェラーが機嫌悪くなったらまずいしさ」と逆になだめられた。彼らになだめられるとは思いもしなかったが(笑)、とにかく気を取り直してフェスを楽しもうと切り替えた。
f0210751_1744454.jpg

f0210751_1761079.jpg

ザ・コレクターズのステージは素晴らしかった。およそ30分の持ち時間をダイナミックに駆け抜けて、大自然に響き渡ったサウンドは会場にいた多くの観客を釘付けにする。
その後は楽屋で他の出演者と談笑したり、キャッチボールをしたり、外でビールを飲んだり、客席で他のバンドを見たりと、野外フェスならではの醍醐味を味わいながら過ごす。
f0210751_1751437.jpg


遅めのランチを済ませ楽屋ロッジの外で煙草を吸っていると、向こうから大きい観光バスが近付いてくるのが見えた。
イベントスタッフに先導され、大勢の警備スタッフがそのバスを取り囲んでいる。
ポール・ウェラー御一行様が到着したのだ。

続々と出演者やスタッフが見物に出てきて、ちょっとしたパレードの様相だ。
バスはゆっくりと、僕らの50mほど先に停車しようとしていた。
窓を開けこちらに向かって何人かが手を振っているが、ウェラーではない。バンドメンバーとスタッフだろうか?
目を凝らすとウェラーは向こう側の座席にいて、サングラス越しにこちらを眺めている。
本当に来たんだ〜!そんな気持ちだった。

すると窓から身を乗り出し「Hey! Mr. DJ!」と叫ぶ男がいた。今回のツアーサポートベーシスト、エドガー・ジョーンズだった。
僕を見つけて声をかけてくれていた。僕は大きく手を振った。

バスが停車し次々と人が降りてくる。スティーブ・ホワイト(ドラム)もスティーブ・クラドック(ギター)もジョン・ウェラー(父でありマネージャー)もいる。当たり前だが(笑)。
f0210751_179077.jpg

そして遂にポール・ウェラーが降りてきた。こちらに向かってクールに手を挙げ、特設のプレハブ楽屋へと入っていく。
最後のほうに降りてきたエドガーは楽屋へ入らず、少しこちらに歩いてきて僕を手招きする。
驚いて駆け寄ると「昨日は楽しかったぜ。あとで楽屋へ来いよ。ポール紹介するからさ」と間違いなく言った。

昨夜はベロベロに酔っていたくせに、約束を覚えていたことに驚いた。
すぐさま加藤くんとコータローに「楽屋に呼ばれた!」と伝え、連れ立ってウェラーの楽屋へ近付いていくが、またしても警備スタッフが立ちはだかる。
「呼ばれたんだけど」と言うとトランシーバーで責任者らしき誰かに無線連絡を取る。
本部のほうから走ってきたのは、あの顔見知りのイベンターだった。

僕の顔を見るなり(また、お前か?)という曇った表情になり「困るんだよねぇ」と言った。
事情を話そうとしたら「おい!こっち、こっち!」とエドガーが楽屋から僕らを呼んでいるではないか。
僕はイベンターの顔を見る。すると、仕方なさそうな悔しい表情で無言になった。


こうして僕らは誰も近寄れなかったウェラーの楽屋まで行けたのだった。
エドガーが僕をウェラーに紹介する。「こいつが昨日のイカしたDJだよ。俺も持ってないR&Bのレコード持ってやがった。最高だろ?ポール」
ウェラーが握手の手を差し伸べてきて言った。「話はエドガーから聞いたよ。ご機嫌な夜になったみたいだな。R&Bだけか?」

人と話すのにこんなに緊張して言葉が出てこなかったのは、生まれて初めてだった。それでも、しどろもどろになりながら何とか話す。
「いやモータウンもブルーノートも、もちろんレスポンドも好きだけど、貴方のモッドなロックも昔から大好きだ」と答えるのが精一杯で、すぐにコレクターズの2人を紹介した。
※モータウン=M.J.やS.ワンダーが在籍したデトロイトソウルの名門レーベル。ブルーノート=ジャズを代表するレーベル。レスポンド=P.ウェラーが昔作ったレーベル。

2人は準備よく自分たちのCDを手渡しウェラーとの談笑を始めたので、僕は必死でインスタント使い捨てカメラのシャッターを切った。もっといいカメラを持って行けばよかったが後の祭りであった。
f0210751_1772130.jpg

そういえば!
僕は思い出してウェラー本人に切り出した。「あとでインタビュー録っちゃだめ?」
「どんなインタビューだ?」
「そこにいるザ・コレクターズのMr.加藤の質問に答えてもらうだけだよ」
一瞬考える素振りをみせたが、すぐに「いいよ。ただし俺がファッキンなステージをやったらの話だけどな。また後でな」と言ってニヒルに笑った。


日が暮れるころ始まったポール・ウェラーのステージは圧巻だった。
The JAM時代を彷彿とさせるエッジの効いたタイトな演奏で、リハ無しのせいかモニターの聞こえが悪いような素振りを時折見せ雑なプレイではあったが、それを差し引いても単純にカッコ良かった。貫禄が違う。

ステージを終え楽屋に戻ったウェラーとエドガーに声をかけインタビューを録ろうと、僕は念のためと思い持ってきていたデンスケ(簡易レコーダー)と質問表(こちらも万が一のため加藤くんと考えていた)を持って、ウェラーのところへ走った。

すると、また例のイベンターが見張り番よろしく楽屋の前に立っていた。
さすがに悪いなと思い「本人がインタビューOKって言ってましたが」と伝える。
「いや他の取材もNGにしてるから、例外つくると後でクレームとかあるしさ。おれ聞いてないし」

ちょっと待ってて下さい!とウェラーの楽屋へ行き本人に伝える。
「インタビューのOKが出てないと主催者が言うんです」
「そうなのか?じゃそれは次の機会にしよう。ビールが旨い!」
ウェラーは機嫌がすこぶる良かったが、あっさりこうなった。

こんなことならダマテン(黙ったままこっそり)でインタビュー録れば良かったなぁ〜と地団駄を踏んだが、仕方ないと思うことにしよう。
終演後に着替え中の楽屋に入り込み写真まで撮らせてもらったのは、日本人で僕1人だけだったという事実を手土産にすることにした。
f0210751_1781942.jpg


こうしてポール・ウェラーin東北の2日間は、様々なことがありつつ濃密なものとなり、僕の脳裏にくっきりと刻まれることになったのである。

それにしても興奮と緊張のあまり、ウェラーと一緒の写真を撮らなかったことだけは今でも何気に後悔している(笑)。
[PR]
by higehiro415 | 2011-05-25 17:14 | 音楽