佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

ザ・コレクターズ 2012みちのく2days_3.11盛岡篇

前日の余韻とアルコールと、そして支那そばの出汁が程よく残った感じで目が覚めた。
この日はもっと深刻な心境になるのかと自分で思っていたがそれほどでもなく、いつも通りに出発の準備をする。

考えてみればこの1年間、震災のことを忘れたことなどなく事あるごとに複雑な想いに駆られていたのだから、1年目だからと急に特別な感情が芽生えるわけはないのだ。
ただ、あの津波で逝ってしまった昔のバンドメンバーKの一周忌なんだなぁ〜ということと、先日仕事しに行った番組(日テレ:波瀾爆笑)のオンエア日だなぁ〜ということが強く頭に浮かんだ。(TVのオンエア録画を後日見たら、しっかりと自分の姿が映っていて笑ってしまった)

それでもちょっと前までは、もう1年が経つのかぁ〜という感情だったのに、近頃は、まだ1年かぁ〜という感情に変化してはいた。
僕の住む宮城県では9512人が命を落とし未だ1688人が行方不明だし、実際のところ被災した沿岸部は瓦礫こそまとめられ見た目はきれいになったが、新しく建物が建ったり瓦礫の山が処分されたりはほとんどしていない。

人々はだいぶ元気になってきていても、要するに復興などという言葉は被災地へ行けば虚しく響くだけなのが現実である。
だからといって何かを声高に叫ぶつもりもなく、ここ2日間と同じように、楽しみながら心をこめてしっかりと自分の役割(仕事)をこなそうと思っていた。

10時にホテルを出発する予定なので、20分ほど前に車で家を出た。
昨夜降った雪はそれほど積もっておらず、盛岡までの車移動には支障なさそうだ。
小里クンが5分遅れただけで、メンバー全員時間ぴったりにロビーへ集まってきたので、10時10分には盛岡へ向けて出発できた。

僕の運転する自家用車には加藤クンとQちゃんが乗り込んだ。コータローと小里クンは楽器車だ。
3.11の日曜日ということで東北自動車動は交通量が多かったものの、それほど渋滞することなく走ることができた。

車中では昨日の仙台ライヴの話やニューシングルの話などしていたのだが、加藤クンが急に訊いてきた。
「佐藤クンさぁ、津波で車流されただけだよねぇ。親戚の人とか亡くなったりしたの?」
「いや、親戚は全員無事だったよ。バンド時代のメンバーが1人やられただけ」
「そっかぁ。。。」

Qちゃん交え3人でしばし震災関連の話題となる。とはいっても深刻ぶってるわけではなく、あまり報道されなかった出来事などを軽い調子で話したつもりだ。
それでも10分もすればいつもの馬鹿話に戻るので、気が重くなることはなかった。

かっ飛ばしたせいか盛岡へは予定よりも30分ほど早く到着したので、メシを食おうと会場近くの蕎麦屋へ行きトンカツ定食を食べる。楽器車はまだ高速道路だというので抜け駆けしてしまった。

盛岡のCLUB Changeはビルの3Fにあるのだが、搬入が階段なのでちょっと僕のようなおじさんにはキツい。汗をかきながらの搬入だ。
しかし若いスタッフがすごいスピードで運ぶのを手伝ってくれるので、以外に大変な思いはせずに搬入が終わり、セッティングに入ることができた。
f0210751_1002489.jpg

Qちゃんはスネアのミュートを2週類持ってきていて、生音が響く今日の会場だからか念入りに使い分けのチェックを行う。
この日の僕はといえば、いかに生音とスピーカーの音をバランスよく響かせられるかに気を遣いながら、機材をいじくり回す。
今日は早く着いたので余裕を残しリハが終わった。

開場から開演までの30分、緊張と興奮が交錯する好きな時間を味わう。
お客さんがカウンターでアルコールを受け取る姿を見て無性にビールが飲みたくなるが、ライヴ前なのでキリンフリーで我慢した。

昨日と同じように、SEからオープニングナンバーになだれ込む。
動員は仙台より少ないが歓声がやたら大きいと感じた。この日にコレクターズが盛岡でライヴをやっていることを、盛大に祝っているようにも感じる。
またもドライヴ感満載のロックンロールを奏でていく。それに呼応してフロアも更に熱気がみなぎってくる。
f0210751_101204.jpg

そんなライヴ途中のMCタイムで、加藤クンがこう切り出した。
(ここは正確な言い回しではないかもしれないが、ニュアンスで受け取って欲しい)

たまにマジメな話もしようかな。去年の今日、あの大震災があったんだよね。
幸いなことに僕は埼玉の生まれで東京に住んでて、大切な人を失わずに済んだ。
仙台から来ているPAの佐藤クンはバンドメンバーを亡くしたって聞いた。
この辺りでも自分の大切な人を失った人が沢山いると思う。
僕にも子供がいて、メンバーにも家族や子供がいて。
当事者じゃなければ本当の気持ちはわからないのかもしれないけど。
もし僕が病気や事故で死んだら、家族、メンバー、僕の回りのみんなに願うのはただひとつ。
僕がいなくても楽しく生きてって欲しいよ。
きっと亡くなった人たちも、そう思ってるんじゃないかな。
悲しむなとは言わないけど、楽しく生きてけ!って。
だからこんな日に不謹慎なのかもしれないけれど、僕たちはライヴやってます。
もっと楽しんでってね〜!

僕のいるPA席は一番後ろなのでみんなの顔までは見えなかったが、泣いている人がたくさんいることは容易に想像できた。
あの加藤クンがそういうことをライヴで言うとは思わなかったが、あの震災の日、僕に一番早く大大丈夫?とメールをくれたのが加藤クンだったことを思い返した。
そして話した内容がとても加藤クンらしいなぁと、胸が込み上げた。

その後どんどんヒートアップして一体化していく会場内は、熱気というより魂が放出されエネルギーが塊になったような、そんな雰囲気だった。飛び散る汗は音のシャワーのようだ。
コータローのギターが調子悪くなり、チェックのため即興ブルースを演奏するというおまけもあった。
偶然だが僕にとっては、ブルース好きだったあのバンドメンバーKへのレクイエムに聞こえた。
f0210751_1044848.jpg

コレクターズは日本のモッズバンドの頂点のように言われることが多いが(もちろんマインドやファッションはそうだが)その音楽性においては軽々とその枠を飛び越え、ロックという大きなフィールドで堂々と立ちはだかる存在になったのではないか。

それがここ最近の、圧倒的に突き抜けたライヴパフォーマンスになっているように感じる。
アンコール曲が終わっても拍手が鳴り止まなかった盛岡公演。素晴らしかった。
f0210751_1051472.jpg

機材を片付けホテルへチェックイン後、ライヴハウスのスタッフに案内され打ち上げ会場へ向かう。
今日は初めて行く洋風居酒屋だ。

2daysが終わり解放されたのか、いつも以上に話がはずむ。
コータローと小里クンはあのMCの時、どんなこと言っちゃうのかハラハラしたそうだ(笑)。
加藤クンは「おれが変なこと言うわけないじゃん。もっと臭いことも言えるんだろうけど、被災してないおれが言ったって嘘くさいじゃん」

Qちゃんはライヴ後すぐに東京へ戻ったのだが、小里クンに「リーダーのMC良かったね」とメールがきたそうだ。
どのMCだろうねぇ?とみんなで冗談めかした。

業界に怖いものなんてないんですか?という誰かの質問には、どうやったって敵はできるからねぇ。敵は作ったほうがいいんだよ!と笑っていた。

そんな中、鍋奉行をしていたのはコータローと僕である。
鍋奉行というのは皆さんも経験があるだろうが、基本的にそういうのが好きな人が自然とやる羽目になると相場が決まっている。

鍋の具が無くなり、しめのオジヤのためのご飯が運ばれてくる。
みんなは話に夢中だ。
僕はガスコンロに火をつけ汁を温め直した。そして煮立ったところにご飯を投入し始めようとした瞬間、斜め前の席に座っていたコータローが話を続けながらシャカシャカといいリズムで卵を溶き始めた。
ちゃんと鍋の様子を見ていたようだ。気が利く男ではないか(笑)。

旨いラーメン屋が近くにないってことで、二件目はちょっと高級そうなショットバーへ現地スタッフと松本社長とコータローと僕で。
みんなカクテルやらワインやら頼むが、僕はそろそろ濃いやつが飲みたくなっていてマッカラン(シングルモルト・スコッチウイスキー)を頼む。

運ばれてきたグラスを見てコータローが言う。「お、さすがだねぇ。おれもグレンリベット(シングルモルトの代表格)飲みたくなっちゃうなぁ。でも今日はワインでいいか」
余談だがこの2日後の火曜の夜「今飲んでるよ」という短いコメントと共にグレンリベットのボトルの写メが送られてきた。

けっこういい感じに酔っぱらって外へ出ると、だいぶ雪が積もっていた。
現地スタッフが言った。「いつになったら春が来るんすかねぇ〜?」
反応したのはコータローだった。
「いや、東北にも春は確実に近付いてるね。この雪見りゃわかる」
「え〜?ほんとすか?」
「おれ東北はよく知ってんのよ。なめてもらっちゃ困るねぇ〜」


とまぁここでレヴューは終わるはずだったのだが、これを書いているまさに今、そのギタリストから偶然メールがきた。
先日のアナモン仙台公演に関する御礼のような、泣ける内容の素っ気ないメールだった。

酔っているのだろうか?そうであって欲しいと思う。
しらふだったら照れ臭いではないか。

僕はグラスに残っていたジョニ黒を、一気に飲み干した。
[PR]
by higehiro415 | 2012-03-15 10:15 | 音楽