佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
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幹miki『青の軌跡』アルバム解説

先日(7.18)リリースされた幹mikiの2ndアルバム『青の軌跡』の制作にまつわる話を書いてみる。
前作「声」に引き続きサウンドプロデュースを担当させてもらうことになり、今年に入って間もなくアルバムコンセプトと収録曲の選定に取りかかった。

これまで幹ちゃんがライヴで歌ってきた曲の中で人気の高いものと思い入れのあるものを音源化すること、そして以前自主制作で出した何曲か(すでにどれも完売)をニューアレンジで出し直すこと。この2点がポイントだったので、コンセプトはいわゆるセルフカヴァーという形で彼女の現在進行形を聞いてもらおうと決めた。

当初は5〜6曲くらいをバンドアレンジものとピアノ弾き語り的なものに分け、マキシシングルで2枚同時発売にしようと目論んでいた。
しかし選曲をするにつれ収録したい曲が増え、新曲も入れたほうがいいよねとなった時点でシングル2枚の意味が無くなり、アルバムに方向転換したのである。

収録曲は8曲、セルフカヴァー6曲+新曲2曲の構成に落ち着き、何人かのアレンジャーにアレンジをお願いする方向でいくことにした。もっと正確に言えば職業アレンジャーというよりは、ミュージシャンに演奏を含むアレンジをしてもらおうということだ。

幹ちゃん、MIKI MUSIC曽根さん交えそれぞれの曲をどんな感じ(雰囲気や楽器構成など)にするか相談し、大枠が出来た。
あとはどの曲を誰にアレンジしてもらうか最終的に判断し、各アレンジャーと録音方法やミュージシャンや音の感じを詰めながら進めていくこととなる。

結果6組のアレンジャーを起用し、REC方法も曲に合わせバラバラに進行していったので時間も労力も掛かったが、それぞれがクオリティも高くとても個性的な雰囲気を持つものに仕上がった。

アルバムの質感という意味では、何人かのアレンジャーに発注した時点で統一感が少し失われるかもしれないなぁと思ってはいたが、それよりも各楽曲を生まれ変わらせることに主点を置いていたし、前作に収録した「劣性」や「サクラカラー」での音的な実験も難なくクリアした幹ちゃんのボーカルの存在感があれば、何とかなるという自信もあったのは事実だ。

それにアレンジャーそれぞれの個性や音的なことも理解しているつもりだったので、どう転んでも変な方向には行かないこともわかっていたし、イマジネーションを働かせればアルバムの流れや雰囲気もほぼ予測はできた。

各アレンジャーと連絡を取りながら、まずはデモを作り、それに仮歌をあて修正し、本歌を入れミックスへと大まかだがそんな流れで進んでいく。
仙台と東京でパートごとに録音した音声データをやり取りして、音源を作り上げていった。
だから僕の今回の役割はサウンドプロデューサーというよりディレクター的なもので、仙台でのRECとMIXとマスタリング以外は、それぞれのアレンジャーの範疇にお任せした部分も多い。

曲順は当初考えていたものから、音源の感じで少し入れ替えていった。
バラエティーに富んでいようと幹ちゃんの歌声が芯になってようと、やはりアルバムの曲順はトータルイメージとして非常に大切なので相当悩んだが、最終的にはパズルのようにピッタリと組合わさったのでホッとした。

全部の音源が出揃ったころ幹ちゃんから、もう1曲追加したいと連絡がきた。アルバムタイトルと同名曲でシンプルなものだと言う。
プレスを考えるとギリギリだったがタイトル曲ということと内容で、急遽追加し全9曲になったのである。

ちなみにアルバムタイトルも相当議論した。いろいろな意見がある中「軌跡」と決まりかけたが、字面的に新鮮さが無かったのでひとひねりして『青の軌跡』になった。
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幹ちゃんの好きな色で曲の中にも登場する青、その青を幹ちゃん本人に重ねたもので、何ともいえない味のあるジャケットイラスト(前作同様ヒロコちゃんが書いてくれた。素晴らしい!)と相まって、独特の世界観を感じさせてくれるパッケージだ。

今作の聴きどころだが、もちろん名曲揃いなのは言うまでもないが、やはりレンジの広い個性的な(しかも懐かしさと新しさが同居した)アレンジの数々と、それに真っ向勝負を挑む幹ちゃんの圧倒的な歌声と表現力だろう。
それぞれが交錯し共鳴し、過去と未来を行ったり来たりするような感覚に僕は陥る。

自分のGROOVE COUNCILレーベルのリリース第1弾だからというわけじゃなく、1人の音楽好きとしてとても価値のある1枚だと思っている。
そして次作もまた一緒に作れるなら、もっとこうしようというアイディアもすでに浮かんできているところである。


以下は曲ごとのワンポイント解説。

M1.空から降ってきたのはミサイルじゃなかったの
榊原大(元G-CLEF。数々のサポートやTV番組のテーマ曲など手がけるピアニスト&作曲家)氏アレンジのピアノとストリングスによるライヴでも人気のバラード。以前の自主制作盤より更に広がりが出てドラマチックに仕上がった。
東京REC・仙台MIXで室内交響楽をイメージしたサウンドプロダクション。

M2.フィアレス
ライヴではバラード調で歌われていたが佐藤達哉(元リンドバーグ。現aikoツアーバンドのキーボーディスト。宮城県出身)氏の大胆なアレンジでイメチェン。
中盤からのハネたピアノは調律前のスタジオのピアノをホンキートンクで面白いかもと試し録りしたテイクをそのまま採用。
後奏のいろんな音が出たり入ったりする僕のアイディアも含めて、ビートルズを意識したサウンドメイクを施した。
仙台REC。
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M3.電波塔
ビョークのツアーに参加するなどワールドワイドな活動を続けるアコーディオニストcobaによるアレンジ。
イメージとして伝えたアイルランドのストリート感と和風の交錯、異国情緒たっぷりのさすがのアレンジをしてくれた。
歌とピアノは仙台REC、その他をcobaのスタジオで仕上げてもらった。

M4.WHY
最近では杏やタニザワトモフミ、チュール等のプロデュース、自身のバンドcafelonも率いるRickenbackerギタリスト石崎光氏によるアレンジ。
尖った感性の中にも歌ものにこだわる彼らしいエッセンスが詰まった高品質フォークトロニカに仕上げてくれた。歌以外は東京にてREC&MIX。
ヘッドフォンで聴くとよくわかる細かい音の散りばめ方も面白い。
元々は1stシングルとして2007年にリリースした楽曲だが、本人の思い入れもあり新しいアプローチで再録。

M5.盾になる日
前作の「ジェントルライオン」に続き佐藤達哉氏とのピアノ1本による一発録り。
幹ちゃんのおばあちゃんが亡くなったことで曲が生まれ、ライヴで丁寧に歌われてきたバラード。
時には寄り添うように時にはぶつかり合うようにピアノと歌が見事なコントラストを描来出す。
仙台REC&MIX。

M6.ブルーバード
森山公一(オセロケッツ、The Ma’am)氏と毛利泰士(藤井フミヤ、槇原敬之、絢香などを手がけるマニュピレーター&ミュージシャン)氏のコンビによるアレンジ。
現代版コヨーテを合言葉にポップなミニマルミュージックに仕上げてくれた。
僕の細かい意見や要望も取り入れてくれ完成させてくれた、印象的なテーマと高揚感のある展開の新曲。このアルバムのハイライト曲。
歌以外は東京REC&MIX。

M7.ナミダノツルギ
佐藤達哉氏と、ノラ・ジョーンズ的な1曲が欲しいよねと語り合いながらアレンジされた温かい肌触りのミディアムナンバー。
ブラシを使った気持ちいい間のあるドラム、ウッドベースの柔らかな音色、AORちっくな抑制の効いたギターフレーズ、そして優しく美しいピアノ。まさに狙った通りのバンドサウンドに仕上がった。
仙台REC&MIX。

M8.PAIN
越田太郎丸(元Prismatica、葉加瀬太郎他多くのサポートも行うギタリスト)氏のセンシティブなガットギターとのデュエット。
仙台のスタジオに来てもらい歌との一発録りを行い3時間でOKテイクを録った。
以前自主制作盤でリリースした9.11N.Y.同時多発テロの際に作られた曲。
歌に寄り添ったギターが抜群のアプローチを見せる。
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M9.青の軌跡
急遽追加収録(そのため印刷が間に合わずブックレットに歌詞を同梱)されたアルバムタイトル曲。
僕の部屋で歌とキーボードを録ったが、アルバムラストの余韻ということなど考慮し、キーボードトラックをミュートしアカペラで収録。


以上駆け足でアルバムをご紹介したが、とにかく幹ちゃんの歌を円の中心にし、アレンジャー、演奏者、スタジオ、スタッフなどこのアルバムの制作に関わったすべての人々のハーモニーが綺麗に集約されて完成した1枚なのである。

そんな皆さんに感謝をしつつ、1人でも多くの方にこのアルバムを聴いて欲しいと切に願わずにはいられないのだ。
この仙台でこういうアルバムを作れたこと、携わってくれたミュージシャンや関係各位との出会い、影で支え応援してくれた方々、そしてこういうアーティストに巡り会ったことを誇りに思う。


幹オフィシャルHP http://mikimusic.com/
2ndアルバム 青の軌跡(DDCZ-2808)は全国CDショップにて発売中!
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by higehiro415 | 2012-08-04 16:01 | 音楽