The黄昏カラアズ 3rd mini album解説
2012年 08月 10日
とりあえず乾杯するか、とワインのコルクを開ける。まだ日光がさんさんと窓から差し込む午後2時頃だった。
この日は夏に出すミニアルバムに収録する曲の絞り込みとアレンジのミーティングである。
飲みながらというのは不謹慎に見えるかもしれないが、運よく僕らはそんなにアルコールに弱いわけではないので問題ない。それに自分の部屋だし、と言い訳しておこう。
候補曲6曲のうち2曲は収録しようと決めていたので、残り4曲の練習音源とシミーの生歌を聴きながら意見を交わす。
ミニアルバムとはいえトータル感も出したいと思っていたので、曲順を想定し残りの2曲をセレクトし、今作には全4曲を収録することにした。
そして曲ごとにアレンジの方向性を定めるためのプリプロ、レコーダーを回しデモを録っていく。
まずはシミーのアコギと歌を録り、それに基本のリズムパターンをあれこれ考えて打ち込み、ベースとギターを重ねていく作業だ。
楽器を弾くのはすっかりご無沙汰だが、デモ作りの時は口で言うより弾いてしまったほうが早いので、徐々に指先が痛くなるのを我慢しながらベースやギターを重ねていく。
シミーの作る曲はその日本語やメロディーは和風なのに、雰囲気は彼が好きな(もちろん僕も好きな)60~70年代の洋楽の匂いがする。
かつてRCやBo Gumbosそうだったように、そこが僕は気に入っているのだが、アレンジしきれていないというかアイディアがまとめきれてないというか、これまでそんな印象があったので、今作はアレンジから一緒にやることにしていた。
僕なりの考えだがサウンドは洋楽的なアプローチにしたいと思っていた。そのほうが曲の良さも活きるし、バンドのカラーもより個性的になると感じていたからである。
シミーも同感だというので、これまでの彼らには無かった感じのアレンジとグルーヴを取り入れながら原型を作っていった。
割とすんなり出来た曲もあれば、悩みに悩んで冒険した曲もある。
とはいえ演奏はバンドメンバー自身がやるのだし、あくまで原型作りだけして(もしくはヒントを出して)後はリハで自分たちのアイディアでまとめてもらうことにする。
そしてもう1つ今回のレコーディングで決めていたことがある。ゲストは入れない方向で、自分たちだけの演奏で曲をまとめるということだ。
前作「yes,スバラシき世界」では3曲で高木克(ソウルフラワーユニオン)にギターを弾いてもらい、西山小雨(雨先案内人)には数曲オルガンを弾いてもらった。
おかげで素晴らしい彩りを添えることが出来たが、反面ライヴでうまいこと表現出来ないという問題も少なからずあったのだ。
ロックバンドである以上ライヴでいい演奏してナンボという思いが僕にはあり、だからこそ今作は自分たちでやりきって欲しいと願っていた。
まずは4人だけである程度完成されていて、その上で他の音を考えるのが彼らのためにもなるだろう。
音に関しても、録音前から僕なりの明確な方向性があった。
Big Beat!こそが今作のThe黄昏カラアズにピッタリだと感じていた。
アナログレコードのような温かさとダイナミックなグルーヴを感じさせる音作り。クリアーだけれどもモコモコ感も同居したような、そんな音に仕上げたいと思っていた。
まぁそんな感じでデモを元にリハを重ね、レコーディングに挑んだのである。
そしてアートワークは写真を使ったハッピーで恰好イイものにしようと決め、シミーのアイディアとSatokaのセンスいいデザインで素敵なものに仕上がった。
レコーディングは4月末に3日間。リズム録り2日とギター&ボーカルを1日。
メンバーのスケジュールもあったが、前回の経験から彼らの場合は時間をかければいいというものでもないとわかっていたからだ。
もちろん経費を抑えるという意図もあるが、集中して演奏したものをギュッと凝縮したかった。

結局録り直しやコーラス入れや他の楽器を重ねるのにあと数日かかったが、延べ一週間弱でRECは終わった。
短い時間でみんな頑張ってくれ、いいテイクが録れた。

あとは延々と孤独なミックス作業を行い、マスタリングをして音源は完成。曲順もドラマ性があっていい感じだ。
こうしてめでたく昨日、このCDが全国リリースになったのである。
このミニアルバムはバンドと二人三脚で作ったものだし、彼らの成長もすごく感じる思い入れの強いものだ。
まだまだ荒削りではあるが、彼ららしいキンキーさとハッピーさで満ちあふれた、ピースフルなメッセージを持った1枚。
彼らの情熱が詰まった自信作だけに、1人でも多くの人の耳に届けばいいなぁと願っている。
The黄昏カラアズ
3rd Mini Album『JESTER GOGO HORIZON』
2012.8.8 全国リリース(GROOVE COUNCIL/DDCZ-18814)

M1「ピエロは地平線へ」
ストレートでポップなアルバムのタイトルナンバー。歌詞のメロへの乗せ方もいい。
4拍のスネアと跳ねたベースラインはMOTOWNビートを下敷きにしたもので、ギターの絡みとメロディアスなBメロのリフはUKロックのエッセンスを詰めた。
シンプルなバンドのみの楽器編成でも良かったが、音の隙間にどうしてもキラキラした感じを入れたくて、急遽ピアノとオルガンを追加。弾いてくれたのは盟友の佐藤達哉氏(リンドバーグ、aiko、ハウンドドッグ、坂本サトル等のキーボーディスト)。ストーンズっぽいアドリブでのピアノプレイは抜群のグルーヴを演出してくれた。
後半のコーラスにはメンバーの飲み仲間(笑)も参加してくれ、よりハッピーに仕上がった。
先行PV: http://www.youtube.com/watch?v=p_bIlMZw-tw&feature=youtu.be
M2「ジェムソン・ラヴ」
こちらもポップなロックチューンだがイントロと間奏に変化を付け、4ビートと8ビートを混合させたアレンジ。
タイトなスネアと絡みつくようなスライドギターが印象的で、音はウエストコーストの乾いた感じと抜けの良さを目指した。
BOBが叩き出すビート感が何とも言えない味を醸し出す。
M3「Unsubstantial Wind」
もともとフォーク調の感じだったものを、シミーの「なんか混沌とした感じにしたい」という要望のもと、オルタナなニュアンスにアレンジしたアシッドロック。
イメージはベルベッツmeets友部正人。ボーカルのレベルも低くしてある。
シンディーがギターを何テイクも弾きまくり、それをMixでフレーズごとに切ったり重ねたりしながらギターサウンドを構築。およそ24種類のギター音を使用しまとめた。
エンディングのボーカルエフェクトと、フェードアウト〜インからカットアウトという処理も気に入っている。

M4「Goodmorning Goodnight」
某TV−CMのため以前作ったサビ部分をモチーフにした、黄昏らしいユルいポップなラヴソング。
レゲエ調のアレンジなのでベタだがところどころDUBっぽい音処理をしたり、音の隙間をMix時に作ったり、タムの音を深くしたりといろいろ工夫してみた。
シンディーのカリビアンなギターソロが秀逸。

The黄昏カラアズはこのCDをリリースし、新たなステージへと向かう。
皆さん、温かい目で応援よろしくお願いします!
先行PV「ピエロは地平線へ」
http://www.youtube.com/watch?v=p_bIlMZw-tw&feature=youtu.be
The黄昏カラアズ HP
http://the-tasogare-colors.com/