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佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
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to catch, to act.

音楽の仕事に携わるようになって30年近くなるが、まだまだ実力不足だなぁ〜と感じる場面がけっこうある。
もちろん技術も必死に磨いてきたし、数々の経験からトラブルシューティングに困ることも少なくなったが、それでも何か仕事を終えたあと自分に100点満点を付けられるのは、1年に1度あるかないかだ。

じゃあそれ以外は上手くやれていないのかというと、そうではない。かなりの確立で自分なりの合格点には到達しているのだが、技術的なことや一瞬の判断や人への思いやりなど、ここをこうすればもっと良くなったのにという気持ちが常にある。

ライヴの仕事の後などは、打上げで陽気にアルコールをあおっているように見えるかもしれないが、飲酒で憂さを晴らすことの出来ない性質の僕は、ほぼ90%以上の割合で悶々と自分の実力不足を責めながら、その情けなさを酒で流し込んでいるのだ(笑)。
それが自信喪失になることもあるけれど、ほとんどの場合はその悔しさが次へのエネルギーに変わっているから、まぁ基本的には能天気なのかもしれないが。

いい加減にこのスパイラルから抜け出してもいいんじゃないか?とは感じるが、やはりプロフェッショナルという言葉を前にすると、どうしたってハードルを高く設定してしまう。例えば自分に当てはめると、もっといい音を出すとか作るとか、ナイスなプロデュースをするとか、魅力的な企画を立てるとか。

単純明快、向上するってことは自分だけではなくそこに関わる人みんなにとってもいいことなのだ。
それは理想というか美学というか、哲学とか信念の類いかもしれないが、その意識があるのと無いのとでは、結果とか満足度が大きく違うのではないかと思う。


そんなことを改めて考えさせてくれたのは、先日東北にツアーにやってきて3日間同行させてもらった札幌のシンガーソングライター、すずきゆいちゃんだ。

仙台でのライヴを終えた打上げの最中に、何か気をつけることはないか?と訊ねてきた。
マイクの細かい使い方であるとかピアノのダイナミクスであるとか、僕なりに感じたことを話したら、なんと翌日のフリーライヴでそれにチャレンジしてきたのだ。
その貪欲に音楽に向かうガッツを目の当たりにして、この1年の彼女の大きな成長ぶり(音楽的にも人間的にも)に合点がいったのである。

考えて吸収してチャレンジする姿勢こそが努力を生み、いつか才能を凌駕するのではないだろうか(彼女はもちろん才能もあるミュージシャンだが)。
誰もが何らかの才能を持っている中で実力を大きく育んでいくのは、そういう人間的なハートの部分なのかもしれないなぁ。

逆にいえば、どんなに才能にあふれていてもそういう姿勢(意識)に欠けている(怠けている)人は、少なくとも僕には魅力的には映らない。
他人の意見を聞けばいいと言っている訳ではなく、いろいろなアンテナを持って自分で気になるものについては努力や労力を惜しまないことが大切だと感じるのだ。

ツアーの空き時間に被災地を訪れ感じたことを咀嚼し、その日のうちに発信したりライヴのMCで話したり、そういった所にも彼女のハートの柔らかさが表れていたし、ちゃんと自分の言葉で伝えようとする姿勢が嬉しかった。

いわき・仙台ともライヴを見に来て欲しいと声を掛けた友人・知人・仕事仲間たちが足を運んでくれ、これには本当に感謝しかないのだが、その人たちに精一杯の気持ちを込めて彼女らしく歌い演奏してくれたことも嬉しかった。
それだけで今回のツアーを企画した甲斐があるし、次につながっていくだろうと確信している。
とても学ぶべきことが多い3日間であった。


最近の自分は、一生懸命やっても実を結ばないことにイライラしたり、伝わらないことに落ち込んだり、時には何のために頑張っているのかわからなくなったり。
そんな時は初心に返って、心の姿勢を正すことから始めるべきなのだ。

そんなことを考えながら、近付いてくる冬の足音を聞く夜も悪くない。
BGMはラスカルズのA Ray Of Hopeにしよう。
by higehiro415 | 2013-11-15 01:02 | 日記