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佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
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浅田信一への手紙

福岡在住の作詞家、せき氏から手紙が届いた。
先日ツアーで福岡へ行った際に僕らを大歓迎してくれ、当日はいろいろお手伝いまでしていただいた。
その時の想いを彼らしい文章で綴ってくれた素敵な内容だったので、本人の了承を得てここで紹介したい。
彼との出会いは手紙の中にもある古市コータロー「青い風のバラード」をせき氏が作詞したのがきっかけだが、もちろん矢沢さんの詞を書いていることは知っていたし、何度か連絡を取り合っているうちに同い年ということもあり、徐々に懇意な間柄になった。
かなりのシャイでありながら内面には燃えたぎるエネルギーと感性を持った、隠れ不良中年(笑)だ。
せきさん、ありがとう!


『浅田信一と居た時間』

吹き抜ける風のように
様々な表情を見せる波のうねりのように
それでいて不動の山のような
静寂を醸し出す瞳の深さと佇まい。

ある意味、出会った人の中で
一番鮮烈な自己の世界を持った男だと思った。

それはアーティスト特有の自己の表現を前面に押し出すパフォーマンスだけではなく、ありのままにそこに居るというだけで存在感を知らしめる研ぎ澄まされた職人の域。
こんな男にはそうそうお目にかかれない。

博多でのライブの前日の夜、昼過ぎに大阪を出発し、途中大雪の影響を受けながら到着した信ちゃんとヒロさんにお会いできる時間を作ってもらった。

「せきさんとは、ここの処、月一ペースでお会いしていますよね?」

そうだ。気がつかなかったが月一だ。
彼と初めて会ったのは去年の暮れに代々木で行われた古市コータローのアコースティックソロライブの会場だった。
年が明けて一月、渋谷クアトロでのコータローバンドライブで二度目。その打ち上げでも少々会話したが、面等向かって話したのは今回が初めてである。

昨年夏、コータロー君から歌詞の依頼を受けた際、「プロデューサーは浅田信一くんです。」と聞いた。
単にデモテープを受け取り、歌詞の依頼を受けてコータロー君の元へ送信し、ダメだしをもらうやり取りの中で完結するものとばかり思っていたが相手はコータロー君だけではなく、「浅田信一」という自分の中でも絶対的に存在レベルが高いアーティストプロデューサーだと知り「2対1のハンディキャップマッチになってしまった・・・」と戦慄したのを覚えている。

実際、信ちゃんからの的確な指示も何度かあったし、結果「青い風のバラード」という楽曲が完成したのであるが、その時は信ちゃんとは全く面識は無く完成後、何度かSNSとメールで事務的な事を含めたやり取りを行った程度だった。

当日は生憎の雨で居酒屋が混んでいたので寒い中店先の赤ちょうちんの前で少々立ちんぼしてまったが、嫌な顔もせず待ってもらえた。
楽しい時間だった。
その日にアップされたコータロー君の「Heartbreaker」のPVをスマホで再生してみせてくれながら、まるで子供のようにウィンドーの中のおもちゃを楽しそうに指さしながら見つめるような瞳に「大人の少年」を感じていた。

コンサート当日、ヒロさんから機材搬入と信ちゃんの送迎の依頼が入り、リハーサルからご一緒させていただいた。
途中、何か小腹を満たすものと岩田屋地下の蜂楽饅頭を買いに出たのだが、「会場には控え室が無くどうするのだろう」と考えていた。

開場となりミキサー席の横で背を向けてスタッフのフリをしている信ちゃんに気づいた人はひとりだけだったが「まさかこんなところにはいないよね」という顔をして席についた。
こういうやんちゃなアイデアをその場でこしらえる懐の深さに「あ、これが俺たち事務人間と違うところだよね」と感心しながら納得してしまった。

ステージはその世界観で支配され、会場に足を運んでいただいたファンの皆さんも満足されたのではないかと思う。

控え室がないので退場しその足でタクシーに乗り込みホテルに戻ったのだが、誘導する際に「サンキュー」とアイコンタクトをする信ちゃんの表情はとても優しかった。

吹き抜ける風のように
様々な表情を見せる波のうねりのように
それでいて不動の山のような
静寂を醸し出す瞳の深さと佇まい

自己を燃焼させて放出される静かなエネルギーは、ステージを見た人しか感じ取ることはできない。
これがライブだなと思う。

「大人の少年」に次に会えるのはいつだろう。


2015/3/5
せきけんじ



by higehiro415 | 2015-03-10 10:15 | 日記