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佐藤ヒロユキ。仙台在住のMOD音楽職人(サウンドエンジニア&プロデュース/レーベルなどやってます)アナログレコード好き1963年生まれ。GROOVE COUNCIL代表。http://groovecouncil.jimdo.com/


by higemodern
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浅田信一BDライヴ2015レポ

2015.8.27浅田信一 BD Special Live ~new landscape~ Set List

01. パラソル

02. 春のうた

03. CherryBlossoms

04. 五等星

05. 宵待ち

06. 無常の世界

07. 夏のうた

08. ローファー

09. YouAnd I(新曲)

10. Answer

11. 堕天使達のラプソディ(新曲)

12. Over& Over(新曲)

13. 最速のカモメ

14. 深夜バス

15. BlueMoon Blue(新曲)

16. ひまわり

【アンコール】

17. 秋のうた(新曲)

18. 冬のうた

19. DeadMan

【ダブルアンコール】

20. UnknownWorld


この日の会場Zher the ZOO YOYOGIには、ライヴタイトル通りこれまで見たことのない新しい風景が確かに存在していた。それは希望という名の淡い光といった抽象的な空想の類ではなく、例えば目の前に広がる色とりどりのフラワーガーデンから花の香りが漂ってくるような、僕らの五感をうっとりと刺激する素敵な風景であった。


とにかく素晴らしいライヴで、どんな言葉を使って表現しようと試みても陳腐に感じてしまうほどだ。しっかりと地に足をつけて音楽を放出するそのパワーはとても力強く、同時に浅田信一のキモともいえる凜とした美しさはさらなる極みへと上っていくような、ポジティブなエネルギーに満ちた至福の2時間5分。


打上げ締めの挨拶で古市コータローが語ったように、ミュージシャンとしての浅田信一がここに帰ってきてくれて嬉しいし、ここからまた何かが始まるというワクワク感あふれるBDライヴ、その瞬間に立ち会えた僕らは幸運というほかない。それはニュー浅田信一が誕生したというより、むしろようやくベールを脱ぎ本来の姿に舞い戻った一人の音楽家の底力とロマンが描かれたリアルなドラマともいえた。

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*****


僕はライヴの3日前に東京へ。四谷で別件のレコーディングが入っていたためだ。1日目、レコーディングが終わるのを待っていてくれた信ちゃんと近くの居酒屋で夕飯。ライヴのことよりも今後の仕事や音楽業界の未来について語り合う。車で来ていた信ちゃんはウーロン茶を飲みながら付き合ってくれ、帰りは新宿のホテルまで送ってくれた。

2日目はレコーディング現場に差し入れを持って顔を出してくれた。これにはレコーディングしていたバンドのみんなも大いに感激し気合が入ったようだ。3日目、ホテルの部屋で仕事をしているとLINEがきた。「今日は何やってるんすか?」僕が一人で暇してると慮ってくれたのかライヴ前日で軽く飲みたい気分だったのか、どちらにしても嬉しい誘いだったのだが、夕方に合流し以前から気になっていたフレンチバルで白ワイン片手に前夜祭となった。


「少しは緊張してる?」

「緊張というかやっぱりライヴ直前はナーバスにはなるかな。まぁでも今回は心強いバンドメンバーもいるしね。」

そう言いながら笑った信ちゃんだったが、いろいろと思うところはあっただろう。いま自分がやりたい音楽(新曲たち)がファンの人たちにどう響くのかという不安と期待、素晴らしいサポートメンバーだからこそ主役である自分も負けられないというプレッシャーも多分にあったはずだ。それでも彼の表情を見ながら、翌日の大成功を予感したことも事実である。



当日、少し早めにホテルを出て代々木へと向かう。タカマックから会場近くのラーメン屋の長崎ちゃんぽんが旨いと情報がきていたので、そこでランチをしてから行こうと考えたのだ。オーソドックスな味でなかなかであった。お先に!とちゃんぽん写真をグループLINEに投稿すると信ちゃんからの電話が鳴る。「ちゃんぽんの店どこら辺すか?」コータローからは「ちゃんぽん、どう?」と探りのメールが。タカマックも「味だいじょぶすか?間もなく向かいます。」と返信が。結局バラバラではあるがコージを除いたみんながそれぞれ食べに行ったようだ。一緒に行かないところが大人ではないか()


JRが止まっているという情報が入るが、入り時間前には無事全員が揃いドラムやアンプを搬入しセットする。この日はローディーとして2人が手伝いに来てくれていて心強い。僕はアシスタントで来てくれたアイタちゃんと共にPAの準備を始める。この日の音のテーマはリハ音源を確認した時点で固めていた。ロックっぽい音の渦を作りながらも色気ある繊細さやポップ感も伝えられたらいいなと、そこに照準を合わせスピーカーのチューニングなどしていく。満員のためカウンター側にも音が聴こえるようサブスピーカーもセット。

照明は会長(岡野パイセン)にお願いしていた。ライヴはやはり視覚的要素がかなり強いので、信ちゃんの歌をとてもよく理解している彼女の存在はありがたい。


セッティングも終わりサウンドチェックからリハへ。コージは念入りにドラムキットをチューニングし臨む。タカマックはベースラインをよりスムーズにするべく指を慣らす。コータローはROLAND JC-120とは到底思えない(別のアンプが鳴っているような)さすがの音作りを施す。信ちゃんはマッチレスのアンプで個性ある音を出し、アコギも相変わらずの気持ちいい鳴り。声も調子良さそうだ。


それぞれ(もちろん僕や会長も)の確認もあるのでほぼ全曲をおさらいしていく。バンドはテンポ感や構成や音色、さらにモニターなども確かめつつ微調整しながら進む。さすがのメンツだけあってリハの時点でジ〜ンとくる場面も多い。

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ザーザズーは音響特性にクセがあるので音作りがなかなか難しいのだが、アンプやドラムの音量などメンバー全員がPAに協力してくれ助かった。ここら辺もやはりプロ中のプロだ。僕は彼らの素敵な生音を最大限に生かしながら、絶妙なバランスを探っていく。モニターのハウリングにはぎりぎりまで苦労したが最終的には落ち着いたのでホッとした。

会長は1曲ごとに照明のシーンを作りメモリーしていく。演劇を得意としているだけあってドラマチックな雰囲気のある色使いだ。

物販チームはこの日届いたTシャツの検品や先行販売のための準備をしてくれている。ZTZスタッフはフライヤーを織り込みしたりドリンクカウンターを準備したり僕らの手伝いをしたりとせっせと動いてくれていた。

皆さん本当ありがとう。

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コータローのドラムで信ちゃんが歌ったりという休憩を挟みながら、和やかにしかし真剣にリハが進むと、バンドの音がぎゅっと締まっていくのを肌で感じる。メンバー全員がリハを楽しんでいるような、このままずっと続けていたいような感じにも見える。最後に信ちゃんが用意してきたオープニングSE〜オープニングナンバーをチェックしリハ終了。各々が万全の準備で、あとは満員のオーディエンスを待つのみだ。


開場BGMは渋めのアメリカンAORにした。物販コーナーには長蛇の列。久しぶりのNew EPが飛ぶように売れている。やはりみんな待っていたのだと僕まで嬉しくなった。楽屋は緊張感を保ちながらリラックスムードが漂っている。開演10分前の様子を見て、店長マティ君と相談し5分押しでスタートしようと決めた。


SEの中メンバーがステージに登場すると、大きな拍手と「信ちゃ〜ん!」の声援が飛ぶ。全員が楽器をスタンバイし、信ちゃんが準備OKの手を上げ僕はSEをフェードアウトする。それを合図にパラソルのイントロのギターが鳴り始め、夢のようなショーの幕が切って落とされた。

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がっちりと脇を固めるサポートメンバーが奏でるバンドサウンドは、グルーヴィーながらしなやかさも纏った極上のアンサンブルで、信ちゃんの歌の世界観をよりメロディアスに音像として表現していく。


コージ(古沢cozi岳之)のドラミングは信ちゃんとのセッションも多いせいか相性もいいのだが、歌うように弾むリズムは時としてボーカルとハーモニーを奏でるかのような化学反応があり、カラフルな色合いを付加していく。

タカマック(高間有一)のベースは非常にタイトではあるがフレーズは多彩で、縦横無尽に地を這うようにうねる正確なグルーヴは全体のボトムに厚みを与える。

コータロー(古市コータロー)のギターは、コレクターズともキングオールスターズとも違う変幻自在さを見せてくれた。ドライヴ感のあるギターカッティングからムード満点のソロや効果的なリフなどを次々と繰り出す。その存在感もさることながら、曲ごとの表情作りのポイントになっていた。

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鉄壁のプレイではあるがヒューマンな香りもあり、いい意味での緩さみたいな自由度も持ち合わせた演奏は時に激しく時に優しく心を揺さぶる。その大人のダイナミクスは彼らにしか出せない味だろう。初リハで音を出した瞬間「これだよ!」と信ちゃんは思ったらしいが、それも大いにうなずける。まるで一つのバンドのようでもある。そしてそんな強力メンバーを本気にさせるのが浅田信一の歌であり曲であり人柄ということだ。


バンドサウンドに融合しながらも、そこに真っ向勝負を挑む信ちゃんのボーカルとギターは強烈に鮮やかだった。ギタープレイは心地いいタイム感をキープしつつ、音の隙間にパズルのように入り込む。シルクの如き光沢のある歌声は、このまま夜空の果てまで伸びていきそうに躍動する。音の波を悠々自適に泳ぎまくるボーカルはこれまでになく大胆であり繊細であり、どこか万華鏡の中にでも放り込まれたような不思議な恍惚感を与える。何度も発言しているが、やはり紛れもなく音楽シーンの至宝といえる唯一無比のシンガーソングライターだ。

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セットリストはダブルアンコールも含めて全20曲。新曲も含めてどれもが名曲だというのがまた凄い。バランスも流れも最高でダブルアンコールのUnknown World以外はすべてソロになってからのナンバーが占めた。MCでも触れられたように、7月のSMILEトリビュートで過去を総括したぶんこの日は今と未来を見据えたものになったのだが、もちろんそこにはここまでたどり着くのに要した時間や経験、つまりは過去が糧になっていることは言うまでもない。痛みや悲しみは人を成長させ優しくさせるというが、そんな心のひだまで見えるかのような感動的なセットリストだったのではないだろうか。

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アンコールにはサプライズのBDケーキ(ファン有志の方々が用意してくれたシンディーが描かれたケーキ)も登場しみんなでHappy Birthdayを歌う。とにかくメンバーも各スタッフも大勢の関係者もそしてもちろん僕も、あの場にいた全員が気持ちよく音楽に酔いしれ、心に温かく刻み込まれるスペシャルナイトとなった。

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信ちゃんとがっちり仕事するようになって約5年、きょうほど頼もしい彼を見たのは初めてかもしれない。あの歌を歌声を多くの人に届けたいと願い勝手に尻を叩いてきたが、ここからは黙っていても大丈夫なのではないか。なんか寂しいような嬉しいような、同時に自分ももっといい音作っていかねばと個人的にはそんなことも感じた夜でもあった。


打上げで中村貴子さんと話す。「私たちの仕事って結局はイイ(好き)と思える音楽を応援することだよね。」僕は深く相槌を打つ。今夜のライヴを思い返しながら、そういう素敵な音楽が目の前にあるってなんて幸せなことなのかと思う。


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サマーライヴサーキットと銘打った一連のライヴはここで一段落。しかし浅田信一20周年イヤーはまだ来年7月まであることをお忘れなく。イベントも含めてそれほど間をあけずに信ちゃんの歌声が聴き続けられるはずだ。たぶん()。まずは制作中のニューアルバムが滞りなく作業が進みリリースされるのを一番の楽しみにしたい。


Keep calm and Music on

皆さんに幸あれ。









by higehiro415 | 2015-09-02 08:51 | ライヴ